起業・ベンチャー・スタートアップ 商標ガイド

近々起業する予定なんだ!今はそのために、会社名を考えたり、必要な手続の確認をしたりと、いろいろな準備を進めているよ。

会社名などは商標登録した方が良いって聞いたことあるけれど、よくわからないし、考えるのは後回しで良いかな?

商標は、自社の商品やサービスを他社から区別し、ブランド価値を高める役割を果たします。
そのため、スタートアップ企業にとって、商標は成長を支える重要な要素と言えるでしょう。

準備段階の今のうちに、社名やサービス名に関する商標登録について検討することが大事ですよ!

重要なポイントを一緒に見ていきましょう。

起業したばかりの会社・ベンチャー・スタートアップに商標登録は必要?

商標登録は、企業が提供する商品やサービスに関連する名称、ロゴ、ネーミング等を法的に保護する手続きです。
起業した会社が、自社の商品やサービスに関する名称等を商標登録しない、つまり商標権を取得しない場合、次のようなリスクが生じます。

他の商標との関係におけるリスク

商標権は登録によってのみ効力が発生する制度になっています。つまり商標権は、商標を出願して、登録が認められなければ権利として成立しないということです。
更に、その権利の取得は早い者勝ちで決まるため、先に使用していたかどうかは、原則として考慮されません。

そのため、商標登録出願を行わないで商標を使用していると、
①既に他人の登録商標であり、知らずに他人の商標権を侵害していた
②他人が横取りして商標登録をしてしまい、自社で使えなくなってしまった
③他人が勝手に自社商標を使用しているが、商標権侵害で訴えることができない
というような事態が起こり得ます。

①や②の場合、以下のような対応をしなければならず、費用や手間がかかり、ビジネスにマイナスの影響を与えてしまいます。

・商標の変更
・相手から商標権を譲渡してもらう
・ライセンスをうける
・不使用取消審判や無効審判によって相手の商標権を取り消す又は無効にする。

また、③のように他人が自社の商標を勝手に真似した場合、権利を侵害していると訴えることができませんので、適切にブランドを保護することができない状態に陥ってしまう恐れがあります。

自身の商標を他人に出願・登録されていた場合の解決方法の詳細は、以下記事にて解説していますので、ご参照ください。

EXITにおけるリスク

一般的に、企業価値を評価する要素の一つには「知的財産の情報」が含まれます。

商標権についても、知的財産の情報に含まれるため、商標権を取得することにより、知財価値を向上させることができます。

しかしながら、上述したように、自社の商標を登録しないでいると、他人とのトラブルが生じ得ます。そのため、IPOやM&Aの際には、商標権などの知的財産を保有しているかをチェックされます。

チェックの結果、商標権などの知的財産を保有していないと判断された場合、事業を進めていく上でのリスクを抱えている可能性が高いと判断され、IPOやM&Aを判断する際に、マイナスの影響を与えることが考えられます。

換言すると、商標権を取得することで、第三者による侵害から自社のブランドを守り、自社の業務上の信用を維持しつつ、商標を育てることが可能となります。

これにより、投資家からの評価も高まると考えられます。

以上のように商標権を取得しない場合、投資家から評価されない、又は、評価されたとしてもその評価が低くなるリスクを抱える可能性があります。

スタートアップ企業のブランド価値を守り、成長させ、ビジネスにマイナスの影響を与えないためにも商標権の取得は有効な手段と言えます。

ブランディング戦略と商標との関係の詳細は、以下記事にて解説していますので、ご参照ください。

起業したばかりの会社・スタートアップ・ベンチャーにとっても商標登録は重要なんだね。
でも、何を、どんなタイミングで商標出願すれば良いかわからないな。

商標登録すべき対象は色々考えられます。
出願するタイミングも含めて戦略的に商標出願した方が良いので以下に解説しますね。

何を商標登録すべきか

1.会社名

まず、商標権を取得すべき対象として考えられるのが会社名です。

法人名として登記されている場合や会社名を含んだドメインを取得している場合でも、それは会社名の商標的使用が法的に保証されたということにはなりません。

そのため、会社名を商標的に使用していることにより、知らないうちに、第三者の商標権を侵害していたということが考えられます。さらに、商標権を取得していない場合、模倣されたとしても権利を行使することができません。

