ロゴを含まない「色」単体で商標登録できる?【色彩のみからなる商標/新しいタイプの商標】

店の看板の色が結構特徴的で、周りの人から評判が高いんだよね。
店名とか商品名とかはもう商標登録してるから、看板の色だけで商標登録できないかな?
近年の法改正で、「色」も単体で商標登録できるようになりました。
以下で登録の要件や登録例を紹介しますので、是非ご覧ください。

「色」の商標について

街中を歩いていると、特徴的な配色の店舗の看板や商品を見かけることがあると思います。

中には、長年その配色が使用された結果、店名や商品名が書かれていなくても、「あの店の看板だ」「あの商品だ」と分かるくらい、著名になっている色もあります。

2015年の商標法の改正により、文字やロゴ等を含まない、こういった「色」単体も、「色彩のみからなる商標」として登録が認められるようになりました。

このような「新しいタイプの商標」の制度の概要について、以下のページで解説しておりますので、宜しければご覧ください。
・「商標登録の種類とは?新しいタイプの商標・地域団体商標など

以下で、「色彩のみからなる商標」の出願方法や登録要件を解説します。

色彩のみからなる商標の出願方法

色彩のみからなる商標の出願書類には、商標登録したい色彩が表示された図や写真を添付する必要があります。

図や写真の他、【商標の詳細な説明】の欄には、例えば以下について文章で記載する必要があります。

商標 色 出願例1
特許庁「商標審査便覧54.02」より

また、単に色彩を指定するだけではなく、「色彩を付ける商品等の位置」を指定して出願することもできます。
このような場合、色彩を付ける商品等の位置を、図や写真、文章を用いて特定する必要があります。

商標 色 出願例2
特許庁「新しいタイプの商標の出願方法」より

色彩のみからなる商標の登録要件

色彩のみからなる商標には、他の商標と同じく「識別力」などの要件が課されています(商標登録の要件について、詳しくはこちらのガイド記事をご覧ください)。

輪郭を特定しない、色そのものを権利の対象とする色彩のみからなる商標は、非常に強力な権利です。
そのため、文字商標などの他の種類の商標と比較して、色彩のみからなる商標は、商標権の取得にかなり高いハードルが課されています。

具体的には、色彩のみからなる商標は、原則として出所識別能力がない(登録要件を満たしていない)と判断される運用となっています(3条1項2号、3条1項3号、3条1項6号)。
従って、色彩のみからなる商標を登録させるためには、原則としてご自身の登録させたい商標が強い識別力を持っていることを、証拠書類によって証明する必要があります。

上記の識別力の証明はかなり大変な作業となります。
実際、色彩のみからなる商標の登録第1号である「MONO消しゴム」の色に関する商標(商標登録第59030334号)は、登録が開始された2015年に出願を行ったにも関わらず、2年後の2017年に登録となっています。

しかしながら、上述の通り強力な権利であるからこそ、高いハードルを乗り越えて登録することができれば、ビジネスにおいて非常に強力な武器となり得ます。

【参考】
・特許庁「商標審査基準
・特許庁「商標審査便覧54.06 色彩のみからなる商標における使用による識別力の獲得の証明に関する取扱い
・特許庁「商標審査便覧54.07 色彩のみからなる商標の出願における使用による識別力の立証方法(色彩の同一性の判断)について

色の商標は、かなり登録させるのが難しいんだね。
確かに色を独占できてしまうというのはかなり強力な権利だと思うし、仕方ないのかも?
でも、登録することさえできれば、かなり優位に立てそう!

色彩のみからなる商標の登録例

特許庁のデータベース(特許情報プラットフォーム)では、日本で出願/登録された色彩のみからなる商標を検索することができます。
※「検索オプション」で「色彩のみからなる商標」にチェックを入れることで、一覧で検索可能です。

色彩のみからなる商標に関しては、登録開始から約7年後の2022年12月時点でも、登録商標の数は合計で「9件」だけとなっています。
(単純計算で、1年に1~2件だけが商標登録されているということになります。)

上述の理由から、色彩のみからなる商標の登録要件はかなり厳しくなっており、これは仕方のないことであると言えるかもしれません。

以下で、色彩のみからなる商標の登録の一例をご紹介します(是非、色だけを見て何の商標かを当ててみて下さい)。

商標登録第5930334号

商標 色 登録例(MONO消しゴム)
商標登録第5930334号

非常に定番の商品であり、色を見ただけで何の商品かが分かりますね。

こちらは上でも紹介した「MONO消しゴム」の色彩に関する商標です。

商標登録第6078470号、商標登録第6078471号

商標 色 登録例(ユニ鉛筆)
商標登録第6078470号
商標 色 登録例(ハイユニ鉛筆)
商標登録第6078471号

色彩のみからなる商標としては異例で、かなり細長い商標となっています。

こちらも文房具、三菱鉛筆の「ユニ」と「ハイユニ」の色彩に関する商標です。鉛筆らしさが出ていて面白いです。

商標登録第6534071号

商標 色 登録例(チキンラーメン)
商標登録第6534071号

見ているだけでラーメンが食べたくなる、お腹が空く色ですね。

こちらは2022年12月時点で最新の登録例(9番目)である、「チキンラーメン」の色彩に関する商標です。

色の商標の登録例ってかなり少ないんだね。
ただ、どの色も見かけたことあるものばかりで、説明されなくても何の色なのか分かっちゃうのが凄い!

まとめ

以上、色彩のみからなる商標の要件と、登録例を紹介してきました。

色彩の商標は登録要件が厳しく、上述の通り、登録させたい色が非常に強い識別力を有していることを証明する必要があります。
ただし、登録することができれば活用の幅はかなり広く、非常に強力な権利となります。

色彩のみからなる商標の出願を検討しているものの、どうして良いか分からない場合は、お問合せフォームからお気軽にご相談ください(大手事務所の、商標の専門家である弁理士が回答します)。

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supervisor
この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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