商標登録における電子出願および電子出願手数料について

紙出願 vs 電子出願

最近、働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症拡大の影響でテレワークが急速に広まったことなどを背景に電子化が大きな注目を浴びているみたいだね。
そうですね。新しい働き方を推進する上で、書類の電子化はますます重要になってくるでしょうね。電子化と言えば、2019年(令和元年)に国の行政手続のオンライン化実施を原則とする通称「デジタル手続法」が施行されましたが、特許庁では、1984年(昭和59年)に世界に先駆けてペーパーレス計画が策定されて、1990年(平成2年)12月から特許・実用新案の電子出願の受付が、また、2000年(平成12年)1月から意匠・商標・国際特許出願・審判の電子出願受付が開始されていますよ。
さすが特許庁だね。ちょうど商標出願を検討していたところなんだけど、紙(書面)で出願するよりも、電子出願した方がいいのかな?

特許庁は、出願の処理にかかるコストを削減することを目的としてペーパーレス計画を推進しており、その一環として電子出願という方法を用意し、電子出願を推進しています。
しかし、この電子出願、実際に使おうと思っても個人の方がインストールやユーザ認証を行うにはまだまだハードルが高いのが現状です。
この記事では、電子出願の概要を解説したうえで、電子化手数料の納付についても紹介します。

電子出願の概要

特許庁への出願は、従来からの紙出願(特許庁へ持参または郵送)と、オンラインで手続を行う電子出願(インターネット出願)の2種類があります。
特許庁におけるペーパーレス計画の推進により、2019年には特許・実用新案で98.6%、意匠が93.2%、商標が83.8%という高い電子出願率が実現されています。

電子出願の仕組み

特許庁への電子出願は、自宅や会社のパソコンから出願等の申請書類を高速なインターネット回線を用いて特許庁へ送信する方法です。
手続にあたっては事前に、電子証明書(注1)の取得、パソコンへインターネット出願ソフト(注2)のインストールが必要となります。
書面による出願と比較し、電子化(データエントリー)にかかる期間と電子化手数料が必要ない、産業財産権関係料金(手数料)の支払方法の選択肢が増えるなどのメリットがあります。

(注1)電子証明書とは、申請人がインターネットを介して特許庁に手続を行う際の身分証明書、印鑑証明書のようなものです。特許庁ではこの電子証明書を利用し、改ざんやなりすましなど、不正な手続を防止しています。

(注2)インターネット出願ソフトとは、特許庁へのオンライン手続に必要な専用ソフトであり、特許庁が無償で提供しています。

インターネット出願ソフトの機能一覧

インターネット出願ソフトを用いて行うことができるオンライン手続は以下のとおりです。

[出願]特許・実用新案・意匠登録・商標登録の出願、査定系不服審判請求などの手続をオンラインで行う機能
[発送]優先権証明請求書、ファイル記録事項記載書類・登録事項記載書類の交付請求や閲覧申請を行うオンライン請求機能
[請求]請求機能で請求したファイル記録事項記載書類・登録事項記載書類の閲覧をオンラインで行う機能
[閲覧]特許庁から送られる拒絶理由通知や登録・拒絶査定等の通知書類をオンラインで受領する機能
[補助]オンライン予納照会、口座振替情報照会、指定立替納付照会、電子現金納付に使用する納付番号の取得・照会をオンラインで行う機能
[国際出願]PCT-RO出願の手続をオンラインで行う機能

電子出願の事前準備

電子出願を始めるには、以下のうちSTEP1→5までの事前準備が必要です。

STEP1:電子証明書の取得
特許庁への電子出願に使用可能な電子証明書を特定の発行機関や認証局から取得します。

STEP2:PC機器等の準備
Windows/Macパソコン及びインターネット接続環境を準備します。ICカードタイプの電子証明書の場合、ICカードリーダライタが必要です。

STEP3:インターネット出願ソフトの入手
電子出願ソフトサポートサイトから「インターネット出願ソフト」のダウンロード請求を行い、メールに記載されたURLからソフトをダウンロードします。

