海外販売や越境EC(Amazon等)における商標戦略と落とし穴

この記事で分かること
・日本の商標登録だけでは足りない理由
・海外販売・越境EC(Amazon等)で起きやすい失敗
・EU・中国・マドプロ、Amazonブランド登録の注意点
・失敗しにくい進め方

海外での販売や越境ECを始めると、先に商品ページや物流の準備を進めたくなります。

ですが、ブランド名を守る準備は、出品より先に考えるべきテーマです。日本では問題なく使えている名前でも、海外ではすでに他人に出願・登録されていることがあります。

この記事では、海外販売・越境ECでよくある商標のつまずきを、EU・中国・マドプロ商標や、Amazonブランド登録の観点にそって解説します。

日本で商標登録しているから、海外販売もそのまま進めてよいと思っていたよ
Amazonの海外ストアも、出品してから商標出願を考えれば間に合うのかな?

そこが落とし穴です
商標は国ごとに守られるので、日本で商標を取得していても、EUや中国では別の人が先に商標を取得していることがあります
越境ECは、売る前の計画がとても大切です

結論:海外販売・越境ECの商標戦略は「売る前に、売る国で押さえる」が基本です

海外販売・越境ECの商標対策で大切なのは、売れ始めてから慌てて出願することではありません。どの国・地域で売るのかを先に決め、その国で先行商標を調べ、必要な出願を進めることです。

日本で商標登録していても、その効力がそのまま海外に広がるわけではありません。商標は国・地域ごとに保護されるため、日本で使えているブランド名でも、海外では自由に使えないことがあります。

しかも、海外の多くの国では日本と同じ先願主義(早い者勝ちの考え方)を採用しています。自分が先に日本で使っていたとしても、海外で第三者に先回りされると、その国では相手が優先されることがあります。

越境ECで実際に起きやすい失敗

日本で登録しているブランド名を、そのまま海外でも使えると思ってしまう

これは最も基本的で、しかも多い失敗です。日本で登録済みという安心感があるため、海外の先行商標調査を省いてしまいがちです。

しかし、海外では同じ名前、近い名前、読みが似る名前がすでに登録されていることがあります。そのまま出品すると、あとで名称変更や販売停止の対応が必要になるだけでなく、権利侵害となり、損害賠償などをしなければならないリスクもあります。

売る国を決める前に、Amazonや自社ECだけ先に動かしてしまう

越境ECでは、出品作業のほうが商標の取得作業より早く進みます。そのため、「まず売ってみて、反応がよければ権利を取る」という流れになりやすいです。

ですが、商標の考え方は逆です。先に売る国を決め、その国で取るべき権利を整理してから、商品ページや広告に進むほうが安全です。

たとえば、広告はEUに出しているのに、商標は日本しかない。中国向けに販売しているのに、中国語表記を何も押さえていない。このような状態は、越境ECでは珍しくありません。

Amazonブランド登録は、「商標さえあればなんでもOK」と思ってしまう

Amazonでの海外販売を検討する際、Amazonブランド登録(Amazon Brand Registry)を見据えて、商標を検討するケースが多いです。これは大切な視点ですが、商標があるだけで十分とは限りません。

Amazonブランド登録には、登録または出願中の商標に加え、ブランド名を含むロゴやブランド表示が、商品または包装に恒久的に付されていることが求められます。申請時には、実物写真でその表示を確認されます。

つまり、商標の名義や表記と、実際の商品等における使用態様がずれていると、せっかく商標を取得してもAmazonブランド登録ができないということになります。

Amazonブランド登録については、以下の記事にくわしくご紹介しています。

EU向けなら、とりあえずEU商標を1件出せば十分だと思ってしまう

EU商標登録(EUTM)は、1件でEU全域に効力がおよぶ便利な制度です。広く展開したい会社にとって、とても使いやすい仕組みです。

ただし、EU商標には単一性があります。EUの一部で拒絶理由があるだけでも、EU商標全体が拒絶されることがあります。

そのため、EUに売るから必ずEUTM一択、とは言い切れません。販売予定国が限られているなら、販売予定国への個別出願を組み合わせるほうが、都合がいい場合もあります。

