会社名の商標登録について 商標出願前 2023年6月16日 2023年6月19日 Amazing DX Support Team 会社名の商標登録は必要? 会社名も商標登録した方がいいのかな? 会社名も商標なので検討の価値はありますよ。 そうなんだ。我が社はまだ立ち上げたばかりの会社なんで、コストがどうもネックなんだよね・・・ 本記事では、会社名の商標登録の要否について詳しく解説します。 会社名と商標 会社名 会社名(商号)は、商法・会社法が保護法であり、法務局の管轄です。会社名の機能は、「商品(会社)を識別するための標識」です。同じ住所に同じ会社名(商号)がなければ登記されますが、実質的に排他権等は生じません。 <参考>以前の会社法では、不正な目的で付けられた、紛らわしい会社名の登記を防ぐため、同一市町村区で類似した商号がある場合は、登記することができませんでした。平成18年に施行された新会社法により、この類似商号規制は、同一の住所で同じ商号の会社は登記できない、と大幅に緩和されています。 商標 商標は、商標法が保護法であり、特許庁の管轄です。商標の機能は、「商品・役務(サービス)を識別するための標識」です。権利の及ぶ範囲は、日本全国です。 会社名も商標 会社名(商号)も、識別標識という機能において、商標と共通します。会社名は、とても伝統的でスタンダードな商標といえます。したがって、会社名を商標登録することは重要な手続きです。 会社名の商標登録にあたり、登記簿上の商号である「ABC株式会社」というフルネームを商標登録する会社もありますが、どちらかといえば、これを省略した「ABC」だけで商標する会社の方が多いです。例えば、ソニー株式会社は「SONY」、トヨタ自動車株式会社は「TOYOTA」の商標登録を所有しています。 会社名を商標登録しなくても「普通に使用する」ことは可能 会社名というのは、法人登記した正式な名称であり、いわば法人の本名のようなものです。ですから、個人が自分の本名を使用する権利があるのと同様に、法人は自分の会社名をある程度自由に使用する権利があります。 例えば、ABC株式会社という会社が商標登録をしていなかったとして、他人が「ABC」という商標を商標登録してしまったとしても、ABC株式会社は、「ABC株式会社」という正式な会社名を「普通に使用する」ことは許されます。 この「普通に使用する」とは、例えば、名刺に普通のフォントで「ABC株式会社」と書いたり、ホームページの会社概要欄に普通の文字で小さく「ABC株式会社」と書いたり、商品の製造元を示す部分に「製造元:ABC株式会社」と書いたり、パンフレットの最下部に小さく「ABC株式会社」と書いたり、といったことです。 すなわち、単に自分の名称を記載しているだけであって、商標権を取得している者の商品・サービスと誤認を生じるおそれがない使用方法が求められます。 会社名を商標登録しないで使用が制限される場合 一方、自社の会社名といえども使用が制限される使い方もあります。 例えば、「ABC株式会社」を商標登録しないで、誰か他の人に「ABC」を商標登録されてしまった場合、ABC株式会社は、以下のような使い方はできなくなります。 ホームページの最上部に大きく「ABC株式会社」と記載する パンフレットの最上部に大きく「ABC株式会社」と記載する 商品パッケージに大きく「ABC株式会社」と記載する 普通の文字ではなくロゴにして「ABC株式会社」と記載する 略称にして「ABC」と記載する このように、需要者(あなたの会社名を目にする人)に対し、注意を惹くようなフォント、大きさ、色で使用することはできません。すなわち、既に商標権を取得している人の商品やサービスと誤認される可能性のある使用方法が問題となります。 商標法は競業秩序の維持を図ることを目的の一つとするものであるため、法務局で法人登記した名称であるからといって、商標権侵害を免れる理由にはならないのです。 会社名を商標登録したしておいた方がよい場合 以下の場合は、特に、商品名などだけでなく、会社名も商標登録しておいた方がよいでしょう。 会社の規模が大きいか、大きくしようとしている場合 会社の規模が大きいか、大きくしようとしている場合はもちろん、会社の規模が小さい場合であっても、会社名を商品・サービスのブランド名として前面に押し出して使うのであれば、商標登録しておくべきです。 最悪、会社名を変更しなければならない事態になったとしても、会社名の認知がまだ大きくなければ、主力の商品・サービス名を変えなくてはならない事態よりはまだマシといえます。 一方、既に会社の規模がある程度大きく会社名も認知されてきているとか、今はそうでなくてもゆくゆくは会社をそのようにしていきたいと考えている場合には、会社名もしっかり商標登録しておいた方がいいでしょう。