「ポケモンカード」についてどんな商標が登録されているのか調べてみた! ビジネス分野別 2023年3月10日 2023年6月21日 Amazing DX Support Team 「ポケモン」って凄い人気のタイトルで、商標とかもたくさん出願してそうだけど、「ポケモンカード」の方はどうなのかな? そもそもカードゲームって、どんなものを商標出願するんだろう? 「ポケモン」と同様に、「ポケモンカード」についても多くの商標出願がされています。 具体的な登録例も参考に、どのような形で商標出願がされているのかを見てみましょう! 「ポケカ」について 「ポケモンカードゲーム」は、世界的に有名なタイトル「ポケットモンスター」を題材にしたトレーディングカードゲーム(TCG)です。略称として「ポケカ」という言葉が親しまれており、公式のルール説明でもこの略称が使用されています。 ポケモンカードは、題材としての魅力はもちろん、ゲームとしての面白さや美麗なカードイラストなどから人気を博し、今や世界中で遊ばれているカードゲームとなっています。さて、そんなポケモンカードですが、「商標」という観点で見てみると、また違った面白さを感じ取ることができるかもしれません。 本家のポケモンの方では、様々な形で商標が出願されていることを別記事で説明しました。 大切なブランドはバリエーション豊かに商標登録!(「ポケモン」商標を例に) そして、ポケモンカードについても様々な商標出願がされています。 以下で、ポケモンカードに関する商標の一例を紹介します。どのような形で商標が出願されているのか一緒に見てみましょう! ポケカの商標登録の一例 ポケモンカードの商品には様々なものがありますが、代表的な商品としては「拡張パック」があります。まずは、拡張パックについての商標出願を見ていきましょう。 ポケカの拡張パックについて 拡張パックは、ランダムで5枚くらいのポケモンカードが封入されている商品です。数か月ほどの比較的短いスパンで新しい商品が発売されており、拡張パックごとに入っている可能性のあるカードのリストは異なります。また、「ハイクラスパック」と呼ばれる、封入されているカードの枚数が通常よりも多く、更にどのカードも強力な拡張パックもあります(こちらはあまり高い頻度では発売されていません)。 ポケモンカードは60枚のカードで組んだデッキで遊ぶゲームですが、拡張パックで強力なカードを手に入れて、自身のデッキを強化することができます。なお、拡張パック以外にも、最初から60枚のカードが揃った「スターターデッキ」という商品もあります。これからポケモンカードを始める場合、まずはスターターデッキを手に入れた上で、拡張パックでデッキを強化していくという流れが鉄板です。 拡張パックの商標登録例 それではポケモンカードの拡張パックについて、どのような商標出願がされているのでしょうか? 公式ホームページの商品一覧を参考に、「2021年~2022年」の商品に絞って調べてみましたので、以下の通り紹介します。 2021~2022年の拡張パックの商標登録例(発売日が新しい順) 拡張パック名 発売日 商標登録の有無 商標出願日 VSTARユニバース 2022/12/02 商標登録有(登録番号:6614426) 2022/03/25 パラダイムトリガー 2022/10/21 商標登録有(登録番号:6594790) 2022/01/12 白熱のアルカナ 2022/09/02 商標登録有(登録番号:6571085) 2021/11/04 ロストアビス 2022/07/15 商標登録有(登録番号:6571083) 2021/10/20 Pokémon GO 2022/06/17 商標登録有(登録番号:5871535) 2015/09/08 ダークファンタズマ 2022/05/13 商標登録有(登録番号:6547876) 2021/08/18 タイムゲイザー 2022/04/08 商標登録有(登録番号:6544509) 2021/08/12 スペースジャグラー 2022/04/08 商標登録有(登録番号:6544510) 2021/08/12 バトルリージョン 2022/02/25 商標登録有(登録番号:6519004) 2021/07/01 スターバース 2022/01/14 商標登録有(登録番号:6519003) 2021/07/01 VMAXクライマックス 2021/12/03 商標登録有(登録番号:6446586) 2021/01/08 25th ANNIVERSARY COLLECTION 2021/10/22 登録無 出願無 フュージョンアーツ 2021/09/24 商標登録有(登録番号:6436135) 