商標ライセンス契約の種類その2「専用使用権」 商標登録後 2022年12月23日 2022年12月26日 Amazing DX Support Team ライセンス契約の種類 最近商標が気になって考えてたんだけれど、ウチの商品の商標は親会社がまとめて出願・登録しているんだ。ウチは商標の所有権者じゃないけど、それって親会社の商標をウチが勝手に使ってるってことなのかな? 親会社がまとめて取得した商標を子会社が使用する場合、「専用使用権」の設定をしている場合があります。勝手に使用しているのではなく、商標権者と特別なライセンス契約を締結しているのではないでしょうか。 他人の商標を使用する権利のことを、商標の使用権と言います(特許・意匠においては実施権と言い、商標のみ文言が異なります)。この使用権の発生には、当然ながら商標の所有者と、使用を希望するものの間での合意が必要となります。これがライセンス契約です。ただし、この使用権には、その内容に応じて法律で2種類のものが定められています。この記事ではその内『専用使用権』について説明致します。 専用使用権とは 商標権は他人の使用を排除し、権利者が登録された商標について独占的に使用を行うことが出来るという排他的な使用権が認められています。一方、商標権ではその排他的な使用権の裏返しとして、指定商品または指定役務において登録商標を他人に使用を許諾する権利も認めています。この使用許可(使用許諾)については、以下の記事でも解説しておりますので、ご参照ください。 商標登録を受けた商標の使用許可(使用許諾)について この使用許諾にあたっては、それぞれの契約に基づいて自由に”使用地域”、”使用期間”、”使用方法”等を定めて認めることができます。この使用を許諾する範囲(設定行為で定めた範囲)においてただ一人の使用しか認めず、その範囲においては商標権者自身も使用できないという「専用使用権」です。 他方、使用を許諾する範囲が複数の他人で被っても同一でも問題ない使用の許諾が、「通常使用権」という使用の許諾もあります。これについては、以下の記事で解説しておりますので、そちらをご確認下さい。 商標ライセンス契約の種類その1「通常使用権」 専用使用権の発生要件 専用使用権の効力発生要件は特許庁への申請を経ての「登録」です。両者の合意のみで成立するライセンス契約や、登録がその効力発生要件とはなっていない通常使用権と大きく異なる点です。これは、専用使用権が設定した一人にしか権利を認めず、商標権者ですらその設定した範囲では使用が出来なくなるという強い排他性を有しているためです。登録を効力の要件とすることによって、権利の重複が起こり得ないようにする、また後から契約を締結する人を保護するという効果があります。 専用使用権の設定登録の申請書の様式および記載例については、特許庁の以下のページで公開されています。専用使用権設定登録申請書【商標】(外部サイト) なお、専用使用権が設定されているかどうかについては、特許庁の「商標登録原簿」の閲覧を請求することによって確認することが可能です。 特許庁に登録をしないと認められない使用権なんてあるのか。親会社も僕の会社の商標を勝手に使用できないんだな。 今まで問題なく商品の商標を使用出来ていたのも、この専用使用権の設定・登録を毎回正しく行っているからだね。 専用使用権の注意点 専用使用権は通常使用できない商標についてただ一人だけが使用できるという強い排他性・独占性を獲得できる一方、以下の点に注意が必要です。 ・効力発生要件の「登録」専用使用権は両者の合意・契約のみで成立するものではなく、その権利の強さから、特許庁への登録が効力発生要件となっています。この点を認識せずに登録を怠れば、専用使用権としての効力が認められないことになってしまいます。 ・専用使用権者による管理専用使用権は、設定した範囲においては商標権者でも使用ができなくなるという強い排他独占的権利です。そのため、設定された範囲においては通常、専用使用権者が商標の管理を行う必要があります。商標の使用状況、侵害の有無の調査など、定められた範囲において適切に管理することが求められます。 ライセンスに関するトラブルを避けるために ライセンス契約において、その契約の種類や特性その他を正しく理解していなければ、思わぬ不利益を受けたり、また得られた利益を逃してしまったりと、大きなデメリットとなり得ます。また専用使用権の「登録」という制度を知らなければ、そもそも効果が発生しないことになってしまい、契約の内容が想定と大きく異なってものになってしまいます。これは他人の商標について使用を許諾してもらう場合でも、自己が有する商標について使用を許諾する場合でも同じです。特許事務所ではライセンス契約や特許庁への手続きに関して専門家が在籍しており、アドバイスをもらうことも可能です。使用許諾に関して不明点や不安がございましたら、ご遠慮なくご相談ください。当所事務所紹介 この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者