よって、ブランドとして認知させたい会社名の商標は、第一に出願をする必要があると言えます。特に、会社名と、商品名・サービス名と、が一致している場合、出願は必須と言えるでしょう。

※会社名と、商品名・サービス名と、が一致している場合、商標の出願数を抑えたり、ブランド管理をし易くしたり等のメリットがあります。

「株式会社SUBARU」や「株式会社SmartHR」のように、後に会社名をブランド力のある商品・サービス名に合わせる形で変更した例も多数あります。

一方、会社名を全く露出せず商標的に使用しない場合や、商品名・サービス名のみをブランドとして認知・保護したい場合、会社名の商標登録の優先順位は下げても構わないでしょう。

※「株式会社〇〇」と表示した場合、単に商号を表示するのみであって、普通に用いられる態様であれば、先行商標「〇〇」が存在する場合であっても商標権侵害とはなりません。

会社名の商標権を取得する場合、一般的に会社が扱う全事業をカバーすることになるために、商標権を取得する範囲が広くなることが多いです。

商標登録出願をする際は、実際に事業を展開してない領域であっても、近い将来事業を行う予定があれば、その領域についても権利範囲に含まれるように商標権を取得しておくべきでしょう。

一方、権利範囲が広くなると、商標の出願・登録費用が増加する場合があります。そのため、会社名の使用状況、事業展開予測を十分に考慮したうえで、商標登録の要否を判断することが重要です。

会社名の適切な商標登録の重要性がわかる事件や商標と商号の違いを、以下記事にて紹介しています。是非ご参照ください。

【スタートアップ・共創支援室 商号(会社名)の商標登録】
https://www.harakenzo.com/jpn/enterprise/company_name_trademarks.html

2.商品・サービス名

会社名とは別に、会社の展開する商品名やサービスを認知させたい場合があります。

その場合、該当する商品・サービス名の商標権を別途、取得する必要があります。

<会社名とは別の強力なブランドの例>
・「PlayStation」(登録第5695839号) 権利者:株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメン
・「LEXUS」(登録第5192338号他) 権利者:トヨタ自動車株式会社
・「 PANTENE」(登録第1461327号) 権利者:ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー

3.その他

他にも、次のようなものも取得すべき対象として考えられます。

・キャラクター
・会社や商品、サービスの特徴的な内容を表すワード、スローガン、フレーズ

企業キャラクターは、企業活動において広告等の幅広い範囲で用いられることが一般的です。そのため、幅広い権利範囲で取得する必要があります。
また、権利保護を万全にするためにはイラストだけでなく、キャラクターの名称も保護することが望ましいです。

キャラクターの商標登録の詳細は、以下記事にて解説していますので、ご参照ください。

<登録例>
・ (登録第5077073号) 権利者:任天堂株式会社

マリオ 登録商標


・「JUST DO IT」(登録第4206837-2号 他) 権利者:ナイキ イノヴェイト シーヴィー

4.文字かロゴか

商標権を取得するにあたり、文字やロゴ等、どのような態様で保護するべきかという問題があります。
原則的には、実際に使用する態様のものを商標登録すべきですが、以下のような基準を設けて検討してみても良いでしょう。

<文字商標として登録することが好ましい場合>
・ロゴが決定していない
・ロゴを変更する予定がある

<ロゴ商標として登録することが好ましい場合>
・識別力のない文字からなる商標である。
※識別力のない文字でも、文字を特殊な形態で表したり、記号・図形を付加したりすることにより登録を目指すという方法があります。

※識別力とは、自分の商品やサービスを他人の商品やサービスから区別できるようにする力のことを言います。例えば、商品「りんご」について、以下のような商標は識別力を有していないと判断されます。

・「りんご」(商品の普通名称)
・「長野」(商品の産地)
・「おいしい」(商品の品質)

〈注意点〉
ここで、「図形+文字からなる商標」、「図形のみからなる商標」、「文字のみからなる商標」は、それぞれ異なる商標であるという点に注意が必要です。

そのため、例えば、「図形+文字からなる商標」の商標権を取得しただけでは、第三者の「図形のみからなる商標」や「文字のみからなる商標」の商標登録を防ぐことや、第三者の使用に対して、権利行使ができない可能性があります。