2020/12/24 摩天パーフェクト 2021/07/09 商標登録有(登録番号:6430929) 2020/11/27 蒼空ストリーム 2021/07/09 商標登録有(登録番号:6430928) 2020/11/27 イーブイヒーローズ 2021/05/28 商標登録有(登録番号:6430927) 2020/11/27 白銀のランス 2021/04/23 商標登録有(登録番号:6453436) 2020/09/15 漆黒のガイスト 2021/04/23 商標登録有(登録番号:6402438) 2020/09/15 双璧のファイター 2021/03/19 商標登録有(登録番号:6402437) 2020/09/15 一撃マスター 2021/01/22 商標登録有(登録番号:6370480) 2020/06/17 連撃マスター 2021/01/22 商標登録有(登録番号:6370481) 2020/06/17 上記の表を見て頂ければ分かる通り、2021年から2022年の間に発売された拡張パックの名称は、ほとんどが商標出願および登録がされていることが分かります。 なお、2021年10月に発売された「25th ANNIVERSARY COLLECTION」のみ商標出願がされていません。これは「この商標は識別力が無い(つまり、商標出願しても登録されないし、他の人に商標登録される恐れも無い)」と社内で判断されたからであると推測できます。 要件をサクッと確認!商標登録するために必要なこととは また、「Pokémon GO」については、2015年にリリースされたゲームアプリに合わせて商標が出願されていますが、上記の2022年の拡張パック発売に合わせて、改めて商標出願するといったことは行われておりませんでした。これについては、恐らくゲームアプリリリース時に出願した商標によって、拡張パックの指定商品も十分にカバーされており、改めて出願する必要は無いと判断されたからであると考えられます。 商品名の発表前に商標出願する理由 上記の表を見てみると、商品によって多少のバラつきはありますが、平均すると商品発売からおよそ7~8ヵ月前くらいに商標が出願されていることが分かります。※商標出願のなかった「25th ANNIVERSARY COLLECTION」と、拡張パックに合わせて商標が出願されていない「Pokémon GO」については除外して計算 ちなみに、商標出願というものは、往々にして商品やサービス名を公表する前に行われます。 これは、自分で商標出願する前に商品名等を公表してしまうと、他の人に勝手に商標登録されるリスクがあるからです。※日本商標法は「先願主義」であるため、他の人に先に出願されると、例え自分が販売している商品の名前であっても、同じ商品等について後から商標登録ができなくなります。 商標登録は早い者勝ち? 出願公開について また商標を出願した場合、出願から2週間ほどで、商標出願をしたことが特許庁によって公表(出願公開)されます(特許庁ホームページ参照)。そのため、場合によっては上記の出願公開によって公表前の商品名等がバレてしまうことがあります。 これの対策の一つとして、商品名等の公表直前(2週間前以降)に商標を出願するという方法があります。しかしながら、この方法にも以下のようなリスクがあります。 商品の製造・販売の準備段階で商品名がリークされ、他の人に勝手に商標出願されるリスク 商標を出願したとしても、先願商標の存在などにより商標出願が拒絶されてしまうリスク この点、商品開発の初期段階であれば関係者も少ないため、早めに商標出願をしておけば商品名リークの恐れを最小限に抑えることができます。また、仮に先願商標などを理由に商標出願が拒絶されたとしても、対応する時間を十分に取ることが可能です。 ちなみに、ポケモンカードの拡張パックの名前が公表されるのは、発売日のおよそ1~2ヵ月前(公式の商品情報参照)の傾向があるようです。 商標出願は更にその数か月前ですので、商品名の公表よりも出願公開の方が早いということになりますが、上記のリスクを考慮して、早めに商標が出願されているものと考えられます。 過去のポケカの拡張パックの商標登録について ポケモンカードの拡張パック名の商標出願がいつから始まったのかは不明ですが、調べてみたところ、2014年6月発売の「ライジングフィスト」という拡張パックについては商標出願・登録がされておりました(商標登録第5659850号)。 また、「ライジングフィスト」の次に発売した「ファントムゲート」についても商標出願・登録がありました(商標登録第5677193号)。