登録された商標の有効年数はどれくらい?特許や他の権利との違いは?

新しい商品シリーズに使うブランドの名前を考えたんだけど、このブランド名を真似されたら困るから商標権を取得しようかな。
でも、商標権を取得できたとしても、その権利は何年くらい有効なんだろう。特許権や著作権の権利の有効期間とは違うのかな。

商標権は登録日から10年で存続期間が満了するよ。だけど、更新を行うことにより、永続的に権利を存続させることができるんだ。
それに対して、他の知的財産権は存続期間が決まっていて、更新することはできないよ。

商標権が存続する年数はどれくらい?

商標権の存続期間は登録日から10年です。そして、「更新」を行うことにより、永続的に存続させることが可能です。

他の知的財産権の存続の期間は以下の通りになります。

特許実用新案意匠著作権
出願から20年出願から10年出願から25年(原則)創作時から著作者の死後70年

このように、商標権だけが、更新することにより権利を永続的に存続させることができます。

更新手続の詳細については、下記ページをご参照ください。

どうして、このような規定になっているのでしょうか。

それは、商標権は他の特許権などの知的財産権と異なり、商標を使用する者の「信用」を保護するものだからです。信用は、使用すればするほど商標に蓄積していきます。存続期間を限ることは、そのように信用された蓄積を保護するという商標法の目的に反することになります。

そのため、商標権は更新を行うことにより、永続的に権利を存続させることが出来るのです。

しかし、存続期間の制限を一切設けないことは、下記のような問題が生じ得ます。

そこで、商標権の存続期間は10年とし、必要な場合は、何回でも存続期間を更新することを認めているのです。

商標法はそのような制度ですので、存続期間が100年以上であるという商標も多く存在します。

存続期間が100年以上である商標の一例

商標権利者登録日登録番号
    三菱鉛筆の画像三菱鉛筆株式会社1903/01/09登録第0018865号
高島屋の画像株式会社高島屋1904/07/27登録第0022106号
  ロート製薬の画像ロート製薬株式会社1908/12/05登録第0034402号

へえ、本当に商標は他の権利と違って、長い期間にわたって権利を存続させることができるんだね。
100年以上も存続している商標があるなんてビックリだよ。

商標権の存続期間の注意点

使っていないと取り消されてしまうかも:不使用取消審判

確かに、商標権の存続期間は、登録日から10年であり、更新することにより永続的に権利を存続させることができますが、1つ注意点があります。

日本国内において、3年以上登録商標を指定商品・役務に継続して使用していない場合は、不使用取消審判という制度により、商標登録が取り消されしまうおそれがあります。

これは、商標法における保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるものであり、一定期間使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないか、あるいは発生した信用も消滅しているという理由によるものです。

そのため、商標を適切に使用し続けることが大切です。

登録前の商標の使用

商標権は登録されることによって、はじめて成立します。

そのため、出願から登録までの間、商標権は権利として発生していないということになります。登録までの間、商標を使用し、その商標と権利が抵触する商標権があった場合は、商標権侵害になってしまうので、注意する必要があります。

不使用取消審判の詳細については、下記ページをご覧ください。

商標権を更新しなかったらどうなる?

特許権の場合、存続期間が満了した後は、何人も使用することができるようになります(「パブリックドメイン」といいます)。もはや、誰かが発明を実施する権利を独占することはできないのです。

一方、商標権は存続期間が終了すると、その権利は消滅し、他の誰かが同じ商標権を取得することが可能になります。

誰かに自分の使っている商標を取られたくない場合には、更新し続けることが必要です。

普通名称化について

商標権は、その言葉や図形などに、他の人の商品・サービスと区別する機能(「識別力」といいます)があると特許庁に認められることにより、登録されます。

しかし、当初は識別力を有しているとされ商標登録されたものが、時が経つにつれ、識別力を失うということが起こりえます。

これを普通名称化といいます。たとえば「正露丸」「巨峰」などの商標が普通名称化していると判断されました。

識別力を失い、普通名称化していると裁判所に判断された場合には、その商標権は権利を行使することができません。(一度、普通名称化していると判断された商標が、その後、識別力が復活し、普通名称でないと判断される可能性もあります)

つまり、権利の存続期間中であっても、実質的には、権利として有効ではないということになります。

普通名称化を避けるためには、登録商標であることを積極的に表示したり、第三者が類似する商標を使用している場合には、放置せずに権利を行使していく必要があります。

分割納付制度

新しいブランドは、長く愛されるものにしたいと思ってたから、安心したよ!
ブランド名とは別に、商品ごとのの名前も考えてるんだ。
でも、商品によっては3年くらいしか販売しない予定だから、10年も権利を維持しなくてもいいんだよなあ。

商標権の登録料を前半5年・後半5年に分割して支払うことができる分割納付制度が存在します。

この制度を利用することにより、5年以上の長期間使用する予定のない商品などの商標について、後半5年分の料金を納付することなく、前半5年のみ使用するということができます。

会社名やブランド名などの長く使用する予定の商標は、10年分を納付し、短いライフサイクルの商品やサービスの商標は、5年分のみを納付するなど使い分けることができます。

※ただし、この制度を利用した場合の前半・後半の二回分の合計額は、一括納付した場合に比べると割高となっています。

10年分を納付しなくても、5年分だけ分割納付することができるなんて、とても便利な制度だね。

国際登録の存続期間

事業を海外に展開することになったから、ブランド名を海外にも登録することになったよ。
マドプロ出願という制度を利用することになったのだけど、この制度を利用した場合の商標権の存続期間はどれくらいなんだろう。

マドプロ出願をした場合の商標の存続期間は、「国際登録の日から10年」です。

また、更新することが可能なので、国内の商標権同様、永続的に維持することができます。

マドプロ出願の詳細については、下記ページをご覧ください。

商標と意匠のミックス戦略

商品のパッケージも目を引く斬新なのを考えたんだ。
パッケージのデザインに特徴があるから、デザインを保護できる意匠権を取得するつもりだけど、商標権は全然関係ないのかな。

上記で説明したとおり、意匠権は出願から25年で権利が満了します。

一方、商標権は更新することにより、永続的に権利を存続させることができます。

権利期間に違いがあることから、意匠権と商標権を同時に取得する、又は、意匠権を取得した後で、商標権を取得するという「知財ミックス戦略」が考えられます。

ミックス戦略の事例

本田技研工業の二輪車のロングセラー商品である「スーパーカブ」は、既に意匠権を取得していましたが、その存続期間は満了していました。そのため、模倣品対策のため、意匠権の満了後、商標権の取得を目指し見事に登録されました。

スーパーカブの画像
登録第5674666号

商標制度では、立体形状も保護されるので、コカ・コーラの瓶や、ヤクルト飲料の包装容器も、実際に商標として保護されています。

ただし、意匠権と商標権は審査の方法が異なり、意匠権として登録されたものが商標権としても登録されるとは限りません。また、出願する商標に企業名を入れるか、入れないかなどの条件によって、商標登録に対するハードルは変わってきます。

しかし、意匠権とは別に行う商標権による継続的な保護は、模倣品に対して一定の効果を発揮するものであるので、検討の価値があるといえます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?商標登録に関係する年数について、お分かりいただけたと思います。商標権は他の知的財産権とは異なり、更新することにより、永続的に権利を存続させることができるという点でとてもユニークですね。

特許事務所に依頼することにより、出願から更新まで一括して安心して任せることができますよ。

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supervisor
この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
東京法務戦略部商標室長 山﨑 由貴
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