商標登録の称呼とは?出願のポイントを解説

商標の「読み方」ってどう扱われるの?

新商品の名前に使う商標を決めたよ
フランス語の単語を元に作った造語だから、ぱっと見では読めないかも……
商標登録の審査って、読み方も考慮されるんだよね?

はい、商標登録の審査では、商標の称呼(=読み方)もポイントの1つです
同じ読み方をする商標が先に登録されている場合、後から出願した商標は登録が拒絶される可能性が高いです

逆に言うと、思っているのと違う読み方をされると、後から別の人が商標を登録できちゃうってことだよね
文字が違っても、読み方が一緒の商標を登録されたらイヤだな
何か、対策できないかな?

商標の多くは文字や図形を使って表されますが、その商標を「どう読むか」についても、出願人のみなさんそれぞれの思い入れがありますよね。

「この商標は、こう書いてこう読む!」
「でも、本当にそう読んでもらえるかな?」
「ちゃんと読んでもらえなかったら、どうなるんだろう……?」

この記事では、そのような、商標の「読み方」に関する疑問にお答えします。

称呼は商標登録のポイントの1つ

商標登録の制度では、「先に類似する商標が登録されていたら、後から出願した商標は登録できない」というルールがあります(商標法第4条第1項第11号)。これを、「先願主義」といいます。

そして、2つの商標が似ているかどうかを判断する基準は、下記の3つです。

  1. 外観(=見た目)
  2. 観念(=意味)
  3. 称呼(=読み方)

特許庁の審査官がこの3つを総合的に検討して、お互いにまぎらわしいと判断すると、2つの商標は類似しているということになります。そして、後から出願した商標の登録は拒絶されます。
特に日本での審査では、3つの基準の中でも「称呼が似ているかどうか」が重視される傾向にあります。

ということは、自分の商標がどう読まれるかは重要な問題です。

読み方はどう決まる?

出願された商標をどう読むかは、特許庁の審査官が判断します。
ひらがなやカタカナだけでできた商標の場合は、その文字のとおりに読まれ、他の読み方をされることはまずありません。

では、漢字やアルファベットでできた商標の場合はどうでしょうか?
特に造語の場合、色々な読み方が考えられますよね。

複数の読み方が考えられる場合、自然に認識されるすべての読み方が、その商標の読み方=称呼とされます
つまり、商標の読み方は、1つの商標につき1つとは限りません。

「自然に認識される読み方」とは

商標の類否(似ているかどうか)を判断するために称呼をどう認定するかについて、特許庁の審査基準には以下のとおり記載されています。

称呼とは、商標に接する需要者が、取引上自然に認識する音をいう。
例えば、次のとおり称呼の認定を行う。
(例)
① 商標「竜田川」からは、自然に称呼される「タツタガワ」のみが生じ、「リュウデンセン」のような不自然な称呼は、生じないものとする。
② 「ベニウメ」の振り仮名を付した商標「紅梅」からは、自然に称呼される「コウバイ」の称呼も生ずるものとする。
③ 商標「白梅」における「ハクバイ」及び「シラウメ」のように2以上の自然な称呼を有する文字商標は、その一方を振り仮名として付した場合であっても、他の一方の称呼も生ずるものとする。
④ 商標が色彩を有するときは、その部分からも称呼を生ずることがあるものとする(例えば、「白い」馬や「赤い」旗の図形)。

商標審査基準〔改訂第15版〕令和2年4月1日適用

ポイントは、上記②と③です。

「紅梅」や「白梅」のように、2通り(以上)の読み方がどちらも自然な読み方である場合、たとえふりがなを振っていたとしても、すべての自然な読み方がその商標の称呼となります。

つまり、「紅梅」に「ベニウメ」とふりがなを振った商標の場合、ふりがながあるので、この商標は「ベニウメ」と読めます。
ですが、「紅梅」の語は「コウバイ」と読むのが普通です。なので、たとえ「ベニウメ」とふりがなを振っていても、この商標からは「ベニウメ」だけではなく「コウバイ」の称呼も生じます。

また、「白梅」は、「ハクバイ」と「シラウメ」、どちらも自然な読み方です。
この場合、「ハクバイ」とふりがなを振っていても、「シラウメ」とふりがなを振っていても、また、ふりがなを振っていなくても、「ハクバイ」と「シラウメ」という2つの称呼が生じます。