会社名に顧客吸引力が付いているなら、会社名を変更しなければならない事態はかなりの痛手だからです。 会社名をブランド名として認知させたい場合 会社の規模にかかわらず、商品・サービス名だけでなく会社名も「ブランド名」の一つとして認知させたい場合にも、会社名を商標登録しておいた方がいいです。 たとえば、トヨタ自動車株式会社は、その「トヨタ自動車株式会社」という正式な会社名だけでなく、「トヨタ」や「TOYOTA」という名称・文字も一つのブランドとして利用しています。トヨタのブランド構成は、まずコーポレートブランドとして「トヨタ」「TOYOTA」があり、その下に各商品(車種)別のプロダクトブランド(「クラウン」「プリウス」など)があります。 このような場合には、会社名を単に会社名としてだけ使っているのではなく、商品・サービスとの関係でも使っている(商品・サービスを選ぶときに消費者は会社ブランドも頼りにしている)と言えますので、会社名も商標登録をしておくべき、ということになるのです。 近年、会社名とブランド名を統一する会社が増えてきており、例えば、大手メーカーなどで多数の例が見られます。 パナソニック(旧松下電器産業) シャープ(旧早川電機工業) ケンウッド(旧トリオ商事) このように会社名をブランド名に変更する理由は、ある名前を一貫して使い続ける方がブランディング的に強いためです。 よって、会社名、店舗名、商品名・・・など、それぞれに独立した商標を使うよりは、一貫した一つのブランド名をつけて、その一つのブランド名を商標登録するというのもありです(例えば、会社名:シャネル株式会社、ブランド名:シャネル、店舗名:シャネル)。 また、このように会社名とブランド名を同じにすると、会社名とブランド名をそれぞれ別に商標登録する必要がありませんので、商標登録のコスト(出願費用等)も半分に抑えられます。これは、会社を立ち上げたばかりの経営者にとっては、結構大きなメリットになるでしょう。 逆に、会社名は前面に出さずに、あくまでもプロダクトブランド名を押し出し、消費者に認知させるブランド戦略を採っている会社もあります。 例えば、「萩の月」という仙台の銘菓がありますが、このお菓子の製造メーカーを知っている方はあまりおおくないでしょう。お菓子メーカーの場合、メーカーの会社名より、お菓子の商品名を優先して商標登録する場合も多いようです。 会社名の略称を使用したい場合 前述のとおり、正式な会社名「ABC株式会社」のうち「株式会社」を除いた「ABC」を使う場合にも、会社名(この例で言えば「ABC 」)を商標登録しておいた方がいいです。 明確に「コーポレートブランド名として推したい」というわけでなくても、HPなどで会社名を「略称」で使っていきたいなら、商標登録をおすすめします。 なぜなら、商標法の規定(26条)に、「自己の名称を普通に用いられる方法で表示する」場合には、他人の商標権の権利行使を受けない、というものがあり、ここでいう「(自己の)名称」とは、会社でいうと「会社の正式名称」を指しているので、「株式会社」などの部分を除いた略称はこれに該当しないからです。 したがって、「株式会社」などを省略した会社名を使いたい場合は、他の人から商標権でストップをかけられることのないよう、会社名を商標登録しておいた方がいいです。 会社名だからといってどんな場合でも自由に使えるわけではないんだね。 そうですね。使い方によっては他人の商標権を侵害する可能性があるので注意が必要といえますね。 会社名とブランド名を同じすると商標登録のコストが抑えられるという話は今の我が社には魅力的だな。会社名の商標登録も含め、必要な情報を整理してじっくり検討してみることにするよ。 Amazing DX®のご紹介 Amazing DX®は、大手国際特許事務所が運営する、オンラインで商標出願・登録を弁理士に依頼できるサービスです。AIと弁理士のコラボレーションで、徹底的に無駄をそぎ落としたサービスだから、「経験豊富な弁理士に依頼する安心」と「リーズナブルな手数料」の両立を実現しました。必要な操作は、商標の入力と指定商品・サービスの選択だけ。担当の弁理士とは、チャットとメールを使ってやりとりし、ご依頼から手続完了までスピーディーに進みます。まずは、無料の商標調査で、Amazing DX®を体験してください! 商標出願の前にリスクを回避しましょう! リスクを事前に確認しませんか?商標検索することで、競合他社や既存の権利者との衝突リスクを減らせます。 まずは、商標とヨミガナを入力し、特許庁に出願されている商標を無料で検索してみましょう。 商標 : ヨミガナ: 無料で商標検索する この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者