商標に関する訴訟について

商標権を侵害するとどうなる?

商標権を侵害するとどうなるの?
裁判の結果、多額の賠償金を支払ったり、営業停止、商品の販売中止・廃棄、あるいは会社名や商品名を変更しないといけない等、さまざまなリスクがあります。
それは大変だ!紛争に巻き込まれないためにはどうしたらよいか教えてくれる?

本記事では、商標に関する訴訟として「審決等取消訴訟」および「侵害訴訟」の2つについて概要を説明した上で、商標権侵害と商標権侵害の警告を受けた場合の対応および商標権侵害への救済手続きについて解説します。

商標に関する訴訟について

商標に関して提起される訴訟は、大きく「審決等取消訴訟」と「侵害訴訟」の2つに分かれます。

審決等取消訴訟

すべての法律上の争いは、究極的には裁判所において解決されますが(憲法76条2項)、知的財産権に関する争いのうち一定のものは特許庁における異議申立て及び審判手続きで争われます。この手続は、知的財産権に関する争いには特別な専門的知識を必要とするために特別に設けられたものです。

審決等取消訴訟は、特許庁が行った行政処分である審決等の取消を求めて東京高等裁判所の特別の支部である知的財産高等裁判所(知財高裁)を裁判管轄として提起し得る行政訴訟です(商標法63条2項、特許法178条)。

特許庁における審決等は行政処分ですから、それについての訴えは行政事件訴訟法の適用を受けるのが原則です。しかし、特許事件等は技術的かつ専門的であり、審判手続きも準司法的手続により行われています。そこで、特許庁が行った審決等に対する取消訴訟について、行政事件訴訟法の特則が設けられています(商標法63条2項、特許法178条~182条)。

なお、審判によらない特許庁の処分に対しては、通常の行政事件と同様に直接地方裁判所へ行政訴訟を提起することができます。

審決等取消訴訟の対象は、以下8種類の審判の審決と商標登録異議申立ての取消決定です。

・拒絶査定に対する審判(商標法44条)
・補正却下決定に対する審判(商標法45条)
・商標登録無効審判(商標法46条)
・不使用取消審判(商標法50条)
・商標権者による不正使用取消審判(商標法51条)
・商標権の移転された結果の不正使用取消審判(商標法52条の2)
・使用権者による不正使用取消審判(商標法53条)
・代理人等による不正使用取消審判(商標法53条の2)

原告は、当事者、参加人又は参加を申請してその申請を拒否された者でなければなりません(特許法178条2項)。被告は、原則として特許庁長官ですが、当事者系審判(商標登録無効審判、商標登録取消審判)の審決については、審判の相手方を被告としなければなりません(特許法179条)。

審決等取消訴訟の審理は、審決等の判断に誤りがあるか否かについてなされるものです。そして、特許無効審判の審決に関する「審決取消訴訟においては、抗告審判の手続において審理されなかった公知事実との対比における無効理由は、審決を違法とし、又はこれを適法とする理由として主張することができない」(最高裁大法廷昭和51年3月10日判決「メリヤス編機事件」)は、商標の審決にもこの判例の射程が及ぶと解されています。一方、商標の不使用取消審判においては、登録商標の使用の事実の立証は、事実審の口頭弁論終結時に至るまで許されるとされています(最高裁小法廷平成3年4月23日判決)。

取消判決が確定した場合、審判官は引き続き審理を行いますが、審判官は審決等取消訴訟においてなされた判断に拘束されます(行訴法33条1項)。

侵害訴訟

民事訴訟法における裁判管轄は、被告の住所地に所在する裁判所に提訴することが大原則です。また、不法行為の場合には不法行為地、損害賠償を含む場合には義務履行地である原告の住所地における裁判所にも提訴できます。もっとも、特許事件のような技術専門性の高いものについては、知的財産権部が存在する東京地裁(東日本管轄)、大阪地裁(西日本管轄)が専属管轄とされています。

商標権侵害訴訟については、東京地裁、大阪地裁が専属管轄という縛りはなく、従来通り、被告住所地、不法行為地、原告住所地(損害賠償する場合)で可能であり、さらに、東京地裁(東日本)や大阪地裁(西日本)にも提訴することができます。

審理の進み方としては、通常の民事訴訟と同様、原告が訴状を提出、被告が答弁書を提出し、第一回弁論が開かれ、その後はしばらく弁論準備手続きに付され、複数の準備書面が双方から提出され、争点が整理されていくという流れになります。もっとも、知財訴訟の特徴としては、侵害論と損害論という二段階審理を採用しているという特色があります(東京や大阪の場合)。商標権侵害の有無が先に重点的に審理され、裁判所が侵害の心証が得られなかった場合には損害論については触れることなく、弁論が終結し、逆に、侵害の心証が得られた場合には、改めて損害論を議論するという流れになります。商標は、前述のように、東京や大阪だけでなく地方の裁判所でも提訴でき、そこでは二段階審理を採用していないケースもありますので、そのような場合には損害論も主張立証が必要となります。一般的には侵害論の主張立証を終えた段階で裁判所から心証が開示され、和解が試みられます。もっとも、心証は必ず開示されるというものではなく、あえて心証を開示せずに和解協議に入るケースがあります。和解が決裂すれば、判決という流れになります。

