商標登録できる?商標を決めたら先行商標検索をしてみよう! 商標出願前 2022年6月10日 2023年7月28日 Amazing DX guide 会社で新しい洋服のブランドを立ち上げることになったから、これからそのブランド名を考えるよ。この企画には力を入れているし、せっかく作ったものを他人に真似されたくないから、商標登録をしておきたいな。出願さえすれば登録されるのかな? 確かにブランド名を商標登録することは、他人に真似されず安全に使い続けることができるようにするためにとても有効な方法ですね!ただし、特許庁の審査がありますから、出願すれば必ず登録できるというわけではありません。登録できない商標については商標法で規定されているので、どんなものが該当するのか一緒に見ていきましょう。 登録できない可能性もあるのか・・・。「せっかく考えたブランド名が、そもそも登録できないものだった」なんて事態をさけるために、出願前にしっかり確認しておこう! 登録できない商標は? 商標は商品やサービスを区別するための識別標識(目印)で、需要者はその商標が持っているブランドイメージをもとに商品を購入したり、サービスを利用したりします。そのため商標自体には、それぞれの事業者の信用や、商品やサービスの付加価値が積み重ねられており、商品の売り上げやサービスの利用を押し上げる効果をもたらします。同時に、その商標が付いた商品やサービスには、一定の品質が保証されているという点で需要者の利益を守ります。 そのため、大きく分けて次の3つの商標は、商標の登録が認められません。 他人の商品やサービスと区別することができない商標公共機関の標章や他人の商標と紛らわしい商標需要者の利益を害するおそれがある商標 1.他人の商品や役務と区別することができない商標 商標の役割として欠かせないのは、他人の商品やサービスと区別することができる「識別力」を持つことです。以下に「識別力」がないため商標として登録できない例を挙げます。※ただし、以下の要件のいずれかに該当する場合でも、その商標を全国的に有名になるほどに使用し、「識別力」が生じた場合には、商標登録を受けることができます。(商標法第3条第2項) 普通名称 商品やサービスの一般的な名称、略称、俗称として認識されているものを、その商品・サービスの分野で一般的に使用する範囲の態様で表示したものは、登録が認められません。(商標法第3条第1項第1号)(登録できない例) 商品「電子計算機」の商標が「コンピュータ」サービス「損害保険の引受け」の商標が「損保」商品「塩」について、商標「波の花」 慣用されているもの その商品や役務の分野において、一般的に使用された結果、「識別力」がなくなったものが該当します。(商標法第3条第1項第2号)(登録できない例) 商品「カステラ」の商標が「オランダ船の図形」商品「自動車の部品、付属品」について、商標「純正」、「純正部品」商品「清酒」について、商標「正宗」 産地、販売地、品質等を表示したもの 商品や役務について、次の情報を普通に用いられる方法で表示しただけの商標が該当します。(商標法第3条第1項第3号)産地、販売地、提供場所、提供に使用するもの、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む)、生産・使用・提供の方法・時期・その他の特徴、数量、価格、等※産地や販売地等について、実際に生産・販売等がされているかは関係ありません。(登録できない例) 商品「緑茶」の商標が「静岡」-緑茶の産地や提供場所を表しているに過ぎない商品「書籍」の商標が「小説集」-書籍の内容を表しているに過ぎない商品「牛肉」の商標が「うまーい」-牛肉の特徴を表しているに過ぎない ありふれた氏や名称 ありふれた氏や名称とは、同種のものが多数存在する氏や名称のことです。著名な地理的名称や業種名も該当します。また、ありふれた氏や名称に商号や会社等の種類名を結合したものなども含まれます。(商標法第3条第1項第4号)(登録できない例) 商標が「日本」「鈴木株式会社」「SATOU商店」 極めて簡単でありふれた標章 構成が極めて簡単で、一般的に使用されている標章のみからなるものが該当します。数字や1~2字のローマ字、1字の仮名文字、△・〇等の簡単な記号等が含まれます。(商標法第3条第1項第5号)(登録できない例) 商標が「123」、「AB2」、「じゅうに」 その他、識別力がないもの 上記以外でも「識別力」がないと判断されると登録が認められません。(商標法第3条第1項第6号)(登録できない例) 宣伝広告のみからなるもの企業理念・経営方針のみからなるもの単位や元号としてのみ認識されるもの地模様からなるもの指定役務との関係で、店名として多数使用されているもの 2.公共の機関の標章や他人の商標と紛らわしい商標 商標を登録するためには、既存の著名な標章や登録商標と混同しないことも必要です。以下の例は、それと「同一または類似」の商標の登録は認められません。※「同一または類似」の判断は、その商標および使用する商品やサービスによって変化するため、注意が必要です。 国旗、国や赤十字などの紋章等 国旗、菊花紋章、勲章、褒章又は外国の国旗(商標法第4条第1項第1号)商標法条約等の締約国の国紋章その他の記章で、経済産業大臣指定(商標法第4条第1項第2号)国際連合その他の国際機関の標章で経済産業大臣指定(自己の商標が広く認識や誤認のおそれない等一部を除く。)