著作物を無断で商標として登録されたら商標権はどうなるのか解説 トラブル回避 2022年12月1日 2023年6月9日 Amazing DX Support Team 知らない内に、自分で描いたイラストが他の人に商標登録されてたみたい… 僕が描いたんだから僕に著作権がありそうだけど、何とかならないのかな… 残念ながら、ご自身で創作された著作物でも、他の人に商標登録されてしまう恐れはあります。 しかしながら、「他人の著作権と抵触するような商標は使用できない」という規定が存在するなど、何も対抗措置が無いというわけではありません。以下で解説しますので、是非ともご覧ください。 他人の著作物の商標登録について 日本の商標の制度には、他人の著作物を商標登録することについて明確に禁止する規定は存在しません。(商標の登録要件については、商標法の3条や4条に規定がありますが、著作物については特に言及がありません。) そのため、手続としては他の商標と同じく「早い者勝ち」となり、先に他人によって商標登録(商標として保護)されてしまう恐れがあります。 他人の著作権と抵触する商標の使用について 一方で、商標法には、「他人の著作権(その他特許権などの知的財産権)と抵触するような商標は使用出来ない」旨の規定は存在します。 商標法第二十九条商標権者、専用使用権者又は通常使用権者は、指定商品又は指定役務についての登録商標の使用がその使用の態様によりその商標登録出願の日前の出願に係る他人の特許権、実用新案権若しくは意匠権又はその商標登録出願の日前に生じた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。 そのため、ご自身で創作した著作物を他の人に無断で商標登録されたとしても、この規定により使用はされない可能性があります。 しかしながら、あくまで商標の「使用」を禁止する規定であって、この規定が適用されたとしても、問題となった登録商標(および発生した権利)は存続したままである点に注意が必要です。 【参考情報】この点、以下の最高裁判決では、「登録商標と他人の著作権が抵触する場合、著作物の複製物を商標として使用しても差止や損害賠償は行われない」旨の判断が行われています。 ■最判平成2年7月20日民集44巻号876頁「…商標法二九条は、商標権がその商標登録出願日前に成立した著作権と抵触する場合、商標権者はその限りで商標としての使用ができないのみならず、当該著作物の複製物を商標に使用する行為が自己の商標権と抵触してもその差止等を求めることができない旨を規定していると解すべきである。…」 しかしながら著作物を使用できる範囲は極めて明確であるとまでは言えず、実際にご自身の著作物が商標登録された際、この判決の通りに使用して問題ないか(商標権の侵害に当たるかどうか)はケースバイケースであると考えられます(そもそも著作物には該当しないケースも考えられます)ので、一度専門家へ相談することをお勧めします。 審判請求について また、仮に他の人に商標登録されてしまった場合、その商標登録について無効審判や取消審判を特許庁に請求するということが対策として考えられます。 無効審判や取消審判については、以下のガイド記事もご覧ください。・「商標登録無効審判 使用したい商標が既に登録!」・「商標登録の取消とは?不使用取消審判の制度も解説!」 無効審判について 無効審判を請求し、商標登録を無効にするためには、その商標登録に無効理由がある必要があります。 冒頭で述べた通り、商標法には著作物に直接関係した要件規定はありません。 しかしながら、仮にご自身の著作物を既に商標として使用しており、かつ需要者の間で周知となっている場合、以下の規定を根拠に商標登録を無効にできる可能性があります。 商標法第四条次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。…十 他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするも…十五 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標(第十号から前号までに掲げるものを除く。)…十九 他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。) 取消審判について 登録商標が指定した商品やサービスに一定期間使用されていない場合、その登録を取り消す審判(取消審判)を請求することができます。 上述した通り、他人の著作権を抵触する商標は使用ができませんので、いずれこの審判により無効にすることが可能と考えられます。 商標法第五十条継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。 ご自身で商標登録することについて 上述の通り、他人の著作権と抵触する商標は使用することができず、また一定の場合にはその商標登録について無効審判や取消審判を請求することができます。 しかしながら、使用できないとしてもその商標登録は存続し、またその後、無効や取消を目指すとしても確実ではなく、無効や取消理由を立証する手間や時間、費用もかかります。 そのため、もし他の人に商標登録されたくないイラスト等がある場合は、可能であればご自身で先に商標登録を行うことをお勧めします。 商標登録を行うことのメリットについては、以下のガイド記事もご覧ください。・「大切なブランド(商標)を守る。商標登録のメリットや登録の効果とは」 なるほど、著作物を勝手に商標登録された場合でも、使用はされないんだね! 場合によっては商標を無効にすることもできるみたいだから、ちょっと検討してみようかな。 他にも、今後、商標登録されたくない著作物を創作した場合は、ご自身で先に出願するということが重要な対策として挙げられます。 Amazing DXでは、簡単に低価格で商標出願を行うことができます。チャットによる無料の相談にも対応してますので、是非ご利用ください! 分かったよ! ありがとう、DXくん! この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者