商標の補正とは何か。手続きの流れなどを解説。

指定商品や指定役務の「正しく」記載しよう

特許庁から拒絶理由通知が届いて、商標法第6条に抵触しているって言われてしまったよ。

よく起きる拒絶理由通知の一つですね。
指定商品や役務の表示が不明確なのか、区分が相違しているかのどちらかでしょう。
補正書を特許庁に提出して、商標登録を目指しましょう。

なるほど、補正をするのか。なら、どう補正するべきか確認していこう。

補正

商標の出願後に特許庁から拒絶理由が通知されることがあります。
理由は様々ですが、中でも以下の拒絶理由は相対的に多く通知されていますね。
・識別力なし(商標法第3条関連)
・同一又は類似の先行登録商標や先行出願商標の存在(商標法第4条第1項第11号)
・指定商品又は役務の表示が不明確(商標法第6条第1項)、指定商品又は役務の区分相違(商標法第6条第2項)

今回は、「補正」に焦点を当てて解説いたします。

商標法第6条

商標の補正で問われる内容と言えば、商標法第6条(指定商品・役務の審査)、関連が多い印象です。
商標法第6条では以下の通り明記されています。

第1項:商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、商標毎にしなければならない。
第2項:前項の指定は、政令で定める商品及び役務の区分に従つてしなければならない。
第3項:前項の商品及び役務の区分は、商品又は役務の類似の範囲を定めるものではない。
※逐条解説はコチラ

商標審査便覧によれば、「指定」は、願書に記載する商品又は役務が商標とともに商標登録出願及び商標権の範囲を定めるものである事から、その内容及び範囲は明確であることを要するものである、という方針の基で審査がなされます。
それ故、商品や役務の内容や範囲が不明確の場合は、商品又は役務の「指定」に不備があるため、商標法第6条第1項に違反する、という訳です。

第2項は、条文の意味そのままに、指定商品や役務は正しい区分で指定されていない場合は、違反となります。

指定商品や役務の表示の不明瞭や区分の相違は、日本に限らず、諸外国での商標出願でもしばしば起こる拒絶理由の一つです。
商標の出願の前には、弁理士や特許事務所に相談して、出来る限り万全の準備をしてからの出願をお勧めします。

*コラム
第3項は解釈規定というものであり、指定商品や役務の区分と、指定商品や役務の類似の範囲は別物である、ということを宣明しているだけです。

応答の流れ

商標の補正では以下の3つの方法が取られます。なお応答時は補正書を特許庁に提出します。
・指定商品又は指定役務の変更
・指定商品又は指定役務の削除
・指定商品又は指定役務の追加

「変更」とは、指定商品や役務の表示を変更することです。
審査官が拒絶理由通知の中で拒絶の対象の商品や役務の代替案を出していることが多いです。
また、審査官案とは異なる表示で応答したい場合は、意見書を作成して補正書と同時に提出することも可能です。

「削除」とは、指定商品や役務を削除することです。
商標法第4条第1項第11号の解消のために、抵触する商品や役務を削除する事で対応したり、適切な商品や役務の表示がなく、やむを得ず削除するなど、様々です。

「追加」とは、区分・指定商品や役務を追加することです。
区分相違の補正の対応をしたいが、出願時に正しい区分を指定していないため新たに区分を追加する、の流れが挙げられます。
なお、補正時に区分が増加しますと、増加分の手数料の納付が必要です。
※1区分あたり、8600円です。

また、出願時の範囲を超えて指定商品や役務の追加はできません。
これは後述の「要旨変更」に該当します。

それぞれに共通して言えるのは、補正手続後は、手続前の指定商品や役務の状態には戻せません。
そのため応答時は十二分に気を付けないといけません。

要旨変更

商標の補正の手続では「要旨を変更しない範囲」で対応する必要があります。
では、何が要旨の変更に該当するのでしょうか。

まず、登録する商標そのものの補正は、一部の例外を除き、要旨の変更に該当します。
出願した商標は大原則変更はできない、と覚えましょう。

次に、指定商品や役務の補正ですが、要旨変更に該当するのは主に以下の2点です。
・指定商品や役務の範囲の変更
・指定商品や役務の範囲の拡大。

「範囲の変更」とは、別の商品や役務に変更することです。
例えば、第30類の商品「コーヒー」と「ココア」は同じ類似群コードが付されているため類似の関係ですが、商品「コーヒー」を商品「ココア」に変更はできません(逆も然り)。
また、別の類似群コードが付された商品や役務への変更もできません。

「範囲の拡大」とは、出願時に指定した商品や役務から権利範囲が広がることです。
例えば、第38類の役務「テレビジョン放送」を「放送」に変更することはできません。
役務「放送」には「テレビジョン放送」以外に「ラジオ放送」や「有線放送」等の同じ区分で同じ類似群コードが付された役務が含まれます。
つまり、役務「テレビション放送」は役務「放送」より狭い権利範囲であるため、より広い権利範囲である役務「放送」に変更することは、範囲を拡大することになるため、認められません。

ちなみに、指定商品や役務の範囲を狭くする補正は認められます。
「範囲の変更」や「範囲の拡大」の確認の方法として、ベン図に起こしていみると理解が早くなりますので、皆様も是非やって見てください。

まとめ

出願時に商品や役務の表示や区分をしっかり吟味しなかったから、今回の拒絶理由が出たんだね。
一人で手続すると分からないことが多いね。

補正手続で解消できる内容は、出願前から入念な対策すれば防げる事が多いです。
特に年の変わり目には指定商品・役務が修正されますし、新しいサービスが生まれた際には特許庁に受理された商品や役務例がないなど、拒絶理由が出やすい環境になります。
こういう場合は、一人で検討せず、弁理士や特許事務所と一緒に検討することをお勧めします。
当事務所は「Business戦略参謀」として、顧客の知的財産権の取得や活用等をサポートします。お困りごとがありましたら、まずは右下のAmazing DXチャットからご相談ください。

ありがとう、検討するよ。

supervisor
この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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