商標権侵害訴訟で大きな争点になるものとしては、侵害論でいえば、構成要件該当性のうち、商標の類否、商品・役務の類否、抗弁としての商標的使用、先使用権、権利濫用、無効の抗弁などです。損害論では損害額について揉めるケースが多いです。

商標権侵害と商標権侵害の警告を受けた場合の対応および商標権侵害への救済手続き

商標権侵害

商標権侵害とは?

商標権は、独占排他的な権利であり、許諾を得ないでそれに反するような行為をすれば商標権侵害になります。

商標法25条は、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を占有する」と規定しています。これが「専用権」と言われるもので、登録商標と同一の標章を指定商品と同一の商品に使用すること、役務商標であれば同一の標章を指定役務と同一の役務に使用することが商標権侵害になります。

しかし、これだけでは不十分ということで、37条1号には、①指定商品は同一であるが、登録商標は同一でなくて類似の場合、②指定商品が類似の商品で、登録商標は同一の場合、③指定商品も登録商標も類似の場合についても、商標権侵害とみなすという規定が設けられています。「禁止権」と言われるものです。

さらに、そのような商標権侵害行為の予備的な行為についても商標権侵害とみなしています(37条2号~8号)。「間接侵害」とか「みなし侵害」と言われるものです。

商標権侵害の警告を受けた場合の対応

自社が商標権侵害の警告を他社から受けた場合は、以下のような反論が考えられます。

・自社が使用する商標が登録されている他社の商標に類似していないことを理由とする反論
・自社の使用方法が商標的使用ではないことを理由とする反論
・自社が商標権者よりも先に商標を使用していた場合の先使用権を根拠とする反論
・商標権者の商標登録の無効を根拠とする反論
・商標権侵害はあったとしても損害が発生していないこと(損害不発生)を根拠とする反論

商標権侵害への救済手続き

商標権侵害行為に対しては、裁判所での民事手続による救済として、侵害行為等の差止めを求めること、損害賠償を請求すること、不当利得の返還を請求すること、信用回復のための措置等を求めることが可能です。また、これとは別に、刑事事件となれば、裁判の結果、刑事罰の適用もあり得ます。

差止請求

商標権侵害行為に対する差止めの態様としては、以下のものがあります(商標法第36条)。

①侵害行為をする者に対するその行為の停止の請求
②侵害の恐れのある行為をする者に対する侵害の予防の請求
③侵害行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な措置の請求

③は、①または②とともにのみ請求することができます。また、差止請求の際には、侵害者に侵害についての故意または過失があることは要件ではありません。

なお、既に商標権侵害が現実化しており、これを放置しては著しい損害が生じる可能性がある場合など緊急性があるときには、裁判所に対して、まず侵害行為の停止を内容とする仮処分を申立てることが考えられます。

損害賠償請求

商標権を侵害する模倣品を製造・販売・輸入するなどしている者に対して損害賠償請求することができます。損害賠償を請求するためには、多くの事実について立証しなければならないところ、その立証は困難な場合も多いので、損害額については法律が算定規定を設けています(商標法第38条)。また、損害賠償請求の前提として必要な侵害者の故意・過失については、侵害行為について過失があったものと推定する(商標法第39条、特許法第103条)こととし、商標権者から侵害者に対する損害賠償請求を容易にしています。

不当利得返還請求

商標権が侵害された場合、不当利得返還請求権を行使することができることもあります。

信用回復措置請求

商標権者の業務上の信用を害した者に対しては、裁判所は、商標権者の請求によって、信用を回復するための措置を命じることができます(商標法第39条、特許法第106条)。具体的には、侵害者の粗悪品によって、商標権者の業務上の信頼が害された場合、謝罪広告の掲載などの措置を求めることができます。

刑事責任の追及

商標権を侵害した者は10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金に処するとされているので、商標権を侵害されたときには刑事責任の追及も視野に入れることができます(商標法第78条)。また、懲役と罰金を併科(両方を科すこと)することができます。法人については、その業務に関して侵害行為を行った場合、その実行行為者の処罰に加えて、業務主体たる法人にも罰金刑が科されるとする、いわゆる両罰規定が設けられています(商標法第82条)。

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はい。商標を使用する前に、調査をし、登録することで、他社の商標権に対する侵害を心配することなく、安心して長く商標を使用することができます。
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商標権侵害に対して法的措置を取るためには、前提として現に有効な商標登録の存在が必要不可欠となります。
ビジネスが軌道に乗り出した頃になって、悪意を持った誰かに商標を横取りされることがないよう、商標が決まったら、早めに出願されることをお勧めします。

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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