言葉の商標を出願する場合の注意点は?登録の要件を確認!

かっこいいキャッチコピーを考えたよ!このキャッチコピーを商標としてサービスに対して使ってみたいな。
ところで、キャッチコピーのような短い言葉も商標として出願できるの?
出願はできます。ただし、キャッチコピーのような短い言葉を出願する際は、商標法第3条1項について特に注意を払った上で出願すべきです。

スローガンおよびキャッチフレーズなどの、言葉そのものは商標として登録されるの?

別記事において、商標法第3条第1項第6号(需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標)に該当する商標は登録を受けることができない旨をご案内致しました。
2016年3月以前における旧審査基準においては、「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、上述の、商標法第3条第1項第6号に該当する」こととされており、キャッチフレーズ等は原則商標登録ができないものとされていました。

しかしながら、2016年4月に「標語」の商標登録の審査基準が改正されました。2016年4月以降の新審査基準では、前述の旧審査基準に明記されていた「標語(例えば、キャッチフレーズ)は、商標法第3条第1項第6号に該当する」が削除されました。この改正により、標語が登録されやすくなったといえます。

一方で、新審査基準に、標語の商標の登録が認められない場合について明記されています。本記事では、その主なポイントをご紹介します。

※以降、本記事において、「スローガンおよびキャッチフレーズなどの、言葉そのものから構成される商標」を「キャッチフレーズ商標」と称します。

キャッチフレーズ商標の登録が認められない要件(1)

・商品又は役務の直接・具体的な宣伝・広告として認識され、出所識別標識として認識されない場合

①出願商標が、全体から生じる観念と指定商品・指定役務との関連性、指定商品・役務の取引の実情、全体の構成及び態様等を総合的に勘案して、需要者に指定商品又は指定役務の直接・具体的な宣伝・広告として認識される場合には、本号に該当します。

②①の判断において、出願商標が、例えば、下記に挙げる事項に該当する場合には、商品又は役務の宣伝・広告として認識される事情として考慮されます。
(例)
①商品又は役務の特性や優位性を認識させる場合
②商品又は役務の購入や使用を誘引していると認識させる場合
③出願商標と同一又はそれに類する語が一般的に宣伝・広告として使用されている場合

(3) 出願商標が、例えば、下記に挙げる事項に該当する場合には、商品又は役務の直接・具体的な宣伝・広告ではなく、何人かの業務に係る商品又は役務であると認識させる事情として考慮されます。
(例)
①出願商標に商号等の自他商品・役務の識別機能を有する語が含まれる場合
②出願商標が自他商品・役務の識別機能を有する図形等と結合している場合
③出願人が出願商標を長期間使用している場合
④第三者が出願商標と同一又はそれに類する語を宣伝・広告として使用していない場合

キャッチフレーズ商標の登録が認められない要件(2)

・商品又は役務との直接的な関連性は弱いものの、企業の理想、方針等を表したものとして認識され、出所識別標識として認識されない場合

出願商標が、全体から生ずる観念、取引の実情、全体の構成及び態様等を総合的に勘案して、一般に企業の理想、方針等を表したものとしてのみ認識される場合には、本号に該当します。
具体的に、出願商標が、例えば下記に挙げる事項に該当する場合には、企業の理想、方針等として認識される事情として考慮されます。
(例)
①出願商標と同一又はそれに類する語が企業の理想、方針等を表したものとして一般的に使用されている場合

また、出願商標が、例えば下記に挙げる事項に該当する場合には、企業の理想、方針等としてのみならず、何人かの業務に係る商標又は役務であると認識させる事情として考慮されます。
(例)
①出願商標に商号等の自他商品・役務の識別機能を有する語が含まれる場合
②出願人が出願商標を長期間使用している場合
③第三者が出願商標と同一又はそれに類する語を企業の理想・方針等として使用していない場合

(2)の要件の一例としては、会社の企業メッセージが挙げられます。企業メッセージは、自社のコンセプトや理念、姿勢、方針などを社外や社内に伝えるためのフレーズであるためです。

登録されるキャッチフレーズ商標とは、どんな商標?

では、登録されるキャッチフレーズ商標と、登録されないキャッチフレーズ商標とは、どのような違いがあるのでしょうか。具体的に、何の要件を満たせば、キャッチフレーズ商標が登録されるのでしょうか。

上述の要件およびキャッチフレーズ商標の登録例から考えるに、以下の要件が満たされている商標が、登録となる傾向にあるようです。

(1)本願商標の語が造語等として認識できること
(2)出願人が本願商標を一定期間識別標識として使用していること
(3)第三者が本願商標を使用していないこと

登録事例

①商標: 美味日本(不服2011-006326 )
指定商品・区分:第29類「かつお節,寒天,削り節,食用魚粉,とろろ昆布,……」、第30類「茶,菓子及びパン,調味料,コーヒー及びココア,穀物の加工品,……」、第31類「野菜(「茶の葉」を除く。),茶の葉,果実,糖料作物,あわ,……」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」

本商標は実体審査において、商標法第3条第1項第6号に該当することを理由に拒絶された。
しかし、その後不服審判において、以下の理由により原査定が取消されて登録に至った。

(1)その構成中の「美味」及び「日本」の文字は、辞書によると、それぞれ、「うまい味。また、その食物」及び「我が国の国号」との意味を有する語である。本願商標の構成文字が、その指定商品との関係からみて、原審説示の意味合いを直ちに看取し得るとはいい難い。

(2)本願商標の指定商品を取り扱う業界において、「美味日本」の文字が、不特定多数の者によって、商品の宣伝文句やキャッチフレーズ等を表すものとして、取引上一般的に使用されている事実が発見されなかった。
そうとすると、本願商標は、その指定商品について、自他商品の出所識別標識としての機能を十分に果たしている。

確かに、J-platpatで検索すれば、キャッチコピーに類似している登録商標がいくつかヒットするね。
言葉の商標の登録要件はわかったよ。けど、自分で考えたキャッチフレーズが登録されるのかどうかがわからない・・・。
宣伝・広告や企業の理想として認識される要件が、審査基準で明確に定められています。なので、それらの要件に引っかからないように、キャッチフレーズ商標を作成する必要があります。
その作成は、実務経験を積んでいる者でないとなかなか難しいです。とりあえず、一人で調べる前に、専門家に相談してみてはいかがでしょう?
そうだね。自分だけで判断するんじゃなくて、専門家の見解を聞いた方がいいね。専門家に相談すれば安心だね!

キャッチフレーズ商標についての登録可否を専門家に確認しよう!

登録の要件を満たすキャッチフレーズ商標の作成は、決して簡単ではありません。審査基準に記載されている登録要件はあくまで一般論です。個々の出願予定の商標にあわせて、宣伝や企業理念を示す商標でないと特許庁に認識されるような言葉を使う必要があります。

まずは、自社のキャッチフレーズ商標の登録の可能性について、弁理士へお尋ねしてみませんか?お気軽に当所までお問い合わせください!キャッチフレーズの使用をご予定の際は、他人に先を越される前に、早期の権利化をお勧め致します。

出典情報:標語、キャッチフレーズに関する商標審査基準について(案)

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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