商標登録に関する仕訳の具体的な方法を解説!

商標に関する費用の会計処理

商標出願したから、その費用を会計処理しようと思ってるんだけど、初めてのことだから仕訳方法が分からないな。
費用の金額によって勘定科目が変わったり、消費税の取り扱いだったりと、仕訳するにあたり気を付けないといけないことがいくつかあります。
そうなんだね。今回は出願だけど、これから登録やその後の更新のこともあるから、具体的にどう仕訳すればいいのか知りたいな。

この記事では、商標に関する費用の仕訳の記載方法について具体的に説明します。

会計処理における原則

商標に関連する費用について会計の処理を行うにあたり、原則は以下の通りです。

費用(取得価額)による会計処理方法の違い

費用の金額や企業規模によって会計処理の方法が変動します。大まかな分類は以下の通りです。

法人の規模によっては、特例規定の制度が適用できる場合がありますので、その点ご留意ください。
詳細は、以下記事をご参照ください。

商標に関する具体的な仕訳例

商標に関する費用が発生するタイミングとして、「出願前」「出願時」「出願~登録前」「登録時」「更新時」があげられます。それぞれの仕訳について、具体的な例をあげながら解説します。

商標出願や登録にかかる費用について、以下記事で解説しています。ご参照ください。

特許庁や地方自治体などによって、特許や商標などの知的財産に係る助成金・補助金の制度があります。申請して補助を受けることにより費用負担を軽減できるメリットがあります。

「商標出願前」の仕訳例

出願前の費用は、「無形固定資産」として資産計上します。出願前の費用として想定されるものは、デザイン会社やデザイナーにロゴマーク作成を依頼する「デザイン料」や調査会社・特許事務所(弁理士)に商標調査の業務を依頼する「商標調査料」の請求が挙げられます。具体的な仕訳例は、以下の通りです。

借方貸方摘要
(商標権)    200,000円(現 金)  220,000円商標デザイン料
商標調査料
(仮払消費税等)  20,000円

ロゴマークの商標登録の必要性について、以下記事で解説しています。ご参照ください。

「商標出願時」の仕訳例

出願時の費用は、特許事務所に依頼する際の申請書類作成やその書類の電子化にかかる「出願手数料」や出願の際に必要な「特許印紙代」が挙げられます。出願前の費用とは異なり、登録のために要する費用は、会計処理では「損金」として計上します。

特許印紙代は、指定する商品や役務の区分の数によってその額が決まります。非課税対象であり勘定科目「租税公課」を使用します。具体的な仕訳例は、以下の通りです。

借方貸方摘要
(支払手数料)  70,000円(現 金)   97,000円出願手数料
(租税公課)   20,000円特許印紙代
(仮払消費税等)  7,000円

「出願~登録前」の仕訳例

商標出願をしてから登録までの間に、特許庁の審査において、何らかの理由により出願した内容のままでは登録できないと判断された場合、登録するためには出願内容の修正など書類を提出する対応が必要になります。

そのときの費用には、特許事務所に依頼する「対応手数料」が挙げられます。この場合も出願時と同様の理由により、会計処理では「損金」として計上します。具体的な仕訳例は、以下の通りです。

借方貸方摘要
(支払手数料)  100,000円(現 金)  110,000円対応手数料
(仮払消費税等)  10,000円

「商標登録時」の仕訳例

無事審査が完了して登録査定を受けたら、商標権の設定登録料の支払いが必要です。

登録時の費用は、特許事務所に以前の手続きを依頼していた場合に発生する「成功謝金」や、登録料納付書の提出のための「登録手数料」があり、登録の際に必要な「特許印紙代」も挙げられます。具体的な仕訳例は、以下の通りです。

なお、登録料の納付は、5年分を2回に分けて支払う分割納付と、10年分を一括で支払う一括納付の2つのうちいずれかを選択することができます。いずれも、勘定科目「租税公課」を使用します。

借方貸方摘要
(支払手数料)  60,000円(現 金) 131,000円登録手数料
(租税公課)   65,000円特許印紙代
(仮払消費税等)  6,000円

「商標更新時」の仕訳例

商標権を存続するためには、登録した後、更新期限の前に権利の更新手続き(10年毎)が必要です。その手続費用は、更新登録のための特許印紙代や特許事務所に依頼する際の更新手数料が挙げられます。

商標権に係る費用は、原則、法定耐用年数10年で「無形固定資産」として、1年ごとに償却処理が必要です。また、金額によっては、一括償却資産とすることも可能です。金額によって、対応可能な処理が変わりますので、その点に注意が必要です。

具体的な仕訳例は、以下の通りです。

借方貸方摘要
(支払手数料)  30,000円(現 金)118,000円更新手数料
(租税公課)   85,000円特許印紙代
(仮払消費税等)  3,000円
借方貸方
(商標権償却)  50,000円(商標権)   50,000円
なるほど!仕訳方法を各タイミングで具体的に説明してくれたおかげで、気を付けることが分かったよ。

その他タイミングの仕訳例

その他の仕訳例として、他社の商標権を利用した際のロイヤリティ(使用料)支払いの仕訳例を紹介します。

≪支払い時≫

借方貸方摘要
(長期前払費用) 300,000円(現金)330,000円ライセンス料
(仮払消費税等)   30,000円

≪決算時≫

借方貸方
(長期前払費用償却)  60,000円(長期前払費用)   60,000円

商標に関する仕訳のまとめ

今回は、商標にかかる費用の会計処理について、勘定科目や仕訳に関する情報を紹介しながら解説ました。
商標権に関する手続きの際は手数料や印紙代が発生するため、それぞれどのように仕訳をするのか理解しておく必要があります。また、会計処理や消費税の課税についても複雑なため、正しい知識を得ることが大切です。
なお、個々の事情によって、適切な処理方法が変わることもありますので、詳細は会計士さんや税理士さんなどの専門家にご相談いただき事前に確認することをおすすめいたします。

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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