商標登録に必要な、出願用紙の細かい決まりについて

用紙に決まりってある?

特許庁に提出する商標の出願書類を作成したいのだけれど、出願書類の用紙に細かい決まりってある?今、パソコンが壊れていて、手書きで商標登録願を作成したいんだ。B5用紙にボールペンで書いてもいいかな。
パソコンが壊れたんですか、それは大変ですね。まず、残念ながら、B5用紙は特許庁への手続きに使えませんので、A4用紙を買ってきてください。
そうなの!?先に用紙の決まりを確認しておいた方がよさそうだね。
そうですね、1頁中の行数や上下左右の余白についてなどなど、他にも細かい決まりがありますよ。手書きの願書についても、認められるかどうか一緒に確認しましょう。

ここでは、出願に用いる用紙について、細かい決まりを説明いたします。また、これら決まりを反映したフォーマットをダウンロードできる場所も紹介します。

商標登録願(願書)に記載する内容については、別の関連記事で説明していますので、以下をご確認ください。

商標に関する手続の方法3つ

手続きをどのような方法で行うかによって、願書用紙の細かい決まりも変わってきます。
そのため、まず、どの方法で特許庁へ願書を提出するかを決める必要があります。

それぞれの方法での詳しい手続については、こちらの記事をご確認ください。

オンライン

専用のソフトウェアや電子証明書が必要となり、環境を整えるのに数日かかりますので、個人で手続きをされる場合はお勧めしません。
紙ではなく、パソコン上で書類を作成し、そのままパソコンを用いて特許庁に提出することになります。
そのため、紙とは違ったフォーマットがあります。

なお、こちらの方法で出来る手続きは、限られています。
例えば、商標登録願(願書)や早期審査に関する事情説明書、意見書、手続補正書、商標登録料納付書の提出等は可能です。
一方、異議申立や無効審判、不使用取消審判等の請求書は、オンラインでの提出はできず、紙での提出となります。

特許庁へ直接持参

紙に所定の事項を記載し、特許庁へ持ち込むことになります。
提出する用紙だけでなく、身分証明書も忘れずに持って行ってください。
通行証の交付を受けたり、手荷物検査があったり、特許印紙をまだ購入していない方は購入したりと時間がかかるので、余裕を持ってお出かけください。
紙での提出となりますので、出願手数料とは別に電子化手数料も必要となり、料金が高くなります。

郵送

紙に所定の事項を記載し、特許庁へ郵送することになります。
提出する用紙、封筒、特許印紙などを事前に用意する必要があります。
書留やレターパックで送ってください。
紙での提出となりますので、出願手数料とは別に電子化手数料も必要となり、料金が高くなります。

出願用紙の決まり

オンラインの場合

オンラインで商標登録願を提出する場合、以下の事項に気を付けてください。

<特許庁への送信ファイル形式>
電子出願で手続をするために扱う書類は、XML系書類とSGML系書類の2種類あります。
XML(eXtensible Markup Language:拡張可能マークアップ言語)やSGML(Standard Generalized Markup Language:標準汎用マークアップ言語)とは、文書を電子化するための標準形式のことです。
商標出願の場合、SGML系書類となります。

<文字>
・文字はJIS-X0208-1997に準拠したシフトJISコードで定められている文字を用いる。
・【】、▲▼、半角カタカナや丸付き数字が使用不可(欄名の前後に「【」及び「】」を用いるとき又は商標登録を受けようとする商標を記載する欄(以下「商標記載欄」という。)の中に記載するとき等を除く。)。

<他>
・イメージはモノクロ2値イメージ(PNG、GIF、BMP形式)とフルカラーイメージ(JPEG形式)が使用可能。グレースケールイメージ(JPEG形式)は使用不可。

特許庁へ送信できるデータの書式が決まっているので、その書式に沿っていなければ、基本的にはエラーが出て送信できない仕様になっています。
ひな形があるので、そちらに書き込むことで簡単に願書が作成できます。

参考:電子出願での書類の分類と対象書類
申請書類の書き方ガイド内の商標登録出願手続ガイドライン

特許庁への持参又は郵送の場合

紙で商標登録願を提出する場合、以下の事項に気を付けてください。

<紙の種類>
・日本工業規格A列4番(横21cm、縦29.7cm)の大きさのもの、つまりA4用紙を用いてください。
・インキがにじまず、文字が透き通らないもの
・縦長にして用いる