(商標法第4条第1項第3号)赤十字等関連法律で指定された特殊標章(商標法第4条第1項第4号)商標法条約締約国等の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章等のうち経済産業大臣指定の標章で、その印章等が用いられる商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用(商標法第4条第1項第5号)(登録できない例) 日章旗菊花紋章(日本皇室の紋章)日本の勲章や褒章(文化勲章、紫綬褒章など)外国の国旗外国の紋章や印章国際連合の標章赤十字の標章や名称(白地に赤十字の図、商標「赤新月」など) 国や地方公共団体等の著名な標章 国等やその機関、団体等の公益事業等を表示する著名な標章。(当該団体等が自ら出願した場合を除く。)(商標法第4条第1項第6号)博覧会等の賞の商標(その賞を受けた者が商標の一部として使用する場合を除く。)(商標法第4条第1項第9号)(登録できない例) 公益社団法人や公益財団法人の標章政党の標章オリンピックの標章地方公共団体等が行う交通事業の標章 他人の氏名又は名称等 他人の氏名等、著名な芸名等、またはこれらの著名な略称を含む商標は登録できません。「他人」には、外国人、法人、権利能力のない社団も含まれます。ただし、査定時にその他人の承諾を得ている場合は該当しません。(商標法第4条第1項第8号) 他人の周知商標と紛らわしいもの 他人の周知商標と同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品・サービスで使用する場合は登録できません。「周知商標」には、需要者に広く認識されているもの、取引者の間に広く認識されているものが含まれます。また、この「広く認識されている」とされる範囲は、全国的ではなく、ある一地方のみでも該当するとされています。(商標法第4条第1項第10号) 商標登録されていなくても有名なものと似ていたら登録できないことがあるんだね! 他人の登録商標と紛らわしいもの 他人の登録商標と同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品やサービスに使用する場合は登録できません。なお、商標の類似とは、主に「称呼(読み方)・外観(見た目)・観念(意味合い)」の3つの基準で判断されます。類似については後述します。(商標法第4条第1項第11号) 他人の登録防護標章や登録品種の名称と紛らわしいもの 商標法では、使用によって信用を獲得した有名ブランド名については、使用予定のない商品やサービスにも登録して他人が使用できないようにするという防護標章登録制度があります。他人は、防護標章登録の標章と同一で防護標章登録されている商品・役務について商標登録することはできません。(商標法第4条第1項第12号) 種苗法で品種登録を受けた品種名称と同一又は類似の商標で、その種苗と同一又は類似の商品・役務についても商標登録はできません。(商標法第4条第1項第14号) 他人の商品や役務と混同させる可能性があるもの 前述した第4条第1項第10号11号12号14号に該当せず、商品又はサービスが同一又は類似でなくても、他人の業務に係る商品又はサービスと混同させるおそれのある商標は登録することができません。混同のおそれの有無は、対象となる商標の著名性等を総合的に考慮して判断されます。(商標法第4条第1項第15号) 不正の目的で使用するもの 国内または外国の他人の周知商標と同一又は類似しており、不正の目的をもって使用する商標は登録することはできません。前述の商標法第4条第1項第10号とは異なり、たとえ非類似の商品やサービスに使用している場合であっても、登録することはできません。(商標法第4条第1項第19号)(登録できない不正の目的の例) 外国で周知な商標を、日本で先取って権利化し高額で買い取らせる目的外国で周知な商標について、外国の権利者の国内参入を阻止する目的その周知商標が持つ信用や顧客吸引力を傷つける目的 3.需要者の利益を害するおそれがある商標 誤った品質を認識させたり、不快な印象を与えたりといった需要者の利益を害するような事態を防ぐための登録制限要件が設けられています。※これらは、指定商品・役務を変更することで、登録が認められる場合があります。 商品や役務の品質を誤認させるおそれがあるもの 商標に、その商品やサービスとは異なる品質を表す文字等が含まれる場合、誤認のおそれがあるもの。(その商品やサービスの品質を表す文字等が含まれていても、商標全体としての商品や役務の品質として認識できない場合を除く。)(商標法第4条第1項第16号17号)(登録できない例) 商品「野菜」の商標が「HARAポテト」※野菜にはジャガイモ以外も含まれるため商品「時計」の商標が「SWISSTEX」 ※スイスを商品の製造地として認識可能なため商品「ぶどう酒」の商標が「CHAMPAGNE style」 ※ぶどう酒には、シャンパーニュ地方で生産されたぶどう酒も含まれるため 公序良俗を害するもの 非道徳的・卑猥・差別的である商標や、他の法律によって使用が禁止されている商標は登録できません。商標自体が公序良俗に反するものでなくとも、その商品・サービスに付することで公序良俗に反することになる商標も登録できません。(商標法第4条第1項第7号)(登録できない例) 商標「○○大学」 ※学校教育法に基づく大学等の名称と誤認するおそれがあるため救急車のサイレン音を認識させる音商標 登録できない商標ってたくさんあるんだな・・・。