よって、「図形のみからなる商標」と「文字のみからなる商標」それぞれについても商標権を取得することが最善と考えられます。

文字商標とロゴ商標の詳細は、以下記事にて解説していますので、ご参照ください。

5.指定商品・役務

商標登録出願をする際、商標権の権利範囲を定める指定商品・役務を選択します。指定商品・役務の選択は、専門的な知識と経験が必要であり、その検討が不十分なまま、商標権を取得したとしても、必要十分な権利が取得できないということも考えられます。
したがって、可能な限り経験豊富な弁理士に依頼・相談するのが良いでしょう。

指定商品・役務の選び方の詳細は、以下記事にて解説していますので、ご参照ください。

※例えば、「APPLE WATCH」(登録第5819569号)は「腕時計」だけでなく、下記の商品・役務を含む幅広い権利範囲で商標権を取得しています。

・コンピュータ
・電子携帯用ゲーム
・フィットネス及び運動の指導及び教授並びにこれらに関する情報の提供(ウェブサイトを介して提供されるものを含む。)

いつ出願すべきか


1.先願主義というルール

日本の商標法は、早い者勝ちの先願主義が採用されています。そのため、原則、使用する商標の出願のタイミングはネーミング決定時等、早ければ早いほど良いです。

例えば、商標登録出願をする前にプレスリリース等で世間にネーミングやロゴを露出すると、悪意を持った第三者が先取り的に商標登録出願を行ってしまう危険性が高まります。

悪意を持った第三者の出願に対して、登録を防ぐ、あるいは、登録を取消す方策もございますが、何れも後手の対応であり、必ず成功するとも言えません。さらに、その様な方策には多くの手間とコストがかかってしまいます。

また、事業規模が大きくなるほど、商標の変更を強いられた場合のリブランディングのコストがかかります。そのため、世間の認知が拡大する前に、出願をしておくということがトラブルを未然に防ぐためにも重要です。

しかし、スタートアップにおいては予算が限られていることも多いでしょう。
ネーミング変更も許容できるのであれば、他人の権利を侵害していない限り、事業が軌道に乗ったタイミングで出願をすることも一案です。

2.事業拡大・リブランディング

事業が拡大すると、最初に想定していた商標の権利範囲に収まらない場合が生じ得ます。その場合、同じ商標について、拡大した事業の範囲を包含する商品・役務を指定した商標登録出願を別途する必要があります。

また、企業が自社のブランドを見直し、リブランディングすることがあります。その場合、リブランディングしたロゴ等を出願する必要が出てくるでしょう。

3.海外展開

①外国で権利取得する必要性

日本で既に権利化している商標であっても、外国において同様に商標権を行使することはできません。そのため、外国で商標を守るためには、その国毎に商標登録をする必要があります。

②外国への出願方法

外国に出願をする方法は、国ごとに直接出願する方法と、日本の特許庁に出願中又は登録されている商標を基礎として国際出願する方法があります。外国商標出願の詳細は、下記URLをご確認ください。

③外国への出願時に注意すべきこと

日本で登録が認められた商標であっても、外国でも同じく登録されるとは限りません。現地における識別力や先行商標との関係で登録が認められない可能性もあるため、注意が必要です。

④外国出願の費用

外国出願は、国内出願よりも費用がかかります。資金が調達でき、どの国に進出するか明確になった後に出願をするのが良いでしょう。

【特許庁HP 外国出願費用の補助】

https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_gaikokusyutugan.html

起業したばかりの会社・ベンチャー・スタートアップもしっかりと戦略的に商標出願を行う必要があるんだね。事業を成功させるためにも、後回しにせずきちんと検討してみるよ!

そうです。事業の成功のためには商標登録は不可欠です。
成功しているスタートアップの具体的な商標登録の事例を、以下のURL先で紹介しているから是非参考にしてください。

【スタートアップ・共創支援室 商標ガイド 事例紹介】
https://www.harakenzo.com/jpn/enterprise/

まとめ

いかがでしたでしょうか?起業した起業したばかりの会社・ベンチャー・スタートアップにとっての商標登録の重要性がお分かりいただけたと思います。

当事務所では「Amazing DX®」という、独自サービスを提供しており、無料の商標調査検索システムを利用したり、お手軽に商標出願をご依頼いただくことができます。

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幅広く承っておりますので、ぜひご相談ください!

supervisor
この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
中島 富雄
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