商標ライセンス(使用許諾)とは?

人気のゆるキャラを使ったお土産を作りたいんだけど、ゆるキャラはたぶん商標登録されているよね。
勝手に使うことはできないと思うんだけど、どうすればいいかな?
そうですね。
もしキャラクターが商標登録されている場合、勝手に使うと商標権の侵害になる可能性もあるので、
商標を使わせてもらえるように使用の許諾をもらわないといけませんね。
この使用許諾のことをライセンスと言いますよ。
なるほど。ライセンスってよく聞く言葉だね。
ライセンスをもらうためには、どうすればいいの?
はい。一般的には商標権者からライセンス(使用許諾)をもらいますよ。
まずライセンスの目的を整理しながらライセンスの種類や契約の内容についても順番に見ていきましょう。

魅力的なブランドであれば商品価値が高く、そのブランド力を使ったビジネスは魅力があります。
また、自社の広告塔として有名なキャラクターを使いたいというような場合もあると思います。
そのようなときは、登録商標の使用についてライセンスを受ける必要があります。
しかし、ライセンス契約と言ってもハードルが高そうだと感じられる方も多いでしょう。
この記事では、商標のライセンス契約について解説し、ライセンス契約時の疑問についてお答えします。

商標ライセンスとは

登録商標の権利者は、その商標を使用する権利を独占しています。
そのため、何の権利も持たない他人が登録商標を勝手に使用すると、商標権侵害となってしまいますので注意が必要です。

そこで、登録商標を使ってビジネスをしたい場合は、商標権利者から、その登録商標の使用を許可してもらわなければなりません。
そのためには、商標権利者と使用者の間で、登録商標の使用に関する契約を結ぶことが一般的です。
この契約をライセンス契約といい、後で詳しく記載する通り、登録商標の使用条件や使用料などを取り決めます。

商標の使用を許可する者(商標権者)を「ライセンサー」といい、使用を許可してもらう者を「ライセンシー」と呼びます。

僕の場合は、ゆるキャラの登録商標の権利者に、使用許可をもらえばいいんだね!
その通りです。
なお、商標法には、商標権者は登録商標の使用を他人に許可することができると規定されています(商標法第30条、同31条)。そして、その使用許諾については特許庁に登録をすることが可能です。後で詳しく見ていきましょう。

ライセンスの目的

ライセンスはその目的に応じて2つに分けられます。

1. 商標価値利用型(本来型)
商標権者は、品質の良い商品やサービスに継続して商標を使用することで、その商品やサービスに対する消費者の信用を蓄積していくことができます。
そうすると、商標自体に顧客への訴求力が備わり価値が生まれます。
そのように既に信用が蓄積された商標の訴求力を利用したいというのが本来のライセンス目的と言えます。

このようなライセンスの場合、ライセンサーは、商標の価値を損なわないよう、ライセンシーの商品やサービスの品質をコントロールしようとします。また、消費者はライセンシーの商品についても同等の品質を期待することができます。

この場合、商標の魅力が売上に反映されていると言えるので、売上金に応じたライセンス料が設定されることが多いでしょう。

2. 禁止権不行使型
本来的なライセンス以外に、商標権者から禁止権を行使しないという契約をとりつけ、自己の商標を安全に使用し販売を継続することを目的とするライセンスがあります。

例えば、自分で立ち上げたブランドの商標が他の商標権者の登録商標と類似する場合、そのブランドが人気になってから商標権者から、使用を中止するよう求められるというトラブルに巻き込まれる場面があります(禁止権の行使)。
そのようなときに、当事者間の協議により商標権者から登録商標に類似する商標を使ってもよい(禁止権を行使しない)という許諾を得られれば、そのまま商標を使うことが可能となります。

商標権者は、ライセンス契約による使用料を得るというメリットがあり、ライセンシー側は、せっかく人気になったブランドを変更しなくてもよいのなら、使用料を支払うのはやむなしと考えた場合に、この契約が成立します。

