商標登録(商標権)と独占 商標登録後 2023年6月12日 2023年6月19日 Amazing DX Support Team 自社の主力商品について商品名の商標登録を検討しているんだけど、商標登録にはどのようなメリットがあるの? 一番のメリットは、その商標を登録した自社だけが登録商標を独占的に使用することができることですね。 「独占的に使用」とは具体的にどういうことなんだろう? 商標登録のメリット 商標権は、商標を使用する者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護するため、商標法に基づいて設定されるものです。 特許庁に商標登録出願し、審査の結果、登録査定となった場合、一定期間内に登録料を納付すると、商標登録原簿に設定の登録がなされ、商標権が発生します。 商標登録がなされると、権利者は、指定商品又は指定役務について登録商標を独占的に使用できるようになります(商標法25条)。また、第三者が指定商品又は指定役務と同一の商品又は役務に自己の登録商標と類似する商標を使用することや、第三者が指定商品又は指定役務と類似する商品又は役務に自己の登録商標と同一又は類似の商標を使用することを排除することができます(商標法37条1号)。 商標権者は、権利を侵害する者に対して、侵害行為の差止め、損害賠償等を請求することができます。 商標権の効力は日本全国に及びます(外国には及びませんので、外国で事業を行う場合は、その国で権利を取得する必要があります)。 以下、本記事では、商標権の効力(独占的な使用と他人の使用の排除)およびその制限について解説します。 商標権の効力 商標権を取得すると、登録した商標を独占的に使用することが可能になります。具体的には、商標権者は、以下の専用権と禁止権を持つことになります。 専用権 商標法25条には、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する」とあり、この規定に基づき、商標権者が商標を独占的に使用することのできる権利を有することが商標権の本質的な効力とされ、専用権と呼ばれています。 商標権者は、第三者が登録商標を指定商品・役務(「指定商品等」)に使用した場合、商標権侵害として、商標使用の差止め(商標法36条1項)や損害賠償(民法709条)等を請求することができます。 専用権の効力が及ぶのは、登録商標と同一の商標を同一の指定商品等に使用する場合のみとなります。 以下の場合は専用権の範囲外です。 ①登録商標と類似する商標(「類似商標」)を指定商品等に使用すること②登録商標を指定商品等と類似する商品・役務(「類似商品等」)に使用すること③類似商標を類似商品等に使用すること 禁止権 しかし、上記①~③の場合にも、商品の出所混同等により、商標権者の業務上の信用が害されるおそれがあることに変わりはありません。そのため、商標法は上記①~③の場合も商標権の侵害行為とみなし(商標法37条1号)、差し止めや損害賠償の対象としています。これは、第三者に登録商標や類似商標の使用を禁止することから、禁止権と呼ばれます。 専用権と禁止権の関係 専用権と禁止権は、一定の場合に、第三者に対する商標の使用の差止めや損害賠償等の請求を認めるという点で共通します。 一方、専用権が商標権の本来的な効力であるのに対し、禁止権は商標法が商標権の保護のために特に保護の範囲を拡大したものであるという点で異なります。 専用権は、自己が商標を使用できる積極的な権利であるのに対し、禁止権はあくまで第三者の商標使用を禁止し得るにとどまります。そのため、自己の登録商標に類似する商標を自ら使用している場合において、そのような商標が第三者の登録商標にも類似していると、指定商品等が同一又は類似である限り、第三者の有する商標権の禁止権としての効力が自己の登録商標に類似する商標にも及びます。 その結果、自己の登録商標と類似の範囲にある商標であっても使用することはできなくなります。禁止権の効力が及ぶとしても、第三者の登録商標の禁止権も及び得る以上、類似商標についてまで事実上独占的に使用できることにはならないのです。 商標権の効力の制限 商標権は、登録商標の使用を独占し、登録商標の類似範囲についての他人の使用を排除する権利ですが、他の権利や利益との調整上必要な制限が法上設けられています。これを、一般第三者との関係における制限と特定の者との関係における制限とに分けて説明すると以下のようになります。 一般第三者との関係における制限 登録商標を構成する文字、図形、記号、立体的形状等のうちで商品又は役務について取引上普通に使用されているもの、又はその性質上広く一般に使用を認めるべきものである場合に、形式的に商標権の範囲に入ることをもって一般の使用を禁止することは社会一般の利益に反することになります。 そこで、商標法は、このようなものについては商標権の効力を制限することとしています(商標法26条)。 特に実務上関係してくるのが、①自己の氏名・名称等を普通に用いられる方法で表示する場合(商標法26条1項1号)と②商品又は役務の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する場合(商標法26条1項2号、3号)です。 ①自己の氏名・名称等を普通に用いられる方法で表示する場合(商標法26条1項1号) 自己の肖像や氏名、名称、著名な雅号、芸名、筆名またはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標には商標権の効力は及びません。 例えば、自己の会社名と同一または類似の登録商標があった場合でも、自己の会社名を示すものとして「普通に用いられる方法」で使用する範囲においては、商標権侵害にはなりません。しかし、自己の会社名であっても「普通に用いられる方法」でなく「商標(マーク)」のような使用した場合には、商標権の侵害となる場合があります。 