情報提供とは?商標登録を阻止するための手続きを解説

情報提供って何?

使用している商標と似てる商標が出願されているのをたまたま見つけたんだ。まだ登録されていないみたいなんだけど、登録を阻止することはできないのかな?
それなら、情報提供制度があります。匿名で手続きすれば、情報提供元が特定されるリスクを回避しつつ、商標の登録に不利な情報を審査官に提出することができます。

この記事では、商標の審査中に利用できる情報提供制度について解説します。

情報提供制度の概要

情報提供制度は、商標出願を特許庁が登録できるかどうか審査している時に、その商標出願が登録するのに相応しくないことを、特許庁に対して情報提供することができるというものです。

情報提供は誰でもすることができ、しかも匿名で提出することが可能です。

登録ができないと考える理由とその根拠を参考情報として「刊行物等提出書」を提出することにより、審査の段階で拒絶される(登録されない)ように仕向けることを目的とします。

自身が使用している商標が出願されてしまった場合にだけでなく、一般用語的な商標を誰かが出願した場合にも情報提供制度の利用が想定されます。

情報提供の内容

情報提供において、主張できる内容は限られています。商標法の次のいずれかの条文の規定により登録することができないものである旨を主張することになります。

情報提供に関する詳細情報は特許庁ホームページの商標登録出願に関する情報提供についてをご参照ください。

因みに、匿名での情報提供でなければ、提供された情報の利用状況について、フィードバックを受けることができます。

情報提供の費用

情報提供するための特許庁費用(印紙代)は無料ですが、弁理士や特許事務所に依頼する場合の手数料は必要で、約10万円~20万円が一般的です。

先の項でご説明した通り、情報提供では主張できる内容が決まっており、その理由に沿って法的な根拠をもとに情報提供の書類を作成する必要があるため、専門家に依頼することをお勧めします。

費用面では、登録商標を取消したり、無効にしたりする場合には特許庁費用(印紙代)がかかる(※)上、手続時の専門家手数料やその後のやり取りにおいても手数料が発生することがあります。それを考えれば、情報提供はとても活用しやすい制度といえます。

※手続きによって印紙代が異なっており、異議申立は11,000円~、取消審判や無効審判は55,000円~で、請求する区分の数によって変動します。

情報提供のメリット

情報提供のメリットとして以下の3点があげられます。

登録されるのを阻止することができる

一旦、商標登録された場合、その権利を取消したり、無効にしたりするのはとても大変です。費用が掛かるのはもちろんのこと、結果が出るまでに時間がかかり、訴訟にまで発展した場合には、結果が出るまで、数年~5年程度かかることもあります。

匿名でできる

先にご説明した通り、情報提供は匿名で行うことが可能です。一方で、異議申立や無効審判、不使用取消審判は匿名で手続きをすることができません。

匿名で手続きすることにより、商標出願人は情報提供者を特定できず、報復措置を受けるリスクが低くなります。

費用がお値打ち

上記の「情報提供の費用」欄でもご案内した通り、登録後の異議申立や無効審判をするのに比べれば、費用を抑えることができます。

情報提供のデメリット

情報提供のデメリットとして考えられるのは、以下の2点です。

誰かにとって必要な商標であることを知らせることになる

情報提供がされたということは、その商標を登録させたくない誰かがいるという事実を出願人に知らせることになります。

そのため、出願人が出願商標と類似する商標を使用している人がいるかどうかを調べて、商標登録後に権利行使することも考えられます。

情報提供以後、追加の手続ができない

情報提供を受けて審査官が拒絶理由を通知した場合、出願人はそれに対して反論することになります。その反論があったとしても、それに対して情報提供者が再度意見等をいうことはできません。

情報提供した後は、特許庁の審査に委ねることになります。

匿名でできるとはいえ、リスクが無い訳ではないんだね。でも、情報提供の制度があることを知らなければ、検討することもできないところだったよ。

その他

情報提供が功を奏せず、対象の商標が登録されてしまった場合でも、登録異議申立や無効審判をすることができます。登録後3年以上使用されていないようであれば、不使用取消審判を請求することもできます。

各手続の詳細は以下記事にて紹介していますので、ご参照ください。

まとめ

商標の情報提供に関することなど、不安なことや迷っていること、お困りごとがあれば、お問合せフォームにてお問合せ下さい。

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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