一方で、「ファントムゲート」は5年分の登録料しか納付されておらず、残りの5年分の登録料の納付が無かったため、登録日から5年後の2019年に権利が消滅していました。 【補足1】商標権の発生と存続期間について 登録査定を受けた商標は、その後に登録料を納付することで、初めて商標権が発生します。 登録料については、5年分の登録料を2回納付(分納)するか、10年分の登録料を一括で納付するかを選択できます。 いずれの納付方法を選択したとしても、登録料を全て納付すれば、商標権は登録日から10年間存続します(逆に言えば、登録料の納付を怠れば、商標権は発生しないか、その時点で消滅します)。 また、登録日から10年後が商標権の存続期間の満了日となりますが、満了日のタイミングで「更新料」を納付することで、更に10年間、商標権を存続させることが可能となります(この更新を繰り返すことで、商標権を半永久的に存続させることも可能です)。 同じ知的財産権の特許権や著作権にはこのような更新制度はなく、商標権だけの制度となっています。これは、商標が「継続的な使用による信用」を保護の対象としているからです。 「ファントムゲート」以降は、以下の拡張パックの商標登録が確認できました。全てを確認したわけではありませんが、過去の拡張パックについては、商標登録の有無がまちまちであったようです。 拡張パック名商標登録番号GXウルトラシャイニー※商標名は「ウルトラシャイニー」商標登録番号:6170145フルメタルウォール商標登録番号:6171967ダブルブレイズ商標登録番号:6171968ミラクルツイン商標登録番号:6203528オルタージェネシス商標登録番号:6216591TAG TEAM GX タッグオールスターズ※商標名は「タッグオールスターズ」商標登録番号:6227563 なお、ポケモンカード最初期の拡張パックの名称(「ポケモンジャングル」や「化石の秘密」など)は商標出願がされた形跡が見つかりませんでした。 拡張パックの商標登録の方針について 過去は拡張パックの名称の商標出願の有無がまちまちだったのは、拡張パックという商品の販売のされ方に理由があるように思われます。 ポケモンカードやその他のTCGを遊んでいる方は既にご存知かもしれませんが、拡張パックという商品は、1つの商品が継続的に販売されるというものではありません。上述した通り拡張パックは、短いスパンで新しい商品が発売されていますが、これに伴い、古い拡張パックはどんどん販売が取り止められていきます(書籍でいう「絶版」のようなもの)。 古い商品が絶版となる理由は諸説ありますが、考えられる理由としては 短いスパンで発売される商品を全て製造・販売していては採算が合わなくなること ポケモンカードは定期的に新しいギミック(「GX」や「VMAX」など)が登場しますが、これに伴い古いカードは対戦環境に合わない/付いていけない状況が発生すること※古いカードは一定期間後にいわゆる「レギュレーション落ち」し、公式大会などでも使用出来なくなります などがあります。 販売されなくなった古い拡張パックについて商標権を維持していると、維持費(更新費用)だけがかかり、出費を回収する手段がなくなっていきます(過去の拡張パックが復刻販売されるパターンもありますが、これも全ての拡張パックが対象となるわけではなく、稀なケースであると言えます)。 そのため、拡張パックの名称については、かつては商標出願(あるいは更新)を現在ほど積極的には行っていなかったのではないかと推測できます。 ポケカが大切に扱われているブランドであることは事実 しかし、それではポケモンカードの拡張パックは商標的な面で軽んじられているのかといえば、全くそうではありません。上述の通り、現在はほとんどの商品名について商標出願が行われています。 上述の2021年~2022年の拡張パック発売に合わせて出願・登録された商標については、特許庁へ支払う手数料だけで、およそ90万円(1区分の商標出願・登録44,900×19商標)もの費用が発生している計算になります。人件費や代理人費用、拒絶があった場合の対応費用も含めると、ゆうに100万円は超えているものと推測されます。 むしろ、一定期間だけしか販売されない商品であるにも関わらず、これだけの費用がかけられているところから、ポケモンカードが如何に大切に扱われているブランドであるのかを窺い知ることができます。 こんなものも登録されている! その他のポケカの商標登録例 ポケモンカードは、拡張パック以外にも様々なものについて商標が出願されております。 その中には「こんなものまで!?」と少し驚くようなものもあります。 以下で、ポケモンカードに関する様々な商標登録例を続けて紹介します! 