権利を第三者に譲渡するときは…商標の移転登録申請について

商標の移転登録

他社から商標権を譲り受けることになったよ。大切な財産だから、特許庁への手続についてきちんと確認しておきたいな
譲渡の場合は、「特定承継」ですね。権利移転の原因によって、「特定承継」と「一般承継」があり、それぞれ提出する書類が異なりますので、確認してくださいね

商標権(そのほか、特許権・実用新案権・意匠権)は、財産権の一種であり、他人に譲渡することができます。
このページでは、登録された商標の権利移転に関する手続「移転登録申請」について説明します。

移転登録申請について

契約などにより商標権の移転(譲渡、相続など)が生じた場合、移転登録申請が必要です。
権利が移転したことを登録しなければ、譲渡を受けた側が権利行使することはできません。

権利移転が生じる原因によって、「特定承継」と「一般承継」があり、また、権利の一部か持分の譲渡か、などによっても、それぞれ提出する書類が異なりますので、注意してください。

必要な書類

特定承継の場合

特定承継とは、【譲渡】【贈与】【遺贈】【判決】などです。
移転登録申請書に下記の書類を添付します。
申請書の様式は、特許庁HP「権利の移転等に関する手続」をご確認ください。

【譲渡による移転登録】
・権利者が権利の全部を譲渡した場合、売買契約証書又は譲渡証書等
・権利者が権利の一部を譲渡した場合、一部譲渡証書等
・共有の権利のうち、一部の共有者が持分を譲渡した場合、持分譲渡証書、共有者の同意書等
・共有の権利のうち、一部の共有者が持分を放棄した場合、持分放棄証書等

【贈与による移転登録】
・贈与証書等

【遺贈による移転登録】
・遺言書等

【判決による移転登録】
・裁判上の判決(和解、調停を含む)を登録原因とする場合、執行力のある判決書の正本、和解調書、調停調書等

※手続きを特許事務所に依頼する場合は、委任状の提出も必要です。

一般承継の場合

一般承継とは、【相続】【法人の合併】【会社分割】などです。
移転登録申請書に下記の書類を添付します。
申請書の様式は、特許庁HP「権利の移転等に関する手続」をご確認ください。

【相続による移転登録】
・戸籍謄本等(被相続人の死亡の事実の証明、相続人であることの証明)

【法人の合併による移転登録】
・合併の事実の記載ある承継人の登記事項証明書の原本又は被承継人の閉鎖登記事項証明書の原本

【会社分割による移転登録】
・会社分割の事実の記載ある承継人の登記事項証明書の原本又は被承継人の閉鎖登記事項証明書の原本

※手続きを特許事務所に依頼する場合は、委任状の提出も必要です。

譲る方と譲り受ける方、どちらが手続きをするのか?

移転登録は、原則として、『権利を譲渡する「登録義務者」と、権利を譲り受ける「登録権利者」が共同で申請すること』とされていますが、追加で書面を提出することで、どちらか単独でも申請をすることができます。

一般的には、「登録権利者」が手続を行うことが多いです。

・登録権利者だけで申請する場合:
譲渡証書に加えて、登録申請を登録権利者だけで申請することを承諾する旨等を記載し、登録義務者が押印した承諾書(単独申請承諾書)を提出します。
または、登録権利者だけで申請することを承諾する旨を記載した譲渡証書とその写しを提出することも可とされています。

移転登録申請に必要な費用

移転登録の手続をする際の費用について説明します。‎

・印紙代:30,000円/1件 ※収入印紙
・特許事務所に依頼する場合は、事務所の手数料等が発生します。

なお、商標登録の前に権利を移転する場合は、印紙代:4,200円/1件(※特許印紙)で手続を行います。提出書類も、移転登録申請書ではなく、出願人名義変更届を提出します。

※後述の「その他の変更手続」に掲載のリンクで詳細を説明しています。

移転登録が完了するまでの期間

移転登録申請書は、書面で作成し、手続に応じた印紙を貼付したうえ、特許庁窓口または郵送にて提出します。オンラインでは手続きできません。

特許庁に申請書を提出後、方式審査が行われ、2週間程度で登録原簿に申請内容が登録されます。
その登録後、さらに2週間程度で、登録済通知書が申請人が送付されます。

つまり、登録済通知書を受け取るまでは4週間程度ですが、原簿に登録された後であれば、
登録原簿の閲覧請求を行うことで、登録済通知書の発送を待たずに移転登録の完了を確認することができます。

申請手続に不備がある場合の注意点

申請手続に不備があった場合、特許庁から「手続補正指令書」が届きます。これに対しては、2ヶ月以内に手続補正書を提出し応答することができます。
応答により不備が解消した場合、申請書の受付日が確保されたうえで申請内容が登録原簿に記載され、登録済通知書が発送されます。

一方で、補正でも解消しない場合、特許庁から「却下理由通知書」が届きます。これに対しては、2ヵ月以内に弁明書を提出し応答することができます。
弁明書は却下処分前に却下理由に対して意見陳述をするものであり、申請書の補正ができるというものではない点、注意が必要です。
弁明書によって却下理由が解消されない場合、「手続却下処分」となり、申請書一式と、申請書に貼付した印紙が消印されずに返却されます。

<参考:特許庁HP「移転登録申請の受付から原簿への登録まで」>

<様式>
手続補正書の様式見本(2. 移転関係様式(10)その他b. c.からダウンロードできます)
手続補正書の書き方について
弁明書・取下書の様式見本(2. 移転関係様式(10)その他 d. e. f. からダウンロードできます)

その他の変更手続

移転登録申請は、権利が発生した商標、つまり登録後の商標を移転する手続ですが、商標登録の前にも移転することができます。
その場合は、「出願人名義変更届」を特許庁へ提出する手続になります。
出願人名義変更届の手続は、印紙代が4,200円(※特許印紙を使用します)と、登録後の移転登録手続に比べ安くなります。
商標登録の前に、権利の移転が確定している場合は、商標権が発生する前(登録料を納付する前)に、移転の手続きを行った方が、費用は抑えられることになります。

また、それ以外にも、権利の移転がなく、単に、自身の社名や住所を変更した場合も特許庁へ届け出る必要があります(「住所(居所)変更届」/「氏名(名称)変更届」または「登録名義人の表示変更登録申請書」)。

やっぱり複雑だし、自分でやるのは不安だなぁ…専門家である弁理士さんに相談してみよう

まとめ

移転登録申請は、移転の原因や必要書類など、専門家でさえ複雑に思います。
ご自身に合った手続や様式がわからない、ご自身での手続が不安という方は、当所へお気軽にお問い合わせください。
また、移転登録申請の前に、譲渡証書の内容の確認など、譲渡後のトラブル防止を見据えたご相談も可能です。商標専門の弁理士がサポートします。

supervisor
この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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