EU商標登録(EUTM)については、以下の記事にくわしくご紹介しています。

中国で欧文字だけ商標調査・出願してしまう

中国向け販売では、英語ブランド名だけを押さえて安心してしまうことがあります。ですが、中国ではアルファベット名より漢字名のほうが消費者に浸透しやすいとされます。

例えば、現地の販売者や消費者が、ブランドに中国語名を付けて広めることがあります。その名前が広がったあとで他人に押さえられると、ブランド管理が難しくなります。

中国で事業を育てるなら、欧文字だけでなく、中国語表記、略称などまで含めて商標を検討するのがよいでしょう。

中国商標登録については、以下の記事にくわしくご紹介しています。

代理店やOEM先などに先回りされてしまう

海外販売では、自社だけで完結しないこともあります。現地代理店、OEM先、広告運用会社、輸出入の支援会社など、ブランド名を知る第三者が増えます。

この段階で商標出願が済んでいないと、関係者に先に出願されるリスクがあります。

海外販売では、出願のタイミングだけでなく、契約も大切です。秘密保持、商標の帰属、勝手な出願の禁止、協力義務などを、最初の契約段階で入れておくとよいでしょう。

マドプロを使えば、各国で自動的に登録されると思ってしまう

マドリッド制度は、複数の国・地域にまとめて商標保護を求められる便利な仕組みです。ただし、便利なのは入口をまとめられる点であって、各国の審査がなくなるわけではありません。

指定した国・地域では、それぞれの官庁が自国法にもとづいて審査します。ある国で拒絶されることもありますし、その対応はその国ごとに必要です。

また、日本を基礎にマドプロ出願する場合、国際出願の商標は基礎出願・基礎登録と同一で、指定商品・役務もその範囲内でなければなりません。国内の基礎出願を狭く取りすぎると、あとから海外で広げたいと思っても限界があります。

マドプロ出願については、以下の記事にくわしくご紹介しています。

失敗しにくい進め方

1.「売る国」と「取る国」を先にそろえます

まず整理したいのは、どこで売るのかです。販売ページを出す国、広告を出す国、在庫を置く国、代理店を置く国を並べてみてください。

2.ブランドの表記を棚卸しします

次に、何を守るのかを明確にします。ブランド名の英字表記だけでなく、ロゴ、略称、現地語表記なども洗い出します。

3.商品・役務の範囲を、将来的な範囲も予測して決めます

指定商品・役務は、今すぐ売る商品だけでなく、近い将来に広げる予定も検討して指定商品・役務を考えます。

日本を基礎にマドプロを使うなら、国内出願の範囲が海外戦略の土台になります。国内での計画が雑だと、海外で取り直しや追加出願が必要になり、費用も時間も増えます。

4.出願する商標と、実際に使用する商標と一致させます

これは、Amazonブランド登録の観点だけでなく、権利の維持や、保護の安定性の観点からも重要です。

商標登録をしていても、実際に使用していないとみなされた商標は、一定の条件のもと、第三者により取り消し請求がされる可能性があります。また、自分の商標権の範囲外での使用となる場合、商標権の保護が及ばず、他人の商標権を侵害するリスクがあります。

5.海外パートナーと契約で守ります

商標出願だけでは、すべての事故を防げません。代理店、OEM先、共同開発先と進めるなら、契約での手当ても必要です。

少なくとも、次の点は確認しておきたいところです。

海外販売や越境ECでは、出品してから考えるのでは遅いんだね
売る国や表記を先に決めて、商標権の取得と販売の準備をそろえて進めるよ

まとめ

越境ECでブランドを守るコツは、どこで売るのかを先に決め、その国で、どの表記を、どの商品・役務で押さえるかを、実際の販売計画に合わせて出品前に計画することです。

この記事では解説しきれなかった外国出願の注意点もまだまだあります。

商標登録についての質問や相談がある場合は、外国商標出願にくわしい専門家に相談することをお勧めします。

外国商標出願や、その他商標関係のご相談については、下記のページからも承っております。

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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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