拡張パックの種類の名称 上で少し触れましたが、拡張パックの一種として「ハイクラスパック」というものがあります(その他にも「強化拡張パック」などがあります)。拡張パックの商品名だけではなく、実はこういった拡張パックの種類の名称自体も商標登録されています。 「ハイクラスパック」(商標登録第6442327号) 小道具 ポケモンにダメージを与えた際にカードの上に乗せる「ダメカン」(ダメージカウンター)という小道具がありますが、なんとこちらも商標登録されています。 「ダメカン」(商標登録第5462646号) タイプの名称 ポケモンカードには、ポケモンごとに本家のゲームと似たような(しかし若干異なる独自の)「タイプ」が設定されています。このポケモンカードのタイプも、以下の通り商標登録されています。 「草」(商標登録第6262692号) 「炎」(商標登録第6262689号) 「水」(商標登録第6262691号) 「雷」(商標登録第6262687号) 「超」(商標登録第6262693号) 「闘」(商標登録第6256365号) 「悪」(商標登録第6262688号) 「鋼」(商標登録第6262690号) なお、他に「無色」タイプと「ドラゴン」タイプがありますが、こちらは商標登録されていませんでした(一時期「フェアリー」タイプもありましたが、ポケモンカードでは廃止されました)。 ちなみに、上記商標が登録されていることからも分かる通り、漢字1文字でも商標登録は可能です。 漢字1文字の商標も登録できる? 任天堂の「草」商標を例に解説 VMAX ポケモンカードには様々なギミックが存在し、そのうちの一つに「VMAX」というものがありますが、このギミック名自体も商標登録されています。 「VMAX」(商標登録第6226501号) 略称 「ポケモンカード」は、当然ですがその名前が商標登録されています。 「ポケモンカード」(商標登録第4268018号) しかしながら、それだけではなく略称の「ポケカ」も、後ほど商標登録がされています。 「ポケカ」(商標登録第5343824号) 【補足2】略称の商標登録について ある言葉から生じる略称(上記で言えば「ポケモンカード」に対する「ポケカ」)も商品名等として使用していきたい場合、その略称自体も商標出願しておくことが推奨されます。 これは、「ある言葉」と「その略称」が似ていると判断されない可能性があるからです。 仮に「ポケモンカード」と「ポケカ」が似ていないと特許庁に判断されてしまった場合、全く無関係の他の人によって「ポケカ」という商標が登録されてしまうことになります。 実際、大人気ゲーム「マリオカート」の略称「マリカー」が、無関係な第三者によって商標出願され、一度は登録されてしまったという事例があります。 ※幸い、この事例では無効審判で商標登録を無効にすることができました(参照)。 また、略称を積極的に使用する予定がなくとも、「ややこしいから」と他の人に略称を使用をされたくない場合は、略称を商標出願するべきであると言えるでしょう(防衛的出願)。 ちなみに、「ポケモンカード」については、冒頭で述べたように公式のルール説明などで「ポケカ」という略称が使用されています。 トレーナーズウェブサイト ポケモンカードの公式ホームページは「トレーナーズウェブサイト」という名称で運営されていますが、こちらのサイト名も商標登録がされています。 「トレーナーズウェブサイト」(商標登録第5341643号) カードジム ポケモンカードでは、店舗側にて自主的に大会を開催できるようにする「ポケモンカードジム」という制度があり、その制度を利用して各店舗で「ジムバトル」といった大会が開かれています。 このカードジムやジムバトルといったイベントに関する名称も、商標登録がされています。 「カードジム」(商標登録第5673380号) 「GYM Battle」(商標登録第6474681号) 「ポケモンカード」についてもたくさんの商標が登録されていることが分かったよ。 小道具やタイプの名前とか、細かいところまで商標登録されているのは凄いね! まとめ 「ポケモン」の派生作品である「ポケモンカード」だけでも、上述の通り様々な商標が出願されています。 ここで紹介したものを見ただけでも、改めて「ポケモン」ブランドの大きさというものを感じさせられます。 その他にも、検索してみると思わぬ商標が出願・登録されていたりもします。 商標の検索方法について以下の記事で紹介しておりますので、興味が湧いた方は是非ご自身でも検索してみてください! 3分で分かる!商標登録の検索方法 この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者