でも、一般的に使われている言葉を避けたり、既にある有名な名称と被らないようにしたりっていうのは、ブランド名やロゴを作る上では重要な作業だね。 そうですね。商品やサービスに名前を付けたりするときにこれらのことを考慮しておけば、出願の時に困らないだけじゃなくて、商標権侵害等の法的トラブルを事前に防ぐことにも繋がりますよ。もし検討中の商標について登録できるかどうかわからないときは、「チャット」などでお気軽にご相談ください! 商標が決まったら先行商標が存在しないか確認しよう! 他人の登録商標と紛らわしい商標は登録できないことを前述しました。 紛らわしい、いわゆる「類似」かどうかは、主に「称呼(読み方)・外観(見た目)・観念(意味合い)」の3つを基に、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、他人の登録商標と混同のおそれがあるか否かで判断されます。 類否判断の際、日本では、この中でも特に称呼(読み方)が重視される傾向にあります。称呼(読み方)とは、需要者が取引上自然に認識する音のことです。 称呼(ヨミガナ)の類否判断について 1.称呼(ヨミガナ)の音質が近似 音質とは、母音、子音の質的きまりから生じる音の性質のことで以下は音質近似で称呼(読み方)が類似している例となります。(ただし、最終的に商標全体として類否を判断したものではありません。) 「ダイラマックス」と「ダイナマックス」:同数音で相違する一音が母音共通「ビスカリン」と「ビスコリン」:同数音で相違する一音が50音図の同行「バーテラックス」と「バーデラックス」:同数音で相違する一音が清音、濁音の差のみ 2.称呼(ヨミガナ)の音量が近似 音量というのは、音の長短のことで以下は音量近似で称呼が類似の例となります。(ただし、最終的に商標全体として類否を判断したものではありません。) 「モガレーマン」と「モガレマン」:相違音が長音の有無のみ「コレクシット」と「コレクシト」:相違音が促音の有無のみ「タカラハト」と「タカラート」:相違音が長音と弱音の差のみ 3.称呼(ヨミガナ)の音調が近似 音調というのは、音の強弱及びアクセントの位置のことです。強音は聴覚上響きの強い音、弱音は通常、前音に吸収されて聴覚されにくい音で以下は音調近似で称呼が類似の例となります。(ただし、最終的に商標全体として類否を判断したものではありません。) 「ダンネル」と「ダイネル」:相違音がともに弱音「パラビタオミン」と「パラビタシミン」:同数音からなる比較的長い称呼で1音だけ異なる「アプロトン」と「アクロトン」:語頭において共通する音が同一の強音「RISCOAT(リスコート)」と「VISCOAT(ビスコート)」:アクセント位置が共通 4.称呼(ヨミガナ)の音節が近似 ヨミガナ1字は一音節、拗音(「キャ」「シャ」「ピョ」等)は2文字で一音節、長音、促音、撥音は一音節で音節数の比較で類否が判断されます。以下は音節近似で称呼が類似の例となります。(ただし、最終的に商標全体として類否を判断したものではありません。) 「ビプレックス」と「ビタプレックス」:比較的長い称呼で一音のみ相違「バーコラルジャックス」と「バーコラルデックス」:まとまった音節に類似性有り 称呼が類似していると登録できない可能性があるんだね。注意しないといけないことはわかったけどたくさんのパターンがあって自分で探したり判断するのは難しそうだね。 そうですね。当事務所では「Amazing DX®」という、独自サービスを提供しており、無料の商標検索システムを利用することが出来ます。「Amazing DX®」を利用していただくと他人の先行登録商標と類似しないか自動で判断してくれますよ。先行商標との類否判断には称呼が重要になってきますので、商標欄だけでなく、ヨミガナ欄に称呼(読み方)を入れることで検索精度が上がります。英語版では外国人ユーザーの方の使用を想定してシステムが自動的にヨミガナを生成して検索精度を上げていますよ。いつでもどこでも簡単に商標登録出願依頼が可能なので一度試してみてください。 よーし、それじゃあ「Amazing DX®」を使ってインパクトのあるブランド名を考えるぞ! Amazing DX® 出典:https://amazing.dx.harakenzo.com 「Amazing DX®」では、オンラインで簡単に指定商品・サービスを選択できます。 まずはリストから商品・サービスを多めに選択して検索し、検索結果で「×」が出たものだけを外して再検索することも簡単にできます。 どの商品・サービスを選んだらいいか迷ったときは、商標専門の弁理士があなたの疑問にお答えしますので「チャット」でお気軽にお問合せください。 また、商標に関して以下の記事等もございますので是非ご一読ください。 「文字商標を商標登録しよう!ロゴ商標との違い・標準文字も解説」 「要注意!登録できる?人名の商標登録・出願について」 「商標の「称呼(=読み方)」とは? 商標登録・出願のポイント解説」 「サッと確認!英語を使った商標登録出願の注意点」 「アルファベット商標の商標登録は大文字か小文字のどちらががよいのか」 「大切なブランド(商標)を守る。商標登録のメリットや登録の効果とは」 参照:特許庁「商標審査基準〔改訂第15版〕」 この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者