商標登録の後に取消しができる商標の登録異議申立とは? 商標に関する手続商標登録後用語解説 2022年7月12日 2022年12月27日 Amazing DX guide 商標登録がされた後で 登録になった商標を特許情報プラットフォームで確認したら、ステータスに『異議申立のための公告』と表示されているんだけど、何か問題があったのかな? どの商標登録でも登録後の一定期間は表示されるものなので、表示がされていること自体に問題はありません。ただし、その期間には、第三者が登録商標の取り消しを求めることができますので、その異議申立制度は知っておいた方が良いかもしれません。 えっ!?審査を受けて登録されたのに、取り消されるかもしれないの?その異議申立制度ってどんな制度なの? この記事では、商標の登録異議申立制度について、その制度の概略を解説します。 1.登録異議申立制度とは 特許庁で審査官が審査をしているといえども、先に登録されている商標を見落として、後に出願された同一や類似する商標を登録してしまうケースが起こり得ます。また、その他に登録できないと決められている規定にもグレーゾーンがあるため、完璧ではありません。 そのため、登録に相応しくない商標が登録されてしまった場合に備え、その登録の取消しを求める「異議申立」をする機会が与えられています。その申立ては、誰でも行うことができます。その商標は登録すべきではないという理由を添えて、商標登録に異議を申し立てることにより、特許庁が登録の適否を審理し、認められればその登録は取り消されます。 2.異議申立の理由の例 異議申立ての理由として、以下のような例があります。 需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標 公共の機関の標章と紛らわしい等、公益性に反する商標 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標 他人の氏名等や著名な略称等を含む商標 他人の周知商標等と同一又は類似する商標 他人の商標登録と同一又は類似の商標であって、同一または類似の指定商品/役務に使用するもの 種苗法で登録された品種の名称と同一又は類似の商標 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標 他人の周知商標と同一または類似であって、不正の目的をもって使用するもの 3.異議申立ができる期間 上記2.であげた理由に該当すると考えられる場合、いつでも、その登録商標に異議を申立てをすることができるわけではありません。異議申立ては、「商標掲載公報の発行の日から二月以内にすることができる」と商標法で規定されているため、商標が登録されたことが公開された日から、2ケ月以内に書類を提出する必要があります。 登録異議申立の書類提出後は、特許庁において複数人の審判官により、書面での審理が行われ、登録を取消す理由があるかどうかが判断された後、その結果が通知されます。 期間内に異議申立をするには 商標の登録は公開されますが、影響がありそうな関係先に連絡されるわけではなく、その公開情報にアクセスしない限り知ることができません。 そのため、期間内に異議申立がされているケースでは、対象の商標が出願後審査中の段階から定期的に審査経過をウォッチングして、登録されたのを見計らって、期間内に異議申立されていることが多いです。 4.異議申立てをするときの費用 庁費用(特許印紙代)は11,000円~で、区分数の増加により加算されます。弁理士に依頼する場合には別途手数料が発生します。 5.異議申立以外の対応策 異議申立以外にも、商標登録を無効にしたり、取消したり、登録前の審査段階で登録に不利な情報提供をしたりすることができます。その方法は以下の通りです。 無効審判 異議申立の期間(商標公報発行後、2ケ月)経過してしまった後の場合、商標登録の無効の審判を請求することができます。 無効審判を請求できるのは利害関係人に限られます。例えば、商標権者から商標権侵害で訴えられていたり、同一または類似の商標を使って商売をしようとしている等の関係性が必要です。 登録後5年を経過してしまうと、無効審判を請求する理由が限られてしまう点に注意が必要です。 庁費用(特許印紙代)は55,000円~で、区分数の増加により加算されます。弁理士に依頼する場合には別途手数料が発生します。 無効審判について、以下記事で詳細を解説していますので、ご参照ください。 商標登録無効審判 使用したい商標が既に登録!大手国際特許事務所から 取消審判 商標の登録を取消すための取消審判にはいくつかの種類はありますが、ここでは利用されるケースが最も多い不使用取消審判を紹介します。 不使用取消審判とは、商標登録から一定期間(直近の3年以上)継続して商標が使用されていない場合に、その登録の取消しを求めることができる制度です。取消の対象とする指定商品/役務の全部もしくは一部を審判請求書に記載します。選択した指定商品の全てについて不使用が確認された場合に、登録が取消されます。なお、使用しているかどうかは、商標権者が証明することになります。 誰でも取消審判の請求をすることができます。審判請求書に請求人を記載する必要があるため、相手方(商標権者)には、誰が取消請求したかが分かります。 庁費用(特許印紙代)は55,000円~で、区分数の増加により加算されます。弁理士に依頼する場合には別途手数料が発生します。 不使用取消審判以外の取消審判は以下記事に記載されていますので、ご参照ください。 商標登録の取消とは?不使用取消審判の制度も解説! 情報提供 出願中の商標について、この商標は登録すべきでないという情報を特許庁に提供して、その商標が登録されるのを阻止することを目的に利用されています。審査段階で登録するかどうかの判断をするための参考情報として「刊行物等提出書」という書類を特許庁に提出します(参考情報であるため、それを採用するかどうかは審査官に委ねられています)。 誰でも情報提供することができます。なお、情報提供者として名前を出しだくない場合は、匿名での提出が可能です。 庁費用(特許印紙代)は掛かりませんが、弁理士に依頼する場合には手数料が発生します。 情報提供について、以下記事で詳細を解説していますので、ご参照ください。 情報提供とは?商標登録を阻止するための手続きを解説 なるほど!間違って登録されてしまった等の場合に備えて、登録の取消しを請求できることになっているんだね。 不明点やお困り事はご相談ください いかがでしたでしょうか?特許情報プラットフォームにおけるステータス表示と、商標の登録異議申立の制度の概略はお分かりいただけたと思います。 実際に、異議申立を受けたり、逆に他人の登録された商標に異議申立をしたりする際に、不安なことや迷っていること、お困りごとや商標のウォッチングに関するご要望は、お問合せフォームにてお問合せ下さい。当所の経験豊富な商標専門の弁理士やスタッフが対応いたします。 Supervisor for the article: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者