特に会社の場合、商号が「ABC株式会社」であれば、「ABC株式会社」が正式名称で、「株式会社」を除いた「ABC」は略称にあたり、略称「ABC」が著名でなければ、「普通に用いられる方法」での使用であっても商標権の侵害になる場合がありますので、これを用いるには特に注意が必要です。 ②商品又は役務の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する場合(商標法26条1項2号、3号) 商品又は役務の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する商標には商標権が及びません。 そもそも、商品又は役務の普通名称、品質等を普通に用いられる方法で表示する商標は、誰もが自由に使用することを欲するものであるので、特定の者に独占的に使用させないように、商標登録することができないものとされています。しかし、仮に誤って商品や役務の普通名称や品質を表す文字等が商標登録された場合であっても、だれもが自由に使用することができ、商標権侵害にならないようにしたものです。 特定の者との関係における制限 (1)他種の権利との抵触による制限 商標権は、特許権、実用新案権、意匠権又は著作権とは保護の対象を異にするものですが、商標の使用の態様によってはこれらの権利と抵触する場合が生ずることが考えられます。 そこで、商標法は、そのような場合について、出願日の先後によって、調整を図ることとしています(商標法29条)。 (2)使用権の設定による制限 商標権の効力は、商標権者の意思に基づいて他人に設定した使用権(専用使用権、通常使用権)の存在により制限されることとなります(商標法30条、31条)。 ①専用使用権(商標法30条)専用使用権とは、商標権者の設定行為で定められた範囲内で、使用権者が商標を指定商品又は指定役務について独占排他的に使用できる権利であり、専用使用権者は、これを侵害する者に対して自ら差止請求や損害賠償請求等をすることができます。 登録が効力発生のために必要な要件となっています(商標権者には、登録に協力する義務があります)。専用使用権者に認められた権利範囲を第三者に公示するためです。 専用使用権が設定されますと、専用使用権者のみが商標を使用することができ、商標権者もその設定された範囲については使用ができなくなります。その性質から、専用使用権は、同一の範囲には1つの専用使用権しか設定できないということになります。 専用使用権者は、商標権者の承諾によりその設定範囲内で、他者に通常使用権を許諾することもできます。 ②通常使用権(商標法31条)通常使用権は、商標権者から許諾を受けた範囲で、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をできる権利です(排他性はありません)。許諾行為で定めた範囲内において、商標権者から商標権を行使(差止請求等)されない旨を約するものです。 許諾行為で、期間、地理的範囲、使用範囲(対象商品・役務)、対価などを契約(合意)により定めます。 また、登録は要求されません(ただし、第三者への対抗要件としては登録が必要です)。 商標権者は、他人に通常使用権を許諾した後も、同範囲で自ら商標の使用が可能ですし、同内容の通常使用権を複数人に許諾することもできます。 通常使用権は排他性がないため、通常使用権者は、無権原の第三者に対して商標の使用を差止めたり、損害賠償を請求することはできません。 通常使用権は、その登録をしたときは、第三者に対しても対抗することができます。 ※「独占的通常使用権」「独占的通常使用権」は、通常使用権の許諾契約において、商標権者から通常使用権者に対して、商標の使用について事実上の独占的地位を認めるものをいいます。 ただし、専用使用権と同じような第三者に対する損害賠償請求権や差止請求権を有するかどうかは見解が分かれており、あくまでも商標権者に対する債権的な地位にすぎないと考えられています。 (3)商標の使用をする権利の存在による制限 商標法は、法で定める一定の理由に基づいて、商標権者以外の者に、 その登録商標の使用を認める「商標の使用をする権利」を以下のように複数認めており、商標権の排他的効力は、その範囲において制限されることとなります。 先使用による商標の使用をする権利による制限(商標法32条)いわゆる「先使用権」とよばれるものであり、他人の商標登録出願前から不正競争の目的ではなく、その出願に係る指定商品若しくは指定役務又はこれに類似する商品若しくは役務についてその商標又はこれに類似する商標を使用していて、その商標が周知商標になっている場合、その後、継続して使用する限りはその企業努力によって蓄積された信用を既得権として保護しようとするものです。 無効審判の請求登録前の使用による商標の使用をする権利による制限(商標法33条)これは、適法に付与された自己の権利の有効性を信じて善意で使用することによって築き上げた業務上の信用を保護しようとするものです。 特許権等の存続期間満了後の商標の使用をする権利による制限(商標法33条の2及び33条の3) 商標登録すると独占権が与えられ、侵害を見つけたときに様々な手段で対抗できるようになるんだね。 はい。商標を登録しておくことで、トラブルを未然に防げますが、この予防効果こそ、商標の最強の力といえるでしょう。 よ~し、自社の自社の主力商品を守るためにも早速商標登録の手続きを進めるよ。 Amazing DX®のご紹介 Amazing DX®は、大手国際特許事務所が運営する、オンラインで商標出願・登録を弁理士に依頼できるサービスです。Amazing DXでは、オンラインで簡単に先行商標調査から出願までを一貫して行うことができます。お見積りだけのお申込みも可能ですので、お気軽にお問合せください。 商標検索はコチラのページから行うことができます。 この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者