このようなライセンスの場合は、商標価値を利用するものとは異なり、使用料は売上に応じたものではなく、最初に一括して支払うものが多いでしょう。

ライセンスの種類

次に、ライセンスには、複数の種類がありますので、それぞれ確認していきましょう。

1. 独占的ライセンス(専用使用権)
独占的ライセンスとは、ライセンシーのみが使用権を独占するというものです。
商標権者は同じ内容で複数の人に独占的ライセンスを許諾することができません。
また、独占的ライセンスの範囲では、商標権者も使用することができません。
侵害行為に対する差し止め請求や損害賠償請求をすることも可能で、商標権者と殆ど同じ権利を有することになります。

なお、独占的ライセンスは、特許庁に登録しないと効力が生じませんので、登録するよう注意が必要です。
実務においては、当事者間での契約においてのみ独占的である旨を明記し、登録をしないこともあります。

2. 通常のライセンス(通常使用権)
ビジネスにおいて良く利用されるのは、この通常ライセンスです。
独占的ライセンスと異なり、同じ内容で複数のライセンシーに使用許諾することができます。
通常のライセンスは特許庁に登録する必要はありませんが、商標権者や専用使用権者が後で変更した場合でも、継続して使えるようにトラブルを回避するためには登録しておく方が無難な場合があります。

また、通常使用権のなかには、「独占的通常使用権」というものがあり、商標権者が、このライセンシー以外に使用許諾することを禁止するというものです。
この場合は、商標権者と独占的通常使用権者が商標を使用することができます。

3. サブライセンス(再使用権)
商標権者からライセンスを受けた者が、さらに他の者にライセンス許諾する場合をサブライセンスと言います。

サブライセンスが可能かどうかは、ライセンス契約時に取り決めることになりますので、サブライセンス契約をする場合は、その元となるライセンス契約において、サブライセンスが可能となっているかを確認する必要があります。

4. クロスライセンス
商標ではあまりないかもしれませんが、特許ではよく利用されています。
つまり、自社Yの製品に他社Xの特許発明を利用したいときに、その他社Xが自社Yの特許発明を実施したいという場合、お互いの特許発明を使い合うことができるようにするライセンス契約です。
商標でいえば、2社の企業でお互いの商標を使ってそれぞれコラボ商品を販売する場合に、お互いの商標についてクロスライセンス契約をすることが考えられます。


ライセンス契約の際は、様々なビジネス形態に応じて上記のライセンスの中から最適なものを選びます。
例えば、フランチャイズ契約では、複数の店舗で商標を使用するため、通常のライセンス契約となり、サブライセンスは普通は認められないでしょう。
また、外国企業の著名ブランドの日本総代理店となる場合には、独占的ライセンス契約を締結するのが望ましいと言えます。但し、その場合は後で記載するように使用料も高額になる可能性があるのでバランスを考慮して慎重に契約を進める必要があります。

ライセンス契約の内容

ライセンス契約では、主に以下の項目について取り決め、それらは契約書に明記しておく必要があります。

ここでは、商標価値利用型(本来型)のライセンス契約を前提として主な項目を説明します。

①契約の対象となる商標権及び指定商品・役務
②使用権の許諾及び登録
③使用料(ロイヤリティ)
④使用料の報告方法
⑤品質管理方法
⑥契約期間・地域
⑦解約

⑧準拠法

①契約の対象となる商標権及び指定商品・役務
商標の使用許諾の対象となる権利について定める重要な項目です。
権利特定のために、商標見本、商標登録番号、指定商品又は指定役務、設定登録日等を特定します。
また、使用許諾を受けようとする商品/役務が、対象の商標権でカバーされているか、商標権者は誰か、権利の有効期限はいつまでか、他にライセンス登録がされていないか等、詳細に確認しましょう。
これらの情報は、特許庁から登録原簿を取寄せることで確認することができます。

②使用権の許諾及び登録
どのような許諾内容にするかを定めます。
また、許諾した使用権が通常のライセンスの場合、特許庁へ登録するのかどうか、独占的ライセンスの場合、特許庁へライセンスが登録されるまでの使用権をどのようにするかについても決めておきます。
さらに、サブライセンス許諾を可能とするかどうかについても取り決めます。

