「ボクササイズ」は登録商標ってご存じですか? 識別性 2023年5月24日 2024年7月4日 Amazing DX guide 「ボクササイズ」で商標権侵害! 「ボクササイズ」の名称を使って、市民講座を開いていた自治体が、「ボクササイズ」の商標権者からの指摘で、賠償金を支払ったってニュースで報道されていたよ 驚いたな、商標登録されていたなんて 登録商標は無断で使用すれば、商標権侵害になり得ます しかし、このように広く認知されて一般的に使用されている商標は「普通名称化している」とも考えられますね ん? 商標が普通名称化すると、どうなるの? 商標「ボクササイズ」の権利侵害問題とは 「ボクササイズ」は、ボクシングの要素を取り入れたエクササイズの一種です。 近年、健康志向の高まりに伴い、スポーツジムなどでは「ボクササイズ」のエクササイズの講座が開かれています。 ところが、ある地方自治体が「ボクササイズ」の教室を開催したところ、「ボクササイズ」の商標権者から、商標権の侵害であるとして通知を受け、賠償金・和解金を支払うことになる、という事案が起こりました。 特許庁のデータベース(J-PlatPat:特許情報プラットフォーム)を見てみると、確かに商標「ボクササイズ」は登録されていました。 登録商標の商標権者は、民間のボクシングジムとなっています。指定役務は「第41類:ボクシング式有酸素運動その他のスポ―ツ又は知識の教授」です。 この商標権者は、商標「ボクササイズ」を無断で使用した多くの個人、団体に対して、同様に、商標権侵害による賠償金の支払いを求めてきました。 「ボクササイズ」を使った人達は、おそらく「ボクササイズ」が登録商標だとは知らず、普通名称だと考えていたことでしょう。 商標の普通名称化 商標の重要な機能として、「自他商品等識別機能」があります。 つまり、自社の製品であることを示すことが商標が果たすべき大切な機能ですが、造語として登録された商標であっても、広く認知されることにより、一般化し過ぎて、固有のものを示すものとして機能しなくなってしまうことがあります。このような商標は「普通名称化した」とされ、商標権の効力が及ばなくなるのです。 例えば、「巨峰」(ぶどう)、「うどんすき」、「正露丸」は、裁判所により普通名称との判断が示されています。「サニーレタス」、「ポケベル」は、特許庁により普通名称との判断が示されています。 また、「ガチャ」(カプセルトイ)、「プラモデル」といった登録商標は、一般的に広く使われており、商標の「自他商品等識別機能」を果たしている、と言い難い状況になっているといえます。 「えっ!登録商標なの! てっきり普通名称かと思ってた!」と思われた方もいるのではないでしょうか。 普通名称には商標権の効力は及ばない! 商標法では、26条で「普通名称には商標権の効力が及ばない」と定められています。 (商標権の効力が及ばない範囲)第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。(略)四 当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について慣用されている商標 商標法 このように定められているため、普通名称化した商標については、他者に使用されたとしても、権利を主張することができません。 「普通名称化」の判断は、裁判所や特許庁が普通名称化したと判断する場合や、商標を所有する企業が普通名称化したと自主的に判断して商標の存続を終了させる場合があります。 普通名称化した商標は取り消すことができる? 日本では、登録商標が普通名称化したとして、第三者が商標登録の取り消しを請求することはできません。 商標「うどんすき」は、裁判所が普通名称化したと判断していますが、登録は存続しています。商標権者が普通名称化したと判断し、商標登録の更新をせず放棄すれば、権利は消滅します。 なるほど 登録商標であっても普通名称化すると、商標権者は権利を主張することができなくなるんだね まとめ 普通名称かと思って使用したら実は登録商標だったため、商標の権利者から権利侵害との通知を受けた、というような事案に遭遇したら、その登録商標が普通名称化していないかを、一度検討してみてください。 ただし、そのような判断には専門的な知識が必要ですので、弁理士に相談することをおすすめします。 当事務所では、商標に関するご相談や侵害対策など、あらゆるシーンで知財に関するサポート、コンサルティングサービスを提供いたします。 ご相談・ご依頼など、お気軽にお問合せフォームからお問合せください。商標専門の弁理士が対応いたします。 商標弁理士に相談してみませんか? 商標のことで、もっと知りたいこと、お悩みごとはありませんか? 商標登録のメリットや手続きについて専門家に相談してみませんか?経験豊富な商標弁理士があなたの疑問にお答えします。 お問い合せフォームへ進む この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者