商標を出願後、特許庁からくる「査定」とは?「登録査定」は登録証のこと? 商標に関する手続商標出願前商標登録前トラブル回避 2021年6月30日 2023年1月20日 Amazing DX guide 特許庁から「登録査定」が送られてきたんだけど、これってなに?放っておいてもいいの? 「査定」は特許庁の審査官による審査結果のことです。「登録査定」は、登録を認めるという通知です。逆に、「拒絶査定」は登録を認めないという審査の結果を通知するものです。 「登録査定」は登録を認めるというだけですので、登録料を支払わないと、正式な登録がされないことに注意が必要です。 「査定」は審査の審査結果のこと 商標登録をするときに、特許庁から「登録査定」や「拒絶査定」といった書類が送られてきます。この「査定」とは、特許庁の審査官における審査の最終結果を通知するものです。審査官が登録を認めると判断するときは「登録査定」が、登録を認めないと判断するときは「拒絶査定」が通知されることになります。 ここでは、「査定」が送られてくるタイミングや、その後の対応についてご説明します。 商標出願から登録までの流れをおさらい 「査定」は、特許庁の審査官による審査の結果です。ここで、商標出願から「査定」までの流れをおさらいしておきましょう。 特許庁ホームページ「初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~」より この表の通り、商標登録は出願手続きから始まります。出願後、特許庁は書類の形式が正しいかどうかなどの方式的な審査を行い、問題がなければ、出願された商標を登録すべきかどうかについての実体的な審査に移ります。 実体審査の結果、登録を認める場合は登録査定が出願人に通知されます。 登録を認めない場合は、まずはその理由が記載された「拒絶理由通知」が出願人に通知されます。拒絶理由通知に対しては、意見書で反論したり、拒絶理由が解消するような補正をすることができます。 意見書や補正書での対応によって、登録が認められれば、登録査定が通知されますが、認められなかったり、そもそも対応をしない場合は、拒絶査定が通知されることになります。 商標登録に関する流れについては以下のページでも紹介しています。 商標登録の方法とは?商標調査から登録までの流れ、商標の取り方について解説! さて、登録査定や拒絶査定に対しては何か対応が必要なのでしょうか。 登録査定を受け取ったらすべき手続き 登録査定は登録が認められたという結果を通知するものであって、登録証ではありません。登録査定を受け取ったら、30日以内に登録料を納付しないと商標権は発生しませんし、登録証も発行されません。 登録料は区分数によって異なります。以下のようなサイトにて計算することが可能です。 手続料金計算システム “Amazing DX®”ご利用料金 拒絶査定を受け取ったらすべき手続き 拒絶査定は、登録を認めないという結果の通知です。そのまま商標登録をあきらめる場合は、特段手続をする必要はありません。 でも、拒絶査定となったことに不服がある場合や、どうしても商標登録をしなければならない場合など、様々な事情ががあると思います。以下、先に出願・登録された他人の商標登録と類似するとの理由で、拒絶査定となった場合に取り得る対応をご紹介します。 拒絶査定不服審判を請求する 拒絶査定が通知されると、それ以上、審査官に対しての反論や補正はできなくなります。ただし、拒絶査定に不服がある場合は、特許庁に拒絶査定不服審判を請求することができます。審判は3人か5人の審判官によって、再度審査を行う機会であって、その審判において登録されるべきという主張をすることが可能です。 他人の商標登録とは類似しないことなどを、証拠を挙げて主張することで、登録が認められる場合があります。審判請求中は指定商品・役務の補正を行うことができますので、指定商品・役務を一部削除することで登録になるようなケースであれば、審判請求をすることも登録を目指すための一手となります。 ただし、審判の請求にはそれなりの金額の印紙を収める必要がある他、商標出願手続きに比べると、複雑で難解な書類を作成・提出する必要があります。そのため、商標手続きの専門家である弁理士や特許事務所に、相談されることをお勧めします。 また、拒絶査定不服審判には期限があります。原則、拒絶査定を受け取ってから3ヵ月以内に審判請求を行う必要があります。 なお、拒絶査定不服審判の結果にも不服がある場合は、特許庁ではなく裁判所に、審判の結果(審決)の取消しを求めて訴えることができます。 商標を変更して再出願する 他人の商標の存在を理由に拒絶査定となった場合、商標を変更したい場合もあろうかと思います。ただ、文字やロゴマークなどの通常の出願の場合、出願後に商標を変更することは認められていません。これは、上記の拒絶査定不服審判をした場合でも同様です。 このような場合は、再度一から変更後の商標を商標出願するしかありません。ただし、再度出願するまでの間に、先に誰かが似た商標を出願している可能性があり、商標を変更したからと言って必ずしも登録になるわけではありません。 もう一度拒絶査定とならないためにも、事前の調査を行うことが推奨されます。 NG行為1→拒絶査定になった商標をそのまま使用する 先に出願・登録された他人の商標登録と類似するとの理由で、拒絶査定となった場合、その商標をそのまま使用すると、原則その他人の商標権を侵害することになります。 商標権を侵害する行為は、損害賠償請求の対象となりますし、刑事罰も存在します。 また、他人の商標の存在があることを知らなくても、他人の商標を勝手に使用をすれば商標権の侵害は成立します。 そのため、やはり商標を使用したり出願する場合には事前に調査することが重要です。 NG行為2→安易に交渉を申し込む 拒絶査定の理由となった商標の権利者と交渉を行い、商標を使用する許可を得たりすることは、対応方法の一つではあります。 ただし、安易に交渉を申し込むのは控える方がよいでしょう。 もし、あなたがその商標をすでに使用している場合、原則は他人の商標権を侵害していることになります。交渉を申し込むということは、その事実を相手に知らせてしまうことにもなりかねません。 また、世の中には、到底使用するとは思えない大量の商標を出願したり、他人が出願をしていないことに乗じて、先に出願をしたりしている人がいます。これは、後から出願した人が、拒絶理由通知を受けたり、拒絶査定となったりすることにつけ込んで、商標権を買い取らせることを目的としていると考えられています。このような相手に、安易に交渉を申し込んだりすると、相手の言いなりにならざるを得なくなる可能性もあります。また、安易に交渉に応じたりすることは、大量の出願や、商標の先取りなどの行為を助長することにもなりかねません。 なお、大量の商標を出願する人の商標を理由として登録できないと判断された場合、拒絶理由通知を受け取った段階で、特許庁に対して意見書を提出するなど適切な対応をすれば、問題なく登録になる場合もあります。 このような場合は、弁理士や特許事務所などの専門家に相談をすることをお勧めします。 拒絶査定を避けるために そもそも、拒絶査定を受けないようにするにはどうすればよいでしょうか。上述の通り、拒絶査定を受ける前には、拒絶理由通知が送られてきて、この時点で意見書や補正書の提出が可能です。ただ、内容によっては、有効な反論や補正の方法がない場合もあります。 そのため、拒絶査定を受けないために最も重要なのは、出願する前に、登録となるかどうかについて調査をしておくこととなります。 登録査定を受けたら、登録料を払わないと正式な登録にはならないんだね。あと、拒絶査定を受けても対応次第では登録になるけども、費用も手間もかかるから、そもそも出願前にしっかりと調査をしておくことが大事なんだね。 この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者