【商標】審決ってなに?意味やさがし方を解説

商標の「審決」ってどんなもの?

「審決」って何? 判決ならよく聞くけど……
「審判の結果として下される判断・決定」のことです
「判決」は裁判の結果として裁判所が下すものですが、「審決」は審判の結果として、知的財産に関する案件では特許庁が下します
「裁判」じゃなくて、「審判」に関する決定のことなんだね
それって、どんな時に出されるのかな? 私も読めるのかな?

商標・特許・意匠などの知的財産に関し、特許庁が審判手続の結果として下した判断を「審決」と言います。
このページでは、商標に関する審決について、その概要や意義、審決を探す方法などを解説します。

審決とは

知的財産制度における「審決」は、以下のようなものです。

審判における、審判官の合議体の最終的な判断。原則として、審判は審決を行うことによって終了する。審決は、所定の事項が記載され、審判官によって記名、押印された文書(審決書)をもって行われる(特許法施行規則第50条の10)。

特許庁HP 用語解説「審決」より https://www.jpo.go.jp/toppage/dictionary/japanese_shi.html

簡単に言うと、「審判の最終的な判断」という意味です。

では「審判」がどういうものかというと、以下のとおりです。

拒絶査定等の審査における行政処分に対して不服がある者が準司法機関に対して不服を申し立てた場合に、準司法機関が行う判断、又は、特許又は登録処分を無効とすべきことや取り消すべきことを準司法機関に対して求めた場合に、準司法機関が行う判断。または、それらの判断を求めることを可能とする制度自体の総称。

特許庁HP 用語解説「審判」より https://www.jpo.go.jp/toppage/dictionary/japanese_shi.html

「司法機関」とは裁判所のことですが、「準司法機関」とは、法に基づいた判断を行う、裁判所に準じた機関という意味で、知的財産に関しては「特許庁」がこれにあたります。
特定の申立がされたときに、特許庁は審判官の合議体を形成して、その申立の内容を精査し判断を下します。この制度やそこで行われる判断のことを「審判」と言います。

「審判」は、特許庁へ判断を求める制度やそのとき行われる検討・判断の全体のことを言い、その審判での結論を「審決」と言います。

審決が出される場面

審判とは特許庁への申立制度のことですが、なんでもかんでも審判請求できるわけではありません。
商標の場合、特許庁に審判を請求することができるのは、「拒絶査定への不服」、「商標登録の無効」、「商標登録の不使用取消」、「登録異議申立」の4つです。

そのため、商標に関する審決は、この4つの審判が決着するときに出されます。

拒絶査定不服審判

商標登録出願の審査において、拒絶理由通知に対して提出した意見書や手続補正書によっても拒絶理由が解消しなかった場合、審査官は拒絶査定を発行します。
拒絶査定に不服がある場合には、出願人は拒絶査定に対する不服審判を請求することができます。

無効審判

登録商標が商標法第46条の無効理由に該当する場合には、その商標登録を無効にすることについての審判を請求することができます。
無効審判を請求できるのは、利害関係人に限定されています。また、一部の無効理由については、登録から5年経過後には請求ができなくなります。

〈無効理由〉
商標権を無効にできる理由(無効理由)は以下に該当する場合などです。
1)識別力のない商標等、商標登録の要件を満たしていない
2)先願に係る他人の登録商標と類似する等、不登録事由に該当
3)先願の規定、外国人の権利享有又は条約に違反
4)商標権者であった者が、その商標権が不正使用により取り消されてから5年を経過せずに、同一商標又は類似商標の登録をしたこと
5)商標の詳細な説明や物件が、商標登録を受けようとする商標の内容を特定していない
6)商標登録が、商標登録出願により生じた権利を承継しない者に対してされたこと
7)商標登録された後において、外国人の権利享有に違反、条約に違反又は公益的な不登録事由に該当する又は地域団体商標の登録要件を満たさないこととなったこと

(参照)特許庁「知的財産権制度入門(2022年度)」

不使用取消審判

登録商標が、権利者(またはそのライセンシー)によって、継続して3年以上使用されていないときには、不使用取消審判を請求することができます。
不使用取消審判は、利害関係のあるなしに関わらず、誰でも請求可能です。

不使用取消審判が請求されると、権利者は登録商標の使用を証明しなければなりません。
使用の証明ができなかった場合、その商標の登録は取り消されます。

登録異議申立

他人の商標が登録されたことに対して異議がある場合、誰でもその登録に異議を申し立てることができます。
ただし、異議申立ができるのは、商標登録が公告されてから2ヶ月以内に限られます。

ちなみに、この異議申立については、他の3つと違って「審判」は付きません。
そのため、登録異議申立の最終判断も「審決」とは呼ばれず、単に「決定」とされています。
ただし、性質としては、他の3つと同じように「審判/審決」ととらえておくことができます。