造語商標の読み方

商標に含まれている言葉が、一般的な辞書に載っていない「造語」からできている場合、その商標の読み方は「日本で暮らす人が普通に読もうとしたら、このように読むはずだ」という観点から認定されます。

漢字の造語の読み方

漢字でできた造語の商標の場合、音読みしたものと訓読みしたものの両方が、称呼として認定されることが多いです。
ただし、漢字の組み合わせによって、音読みしたものだけ、または、訓読みしたものだけが称呼とされることもあります。

アルファベットの造語の読み方

アルファベットでできた造語の商標は、原則的に、以下のとおりに称呼が認定されます。

「ローマ字読み」というのは、「a・i・u・e・o」を「ア・イ・ウ・エ・オ」、「ka・ki・ku・ke・ko」を「カ・キ・ク・ケ・コ」と読む読み方です。
日本で日常的に見かける、なじみ深い読み方ですよね。

「英語読み」というのは、実際に存在する英単語の読み方を参考にした読み方です。

例えば、「audio」という単語が、造語だったとします(本当は実在する英単語ですが、ここではたとえ話のために造語とします)。
この単語は、ローマ字読みするなら「アウジオ」となります。
一方、英語では「Australia」を「オーストラリア」、「automobile」を「オートモービル」、「radio」を「レイディオ」、「studio」を「ストゥーディオ」と読むことなどを参考にすると、英語読みでは「オーディオ」と読めます。
ということで、「audio」という造語の称呼は、「アウジオ」と「オーディオ」の2つということになります。

ローマ字読みは基本的に1種類しかありませんが、英語読みで複数の読み方が考えられる場合や、ローマ字読みと英語読みを組み合わせた読み方も考えられる場合、さらに読み方が増えることもあります。

僕の商標はフランス語の単語が由来だから、読み方もフランス語風なんだけど……
それも「ローマ字読み」と「英語読み」されるの?
特許庁の審査では、フランス語風には読んでもらえないってこと?

残念ながら、そのとおりです
現在の日本では、一般的に、英語以外の言語についてはそれほど理解度が高くないと考えられ、フランス語・ドイツ語などの単語についても、基本的には「ローマ字読み」と「英語読み」で称呼が決められます
誰もが読み方を知っている有名な単語だったり、「その業界ではフランス語が商品名によく使われている」というような個別の事情があったりすれば、ローマ字読み・英語読み以外の読み方が称呼として認定されることもありますが、例外的です

そんなあ~
でも、同じ読み方の商標を他人に登録されたくないよ~
他人に登録されたら、こっちが読み方を使えなくなっちゃうかもしれないし!
どうしよう?

読み方を商標登録する方法

その1 「読み方だけ」を商標登録する

ひらがな・カタカナの商標であれば、称呼は文字のとおりに認定されます。
読み方をひらがな・カタカナで表記した商標を出願・登録すれば、後から出願された同じ読み方をする他人の商標を排除できる可能性があります。

ただし、商標は「1商標1出願」なので、読み方の商標を別に商標登録するためには、元の商標と読み方の商標、2件の商標登録が必要となります。
商標登録が2件となると、2件分の費用が必要になります。

読み方を保護する目的で商標出願する場合、商標にはできるだけデザイン(外観的な特徴)をつけないことをおすすめします。
ひらがな・カタカナだけの場合、「標準文字制度」が利用できます。

※「標準文字」についてはこちらをチェック!

その2 「ふりがな」をつけて商標登録する

元の商標に「ふりがな」をつけた全体を1つの商標として商標登録することも、方法の1つです。
これだと、費用は1件分ですみます。

なお、ふりがなを付けた商標の場合、①ふりがなどおりの読み方と、②ふりがなの元になっている漢字・アルファベット等の部分から自然に生じると考えられる読み方の、2通り以上の称呼が認定されるのが普通です。

読み方を商標登録するときの注意

不使用取消に注意!