<文字の大きさや余白、行間などのレイアウト>
・字は、日本産業規格X0208号で定められている文字を用いる。
・余白は、少なくとも用紙の上に6cm、左右及び下に各々2cmをとるものとし、原則としてその左右については各々2.3 cmを超えないものとする。
・書き方は左横書、1行は36字詰めとし、各行の間隔は少なくとも4mm以上をとり、1ページは29行以内とする。
・文字は、10ポイントから12ポイントまでの大きさで、タイプ印書等により、黒色で、明瞭にかつ容易に消すことができないように書く。

<その他>
・用紙には不要な文字、記号、枠線、けい線等を記載してはならない。
・半角文字並びに「【」、「】」、「▲」及び「▼」は用いてはならない(欄名の前後に「【」及び「】」を用いるとき又は商標登録を受けようとする商標を記載する欄(以下「商標記載欄」という。)の中に記載するときを除く。)。
・特許印紙をはるときは、左上の余白にはるものとし、その下にその額を括弧をして記載する。

参考:出願の手続(令和4年度版)「第五章 商標登録出願の手続 第一節 願書、申請書の作成方法」商標施行規則様式集 様式第2(第2条関係)
   

上記の細かい決まりを守れるなら、手書きも可能です。「タイプ印書等により、黒色で、明りようにかつ容易に消すことができないように」とのことなので、鉛筆や色付きボールペンはNGです。雨に濡れるといけないので、水性インクも避けた方がよいでしょう。楷書ではっきり書いてください。
明りょうに、か。字が下手だから心配だなあ。もし特許庁の審査官が読めないと判断すればどうなるの?

願書の様式を間違えると

例えば、手書きの文字が10ポイントより若干小さかったであるとか、読むのに問題ないくらいの少しの汚れがついていた等であれば、おそらく出願が受理されます。もし、明らかに不要な項目を記入していたような時には、特許庁側で、職権で訂正してくれる場合もあるでしょう。出願が受理されると、出願日や出願番号が付与されます。

一方、商標を特定するための重要な箇所や出願人情報に関連する箇所に、読めない部分があったり何らかの間違いがあったりした場合は、特許庁から手続補完書を提出するように連絡が届きます。
手続補完書の提出によって、商標出願書類の瑕疵が解消されたのであれば、手続補完書提出の日が出願日となります。
つまり、出願日が繰り下がることになります。

この、商標出願の出願日の認定については、商標法第5条の2に規定があります。

第五条の二 特許庁長官は、商標登録出願が次の各号の一に該当する場合を除き、商標登録出願に係る願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。

 一 商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。

 二 商標登録出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が商標登録出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。

 三 願書に商標登録を受けようとする商標の記載がないとき。 四 指定商品又は指定役務の記載がないとき。

2 特許庁長官は、商標登録出願が前項各号の一に該当するときは、商標登録を受けようとする者に対し、相当の期間を指定して、商標登録出願について補完をすべきことを命じなければならない。

3 商標登録出願について補完をするには、手続の補完に係る書面(以下「手続補完書」という。)を提出しなければならない。

4 特許庁長官は、第二項の規定により商標登録出願について補完をすべきことを命じた者が同項の規定により指定された期間内にその補完をしたときは、手続補完書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない。

例えば、出願人名を読めないような字で書いてしまった場合、商標登録願を提出した日ではなく、瑕疵を解消する書面を提出した日が出願日になります。
なるほど。商標出願は基本的に出願日の早い者勝ちだから、出願日が繰り下がるのは嫌だなあ。手書きはやめて、家族にパソコンを借りて書類を作成することにするよ。

フォーマットのダウンロード

ひな形があれば、用紙の書式設定などに手こずることなく済みます。特許庁などでフォーマットがダウンロードできますので、以下の情報をお役立てください。

オンラインの場合

インターネット出願ソフトを用いた、電子出願用のひな型が、電子出願ソフトサポートサイトにてダウンロード可能です。

特許庁への持参又は郵送の場合

知的財産相談・支援ポータルサイトの各種申請書類一覧から、紙手続きでの商標登録願のひな型(WORDファイル)をダウンロードすることが可能です。

標登録出願書類の書き方ガイドも知的財産相談・支援ポータルサイトのページにありますので、願書作成時には一緒にご確認ください。

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商標出願に際しては、用紙に細かい決まりがあるだけでなく、願書の内容であったり手数料の納付であったりと、面倒なことが山積みです。
仮に全てクリアして出願できたとしても、願書中に不備があったり、先行商標がある・指定商品役務に不備がある等で拒絶理由通知が出る可能性もあります。

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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