「家紋」は商標登録できる？　できない？　特許庁の方針を解説！

実家の家紋がすごい有名らしいし、せっかくだから商標登録してビジネスとかで活用できないかな～
でも、家紋って商標登録できるのかな…？

家紋については、商標出願についての特許庁の方針が特別に定められています。
以下でその情報を詳しく紹介しますので、是非ご覧になってください。

家紋の商標出願について

家紋とは、「家を識別するための紋章」であり、家系を表す印（マーク）として用いられております。

家紋は公的機関等に登録して使用する類のものではないため、誰でも自由に使用することができ、実際に、家紋を用いた様々な商品も販売されております。

特許庁の方針について

上記のような家紋の商標出願における取り扱いについて、特許庁は以下の通り述べています。

家紋の取り扱いについて

まず、家紋を商標登録できない（拒絶される）場合の概要について、特許庁は以下の通り述べています。

• 家紋が、本来的な家紋、装飾、模様として一般に用いられている商品、サービスを指定する場合
  • 【例】
    ・冠婚葬祭において着用される紋付袴や仏壇、シール、マグカップなど
  • 【理由】
    ・自他商品役務の識別標識として機能しないため

• 家紋が、国の機関や地方公共団体、宗教法人等を表す標章として用いられ、著名となっている場合
  • 【理由】
    ・公益に関する団体の権威、信用の尊重するため
    ・公益に関する団体との出所混同防止による需要者保護のため

• 家紋が、周知・著名となり、一定の経済的価値を有するようになっている場合
  • 【理由】
    ・家紋が地域振興のために使用されている場合、家紋とは無関係な第三者が登録を受けることによって、所縁の地の住民の反発を招き、また地域興し等の施策の遂行を阻害することになるため
    ・家紋が従前から特定の家を表す紋として広く知られている場合、第三者がその家紋の登録を受けることは、家紋が表す特定の家等の著名性や顧客吸引力に便乗することになるため
    ・第三者が上記のような事情があることを知りながら家紋を出願した場合などに、その家紋を登録させることは、公正な取引秩序を乱し社会公共の利益に反することとなるため

対象となる家紋について

上記のような取り扱いの対象となる家紋について、特許庁は以下の通り述べています。

• 対象家紋：伝統的な家紋（戦国時代の武家の家紋、神紋、社紋、寺紋、宗紋等）
  （理由）
• 既存家紋の改変や新たな家紋の創作について法的制約がないことから、新たな家紋が次々に作成されており、それらの家紋には生来的な識別力が備わっているものもあると考えられる
• 既に現存家紋数は1万～2万紋以上と言われているところ、すべての家紋について取り扱いの対象とすることは現実的ではない

登録できない家紋

以上の考え方を踏まえて、適用される（関連する）商標法の条文と、商標登録できない家紋の具体例しては以下の通り述べています。

• 第3条第1項第5号
  • 【例】
    ・家紋が、「○」や「×」などの単純な図形を表した極めて簡単、かつありふれた標章と認識される場合

• 第3条第1項第6号
  • 【例】
    ・家紋が、指定商品・役務との関係において、本来的な家紋として、または装飾や模様として使用されている実態がある
    ・更に、需要者からも単に家を表す印、または家紋を表した装飾や模様であると認識するにとどまる場合

• 第4条第1項第6号
  • 【例】
    ・神社仏閣等の宗教法人を表す神紋、社紋、寺紋、宗紋または学校法人を表す校章のように、公益に関する非営利団体を表示する標章として使用されており、著名となっている家紋、またはそれに類似している家紋
    ・文化財の保護等の公益事業を表すものとして使用されており、著名となっている家紋、またはそれに類似している家紋

• 第4条第1項第7号
  • 【例】
    • 家紋が、以下のように周知・著名となり、一定の経済的価値を有するようになっている場合
      ・家紋が地域振興のために使用されている場合
      ・家紋が従前から特定の家を表す紋として広く知られている場合
    • 第三者が、上記のような事情があることを知りながらその家紋を出願した場合
  • 【判断基準】
    • 下記事実を総合勘案する
      ・当該家紋又は当該家紋に係る人物名の周知・著名性及び利用状況
      ・当該家紋又は当該家紋に係る人物名に対する国民又は地域住民の認識
      ・出願の経緯・目的・理由
      ・当該家紋又は当該家紋に係る人物と出願人との関係等の事実

• 第4条第1項第10号
  • 【例】
    ・他人の業務にかかる商品等を表示するものとして広く知られている家紋、またはそれに類似している家紋

• 第4条第1項第15号
  • 【例】
    ・家紋が、他人の業務にかかる商品等を表示するものとして広く知られていることから、出願人が使用した場合に出所の混同が生ずるおそれがあると認められる家紋、またはそれに類似している家紋

• 第4条第1項第19 号
  • 【例】
    ・家紋が、他人の業務にかかる商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている家紋、またはそれに類似している家紋であって、かつ不正の目的をもって使用するものと認められる場合

なるほど、家紋でも商標登録できる場合とできない場合があるんだね。
たしかに、その家と全然関係ない人に商標権を持たせてしまったら、色々と面倒ごとになりそうだもんね…

そうですね。ただ、特許庁の基準でも書いてある通り、全ての家紋が登録できないというわけでもありません。ご自身での判断が難しい場合や、何か問題・トラブルがあった場合は、一度専門家に相談してみることをお勧めします。
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分かったよ！
ありがとう、DXくん！

【参考】特許庁「商標審査便覧42.107.06」（PDFリンク）