商標は、登録されてから3年以上、指定商品・役務に使用されていないと、他人からの請求により登録が取り消されてしまいます。
この「不使用取消」が請求された場合、登録権利者側が、商標を使用していることを証明しなければなりません。

また、商標を使用しているつもりでも、登録商標と同じ形で使用していない場合、使用していると認められず、不使用取消請求によって取り消されてしまうこともあります。

読み方だけの商標や、ふりがなをつけた商標を登録した場合には、これらの商標も何らかの形で使用するようにしましょう。
また、使用した証拠をきちんと残しておくことも重要です。

称呼は同じだけど、外観・観念が異なる商標に注意!

日本の商標登録制度では、称呼が似ているかどうかが、先に出願・登録された商標との比較において重視される傾向にあるとお話ししました。
ですが、出願された商標が、先に出願・登録された商標と似ているかどうかは、最終的には、称呼・外観・観念を総合的に比較して判断されます。
つまり、称呼が同じでも、外観・観念が全く異なっていれば、最終的には「非類似(=似ていない)」と判断されることもあるということです。

そのため、同じ読み方をする他人の商標の登録をはばむことを目的に、読み方だけの商標やふりがなをつけた商標を登録したとしても、見た目や、商標から生じる意味が全く違っていれば、同じ読み方をする商標が登録されてしまうこともあります。

上記で紹介した方策は、同じ読み方をする他人の商標の登録を、完全に阻止するものではないことにご注意ください。

とはいえ、称呼が完全に一致していると、審査で一旦は拒絶される(=拒絶理由通知を受ける)可能性は十分にあります
一旦拒絶された時点であきらめる人もいますし、事前の調査段階で似ている商標が出願・登録されていることに気づいて商標を変更する人もいます
なので、完全には阻止できなくても、ある程度の抑止力にはなると思われます

費用対効果や、商標の読み方がビジネスにとってどれくらい重要かの検討が必要だね

商標の称呼を調べる方法

特許情報プラットフォーム「J-Plat Pat」を使えば、出願・登録された商標の称呼を、参考情報として確認することができます。

J-Plat Pat商標検索結果一覧で読み方を確認
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/t0100
J-Plat Pat商標出願・登録情報画面で読み方を確認
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2021-035993/879D1261E2CA1A83F05A548C3010F6D6FF062AD7E1B7D6E5B88AC32D8A90D5DD/40/ja

例えば、上記の商標「Amazing DX」(登録第6497115号)の称呼は、「アメージングデイエックス」、「アメージング」などが考えられるということです。

ただし、J-Plat Pat上で確認可能な称呼は、あくまで「参考情報」です。
先行商標との類否を判断する際に、実際にどのような称呼が認定されたかは、残念ながらデータベース上に公開されません。
ここに記載された以外の称呼が認定されることもありますし、逆に記載されている称呼が実際には認定されないこともあります。

というのも、商標の読み方は、上記の原則にのっとった上で、区分や指定商品・役務ごとの事情や、時代ごとの状況に左右されるからです。
上記の原則も、例えば、将来、日本に住む人が日本語・英語以外の言語も読めることが当たり前になれば、変わるかもしれません。
様々な事情を、時代に合わせて考慮しなければならないので、称呼は参考としてしかデータベースに記載されないのです。

※「J-Plat Pat」の使い方は、こちらをチェック!

読み方を保護するには工夫が必要

登録商標の読み方は、特許庁での審査で決められるので、特殊な読み方をする商標の場合は工夫が必要です。
読み方を商標権で保護しようとする場合、新しく商標出願する方がよいこともあるので、注意してくださいね。

出願数を増やしてでも、読み方まできっちり保護したい……でも費用はあまりかけられない……。
そんな方には、当所のオンライン商標出願・登録サービス「Amazing DX®」がおすすめです。

Amazing DX®なら、一般的な弁理士事務所(特許・商標事務所)に依頼するよりもお安く商標を出願・登録することができるので、出願数が増えても、費用をおさえることができますよ。

しかも、お悩み事には商標専門弁理士がお答えするので、分からないことがあっても大丈夫!
商標出願が初めての人でも、安心して利用できます。

まずは、下の「商標検索」から、あなたの商標が登録できるか調査してみてください。
Amazing DX®の商標検索は、商標の読み方を入力して、指定商品・役務(サービス)を選ぶだけのかんたん調査です。
商標検索は何度でも無料でできるので、色々試してみてくださいね。

supervisor
この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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