審決の意義

審決は、商標登録の制度上で非常に重要な意味を持っています。
その理由は、主に以下の3つです。

合議体による判断であること

拒絶理由通知・拒絶査定に関する審査は、1人の審査官によって行われます。
一方で、審判は、3人(または5人)の審判官による合議体によって審理されます。

もちろん、審査官も審査基準に基づいて公正な判断をするのですが、1人での判断では、その人の主観を排除するのにも限界があります。
複数人で検討する方が、より多角的・客観的に物事を判断することができるので、より間違いのない判断であると見なすことができます。

審査が適切に行われたかの確認であること

不使用取消審判以外の審判は、先に登録査定または拒絶査定という審査における最初の判断があった上で、その判断に不服や異議があるということで請求されます。
そのため、これらの審判には、ある商標を登録査定・拒絶査定と判断した審査が適切なものであったかを確認する意味があります。
その商標を登録するべきか、するべきでないかを「改めて」検討して出される結論が審決なので、審決はより正確な判断が期待できます。

裁判の「第一審」にあたるものであること

日本の裁判制度は「三審制」になっており、3回裁判所に判断を求めることができるようになっています。そして、知的財産については、特許庁で行われる審判が、この1回目の判断(第一審)にあたります。
審判における判断=審決に不服がある場合には、知的財産高等裁判所(知財高裁)にその審決の取消を求める訴訟を提起しますが、これが第二審となります。知財高裁の次は最高裁判所に上告して、これで終審です。

「裁判フローのはじまり」と考えると、特許庁における審決がどれほど重要なのかよくわかりますね
ある商標が登録になりそうかどうかを調査するときには、弁理士は過去の審決例を参照します
また、拒絶理由通知に対する意見書では、同様の事例に対する審決を引用して、説得力を高めます
そうなんだ
どんな審決があるか、私も見たいなあ

審決のさがし方

知的財産に関する審決は、無料のデータベース「J-Plat Pat」上で公開されています。

トップページの「審判」タブから「審決検索」を選択して、キーワード検索または番号検索が可能です。
また、出願・登録されている商標の「経過情報」からも、審決を見ることができます。

J-Plat Patホームから「審判-審決検索」を選択
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

キーワード検索

入力種別で「キーワード入力」を選択すると、キーワード検索ができます。

例えば、「全文」に「識別力」と入れて検索すると、審決の中で「識別力」という語が含まれているものがヒットします。
これらの審決を読めば、審判において識別力がどのように判断されているかを確認することができるでしょう。

デフォルトでは、「文献種別」は「査定型審判」(拒絶査定不服審判など)だけが選択されているので、異議申立や当事者系審判(無効審判など)の審決も探したいときは、これらにもチェックを入れてください。

なお、ヒット件数が3,000件を越えてしまうと一覧が表示されません。
そんな時は、「検索オプション」から審決日を限定して、ヒット件数をしぼってみてくださいね。

キーワード入力画面
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/a0100

番号検索

読みたい審決の番号が分かっている場合には、「番号検索」から一発でその審決を見つけることができます。
番号が「平成○○年審判第XXXX号」や「昭和○○年審判第XXXX号」のようになっている場合は、平成は「H」、昭和は「S」を使って、「H○○-XXXX」・「S○○-XXXX」という形にすると、検索できますよ。

番号入力画面
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/a0100

経過情報からさがす

各商標の経過情報から、「審判情報」のタブを選ぶと、その商標に関して請求された審判がすべて確認できます。
「審判記事」欄にある審判番号のリンクをクリックすると、審決に直接アクセスできます。

経過情報から「審判情報」を確認
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0000
これで、私も審決をさがせるよ!

参考になる審決例

特許庁のHPの「参考審決等の英訳(https://www.jpo.go.jp/system/trial_appeal/info-shinketsu-eiyaku.html)」のページでは、法解釈や運用の理解の参考になる審決が紹介されています。

本来は、日本の知的財産に関する国際的な情報発信として、審決の英訳を提供するページですが、元になった日本語の審決とその要約も紹介されているので、日本の人にとっても参考になるページです。

審決を参照して商標登録を目指そう!

審判の結論である審判を参照することで、商標登録について、特許庁がどのように判断するのかを確認することができます。
商標調査をするときには、審決を参照して、どのような判断が下されそうかを予測しましょう。
拒絶理由通知に対する意見書では、似たような事例の審決を記載すると、意見の説得力がぐっと増しますよ。

審決を読むことで、最近の審査の傾向や重視されるポイントも見えてきます。
あなたの商標戦略のために、審決を参照してみてくださいね。

でも、他の業務もあって、商標ばかりに時間をかけられない!という方は、「Amazing DX®」でさっと商標登録してしまいましょう!

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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