③使用料(ロイヤリティ)
ロイヤリティはもちろん、ロイヤリティのベース(「純販売価格」や「正味販売価格」の詳細)、ロイヤリティの支払い方法、税金、遅延金などについても決めておきます。
ライセンサー側からすれば、最低使用料の設定もしておいた方が良い場合があります。
ロイヤリティについては後で詳しく説明します。

④使用料の報告方法
ロイヤリティが売上ベースで決められている場合、一定期間ごとに販売額や販売量の報告が必要となりますので、それらを報告・確認する方法を決めておきます。
例えば、「〇月毎(又は「四半期毎」、「1年毎」)に当該期間終了日の〇日以内に使用料報告書を提出する。」というような内容を契約書に記載します。
また、使用料報告書が適正かどうかを検証する必要がある場合は、監査についても決めておきます。

⑤品質管理方法
ライセンシーが販売する商品が、一定の品質を保つようにライセンサーがコントロールできるよう、品質管理についても定めておく必要があります。
また、ライセンシーが販売する商品の販促資料においても、商標が適切に使用されるようにライセンサーが品質基準を指定するようにします。

⑥契約期間・地域
ライセンスの期間や商品の販売を許諾する地域を定めます。
例えば、契約期間を発行日から1年とし、満了日の前何カ月までに契約変更・終了の意思表示が無ければ、自動的に1年更新される。という自動更新パターンが一般的です。

⑦解約
ライセンス契約が解約される条件を決めます。
中途解約の条件や、ライセンス契約終了時の在庫の販売をどうするか(セルオフ期間を認めるか)等を決めておくのが良いでしょう。

⑧準拠法・管轄裁判所
国際的な契約になる場合は、紛争が起きた場合に担当者や代理人が行きやすい場所を指定し、自国の法律に準拠するようにするのが有利でしょう。
国内の場合は、行きやすい裁判所を指定しておきます。

契約内容はビジネスに大きな影響を与えることになりますので、焦らずじっくり検討しましょう。
少しでも不安があれば、知財の専門家である弁理士に相談されることをお勧めします。

当事務所では、知財に係る契約書締結や契約書に関連する業務をサポートする知財契約戦略室がございますので是非お問い合わせください。

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ライセンス料の相場とは

ライセンス料のことをロイヤリティと言います。

・ランニング・ロイヤリティ
売上や販売数量にライセンス料(%)を掛けた額を、契約で定めた期間毎に支払います。
相場は3%前後、登録商標の価値に応じて4~10%程度で交渉されています。
ブランド価値・知名度が高ければ、ライセンス料(%)は高くなり、またライセンスの種類(独占的かそうでないか)も影響します。

独占的ライセンス契約の場合、売上が全くなくてもライセンス収入が得られるように、「最低保証金」の設定をライセンサーから求められる場合があります。

・イニシャル・ロイヤリティ
ライセンス契約を締結する際に、最初にまとめて支払い、その後の追加支払いをしない方法です。
売上に左右されないため、ヒット商品になった場合でも追加のロイヤリティ収入が得られないというリスクがありますが、ライセンシー側にとっては支出が確定するため、契約しやすくなります。
禁止権不行使型の場合によくとられる方法です。

ライセンス料は、ライセンスの種類によっても異なります。
独占的ライセンス(専用使用権)を設定した場合は、商標権者も商標を使用することができなくなり、商標権者と同等の権利をライセンシーに与えることになるため、通常のライセンス(通常使用権)契約の場合よりも高額のロイヤリティを設定できる場合が多くなります。
いずれにしても、ロイヤリティの決め方のメリット、デメリットをよく考えてリスクが最も小さい契約方法を検討しないといけません。

まとめ

ライセンス契約する場合は事前によく考えないといけないことが沢山あるんだね!
そうですね。
何も考えずに、ライセンサーに交渉してしまうと、大きなリスクを負ってしまうこともあるので不安なことは弁理士に相談しましょう。

ライセンス契約について、解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
著名商標のライセンス契約を結ぶか、独自のブランドを育てる目的でご自身の商標を使うのかということから検討を始めることになりますが、ご自身のブランドの商標が既に登録されていないかどうかも確認することが必要です。

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是非ご活用ください。

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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