早期審査を受ける際の注意点やデメリットについて

早期の商標登録を目指す人にとっては、早期審査ってとても便利な制度だね!今は商標の出願件数が増えて、特許庁での審査の期間が長くなっているし。
そういえば、早期審査のメリットはよく耳にするけど、デメリットについてはあまり聞いたこと無いような・・・。
デメリットとまでは言えるかは場合によりますが。早期審査を希望する場合は、制度の内容についてよく理解しておいた方が良いです。

本記事では、早期審査のデメリットや、早期審査を請求する際に注意すべき点について解説します。

早期審査制度について

商標早期審査とは、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて審査を通常に比べて早く実施する制度です。
通常の審査に⽐べて、審査結果の通知を早く得ることができます。

通常の審査であれば、審査着手まで6〜9ヶ月かかりますが、
早期審査の場合には、早期審査の申請から平均2.1ヶ月となっており(2021年実績)、かなり短縮されます。

また、請求に関する庁への費用は無料なため、登録を急ぐ方にとっては重要な制度です。

※早期審査について詳しい説明を確認されたい方は、こちらの記事をご覧ください。

早期審査の対象

以下の(1)ないし(3)のいずれかに該当する場合に早期審査の対象となります。

(1)一部の指定商品・役務(サービス)について、出願商標を使用しており、
かつ、いずれかの商品・役務に関し、権利化について緊急性を要する出願である場合

(2)全ての指定商品・役務について、出願商標を使用している場合

(3)一部の指定商品・役務について、出願商標を使用しており、
かつ、「商標法施行規則 別表(第六条関係)」、「類似商品・役務審査基準」、「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」のいずれかに掲載の商品・役務のみを指定している場合

早期審査制度のデメリットは?

早期審査が便利な制度であることはよくわかります。
では、早期審査を受ける場合のデメリットはあるのでしょうか。

早期審査を申請する場合、以下の書類の提出が求められます。

・早期審査の事情説明書:(記載事項)商標使用者、商標使用時期、商標使用場所、緊急性の説明((1)の場合のみ)
・商標の使用証拠書類:
上記(1)と(3)は一部の指定商品・役務の証拠、(2)は全ての指定商品・役務の証拠

早期審査の対象と、提出書面について整理すると、以下のようになります。

・すべての指定商品・役務が審査基準上に掲載されたものである場合
→(3)に該当し、指定商品・役務のうち一部のみの証拠を提出すればよい。

・審査基準上に掲載された指定商品・役務以外のものを指定する場合
→(1)または(2)の条件を満たす必要がある。
すなわち、
(1)であれば、権利化について緊急性を有する理由を説明する必要がある。
(2)であれば、すべての指定商品・役務に対する証拠集めが必要である。

つまり、対象(1)・(2)に該当する場合、対象(3)に該当する場合に比べて、準備がやや大変になる可能性があります。

(1)について、緊急性の理由を説明できるか?

権利化についての「緊急性」とは、以下のいずれかをいいます。

a) 第三者が出願商標を無断で使用(使用準備)している
b) 出願商標の使用(使用準備)について第三者から警告を受けている
c) 出願商標について第三者から使用許諾を求められている
d) 出願商標について日本以外にも出願中である
e) 早期審査の申出に係る出願をマドプロ出願の基礎出願にする予定がある

上述の理由が特に無く、単に審査の短縮を希望したい場合は早期審査の対象となりえません。
そのため、(1)の条件を満たすためには、権利化について緊急性を有する理由を用意しなければいけません。
早期審査を希望する前に、自社の商標に対して、本当に早く権利が欲しいか、十分な検討が必要です。

(2)については、書類の準備が特に煩雑

(2)で早期審査を受けたい場合、使用している指定商品・役務すべてについて証拠を集めなければなりません。

指定商品・役務を未だ使用しておらず、将来使用する予定である、という場合は、
「出願商標の使用の準備を相当程度進めている」ことを証明する必要があります。

ここで、「出願商標の使用の準備を相当程度進めている」とは、
「対外的に出願商標の使用に向けて動き始めていて後戻りする可能性が低く、使用することが確実視される場合」等、
「使用」とほぼ同等と認められる場合を指します。

よって、社内において、商品パッケージのデザイン案やホームページでの使用イメージ案を作成しただけといった状況では、
「使用の準備を相当程度進めている」ことが客観的に認められません。

「対外的に出願商標の使用に向けて動き始めていて後戻りする可能性が低く、使用することが確実視される」ことを示す客観的な証拠としては、
たとえば、以下のような資料の提出が求められます。

ア.商標を付けた商品・役務に関するパンフレット、カタログ等の印刷についてその受発注を示す資料
イ.商標を付けた商品・役務に関する広告についてその受発注を示す資料
ウ.商標を付けた役務の提供の用に供する物の受発注を示す資料
エ.商標と、その商標が使用される予定の商品・役務が掲載された新聞記事等の報道資料

各資料については、細かく条件が定められています。
例えば、「受発注を示す資料」とは、発注したことを示す資料及びそれが受注されたことを示す資料の双方が必要です。
また、発注したものに出願商標を付ける予定であることを示す資料も必要です。

「使用している」ことを示す証拠集めも大変ですが、使用していない場合は特に、資料の用意が煩雑になります。

(3)については、指定する商品・役務の表記が限定される

(1)~(3)のうち、最も提出書面が容易と考えられるのは、(3)に該当する場合です。
しかしながら、(3)で早期審査の請求を行う場合、指定商品・役務の表記はすべて、審査基準上の表記から選択しなければなりません。
そうとなると、自身が本当に指定したい商品・役務が指定できない場合があります。

つまり、指定商品・役務の使用証拠をしっかり準備していたり、緊急性を有する正当な理由があったりでなければ、早期審査の対象と認められないのだね。
証拠集めも大変そうだけど、特に「使用の準備を相当の程度進めている」ことを示す資料の準備はもっと大変そう・・・。
ちなみに、(2)の場合、一部の指定商品について早期審査の対象と認められなかった場合、すべての指定商品に対して早期審査の対象となりません。
早期審査を利用したい場合は、弁理士や特許事務所などの専門家に制度の内容を確認しながら、書面の作成についても相談することをお勧めします。
確かに。早期の権利化を本気で目指すなら、専門家に依頼したほうが安心だね!

 早期審査の申請を希望するなら、確実な準備が必要です

本記事でも、早期審査の概要を少しご説明いたしましたが、早期審査の制度や提出書面についての情報は、こちらに一通り記載されています。

ご覧の通り、求められる資料は詳細に定められており、実際の準備に時間がかかることは容易に想定されます。

商標出願の際に早期審査を受けたいが、証拠や資料の作成の方法に不安を感じられる方は、当所へお気軽にご相談ください!

貴社が準備可能な証拠や資料、指定商品・役務の使用状況をお伺いした上で、適切な対応をご案内いたします!

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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