STEP4:インターネット出願ソフトのインストール
「インターネット出願ソフト」をパソコンにインストールします。

STEP5:申請人利用登録
「インターネット出願ソフト」で特許庁へ識別番号(注)と電子証明書の情報を登録します。

(注)特許庁では手続をする者の「氏名・住所・印鑑・電子証明書」等の情報を申請人登録情報として管理しており、1人の手続者に1つの番号(アラビア数字9桁のコード)を付与しています。これを『識別番号』と言います。

電子出願のメリット

①24時間手続ができる
平日はもちろん、夜間や休日でも申請することが可能です。

②どこからでも申請できる。
パソコンさえあれば、自宅やオフィス、地方や海外などどこからでも申請できます。

③記入ミス・記入漏れがない
入力チェック機能やオンラインヘルプ機能があるので、ミスの心配もなく安心です。

④時間・コストの節約
手続の迅速かつ効率的な処理が可能です。また、手続する際の人件費や書類作成・郵送等の事務コストの削減などにもつながります。

書面で手続する場合の電子化手数料について

電子化手数料とは

特許出願等の特許庁への各種手続は、パソコン等を利用して行う電子出願と、書面(紙)による手続の二通りの方法がありますが、「電子出願で可能な手続を書面で行う場合」には、その書面に記載されている事項を特許庁長官が認定した登録情報処理機関において電子化することとしており、この電子化のために必要な費用(実費)として納付する手数料です。

なお、電子化手数料は「電子出願で可能な手続を書面で行う場合」において納付する必要がある手数料であるので、電子出願では不可能な手続(例えば、物件提出書)等については、書面で手続した場合でも電子化手数料の納付は不要です。

電子化納付手数料の納付を必要とする手続の詳細については、特許庁ホームページの以下のページをご参照ください。

【参照】電子化手数料が必要となる手続一覧

電子化手数料の額及び納付方法

電子化手数料は、1件につき2,400円に書面1枚につき800円を加えた額(2022年4月1日以降に提出の申請書類)となります(令和4年改正あり)。
※2022年3月31日までに提出の申請書類については、1件につき1,200円に書面1枚につき700円を加えた額

<根拠条文>
・工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(特例法)第40条
・特許法等関係手数料令(手数料令)第5条

電子化手数料の納付に当たっては、手続書面を特許庁に提出した後、2週間程度で手続者の元へ登録情報処理機関から「電子化料金納付のご案内」(振込用紙)が送付されますので、その振込用紙に記載された金額を所定の金融機関へ振り込みます。特許庁1F発明推進協会の窓口で、備え付けの電子化申込書に記入の上、現金で納付することもできます。

電子化手数料の納付期限は、特許庁への書面提出日から30日であり、30日を超えても手数料納付の確認ができない場合は、特許庁から手続補正指令書(補充指令書)が発送され、その後、登録情報処理機関から「電子化料金未納・不足のご案内」として専用の払込用紙が再度送付されるので、その時点でまだ納付手続が完了していない場合は、指令書の発送日から30日以内に手続を行います。それでも納付を行わない場合は手続が却下されてしまいます。

登録情報処理機関とは

特許庁への各種手続が電子出願で可能な手続を書面で提出された場合における、その書面の記載事項を電子化する業務及び電子化手数料を徴収する業務は、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律に基づき、特許庁長官が認定した登録情報処理機関が行っており、現在のところ、「一般財団法人工業所有権電子情報化センター」の1機関が登録されています。

なるほど。従来からの紙出願だと、特許印紙購入→郵送(書留)→電子化手数料支払いと手続が面倒でコストもかかるんだね。だけど、個人でインターネット出願ソフトをインストールしたり、電子証明書を取得したりするのはハードルが高そうだね。
そうですね。そんな時は、ぜひ電子出願を代行してくれる弁理士に依頼することをおすすめします。
ありがとう。商標調査も必要かと考えていたところだし、一度弁理士に相談してみるよ!

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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