並行輸入品が商標権侵害に当たる場合/当たらない場合について解説 トラブル回避 2022年11月24日 2023年6月9日 Amazing DX Support Team 自社の商品を海外で安く販売してたら、全く関係ない人に勝手に輸入して日本で販売されてたみたい。 輸入販売の許可は与えていないから止めさせたいんだけど、そんなことできるのかな… 正規代理店以外の者による真正商品の輸入は、「並行輸入」と呼ばれています。 現在の商標法では、この並行輸入ができる場合とできない場合があります。 以下で詳しく解説しますので、是非ご確認ください。 商標法における「並行輸入」について 商品の製造・販売元(商標権者)と正式な輸入販売契約を締結した、「正規代理店」以外の者による真正商品の輸入は、一般に「並行輸入」と呼ばれています。 日本の商標法上、並行輸入が商標権侵害に当たるかどうかについては、以前から議論がありました。 しかしながら現在では、一定の要件を満たす並行輸入については商標権侵害には当たらないという扱いになっています。 適法な並行輸入の要件 最高裁判決(平成15年2月27日民集57巻2号125頁)は、以下の3つの要件を満たす場合であれば、登録商標を付した商品を輸入したとしても、当該登録商標にかかる商標権の侵害には当たらないと述べています。 輸入商品に付された商標が、輸入元の国における商標権者等によって適法に付されたものであること 輸入元の国の商標権者と日本の商標権者とが同一、または法律的/経済的に同一人と言える関係があること 輸入商品と日本の真正商品との品質に実質的な差異がないこと ちなみにこれらの要件は、特許庁HP(リンク)でも適法な並行輸入の要件として紹介されています。 【要件1】輸入商品の商標が適法に付されていること まず、輸入商品の商標が、外国における商標権者等によって適法に付けられた商標である必要があります。 例えば、全く関係ない第三者が勝手に商標を付けた商品(いわゆる「コピー品」)は、この要件を満たしません。 そのため、海外で購入したコピー品を日本に輸入した場合、日本の商標権者の権利侵害に当たる可能性があります。 ■個人使用目的によるコピー品の輸入について前提として、商標権は、個人使用目的の行為には及びません(商標は「業として」使用されるものと定義されているため)。そのため、個人で使用する目的でコピー品を購入し日本に持ち込む行為については、商標権侵害とはならず、水際対策の場面で問題となっておりました。これを受け、令和3年の商標法・意匠法改正(令和4年10月1日施行)により、個人使用目的であっても、一定の場合にはコピー品の輸入ができないことが明確になりました。 この一定の場合には、「海外の事業者等が、他人を介して日本にコピー品を持ち込む場合」が該当します。また、これに伴い、令和4年に関税法も改正(同年10月1日施行)され、上記のような場合に税関でコピー品が没収されることとなりました。 この法改正により、ECサイトで海外の事業者からコピー品を購入した際、購入者への発送のために、海外の事業者が郵送等によって我が国にコピー品を持ち込む行為が商標権侵害となります。この場合、購入者については、(個人使用目的であれば)これまで通り商標権侵害に当たるということはありません。しかしながら、購入したコピー品は「海外事業者の商標権侵害」を理由に税関で没収されてしまうため、購入者も「お金を払ったのに商品を受け取れない」ことになります。 【参考】特許庁「海外からの模倣品流入への規制強化について」(リンク) 【要件2】輸入元の国の商標権者と日本の商標権者が同一であること 次に、輸入元の国の商標権者と日本の商標権者(出所)が同じであるか、または「(法律的/経済的な理由により)両者は実質的には同一人である」と言えるような関係があることが必要です。 日本で売られている商品と全く同じ商標を付けていたとしても、日本と外国の商標権者が全くの無関係であることもあります(多くの国において、商標は「早い者勝ち」であるため)。 このような場合に、海外の商品を日本へ輸入すると、2つめの要件に反するとして、商標権侵害に当たる可能性があります。 【要件3】輸入商品と日本の真正商品の品質に実質的な差異がないこと 最後の要件として、輸入商品と日本の真正商品との品質の間に実質的な差異がないことが挙げられます。 ここでは、「日本の商標権者が輸入された商品の品質管理を行える立場にある(それにより、輸入された商品の品質に差異がないことが保証されている)かどうか」、といったことが検討されます。 最高裁平成15年2月27日判決では、以下のような状況においてZ国の商品を輸入する行為は、第3の要件に反すると判断されています。 日本の商標権者(A)と海外の代理店(B)との間で、「Aの商品について、BにX国、Y国での製造・販売を許諾する」旨の契約を締結した しかしその後、Aに許可を得ず、BはZ国でもA商品の製造・販売を行った(契約の範囲外であり、Aの品質管理が及んでいない) まとめ 輸入商品がコピー品である場合は、要件1に反すると考えられます。 しかしながら、ご自身の手で海外で販売していた正規品を日本に並行輸入された場合は、上記の3つの要件を満たしているとして、輸入の差し止めが認められない可能性があります。 実際にはケースバイケースであるため、判断が難しい場合は、一度弁理士などの専門家に相談することをお勧めします。 ※Amazing DXでは、サイト右下の「吹き出しマーク」をクリックしてご相談事項を送信することで、簡単にご相談いただけます。経験豊富な弁理士が回答しますので、是非ご活用ください。 なるほど、3つの要件に当てはまる場合は、無許可の並行輸入でも商標権侵害にはならないんだね。 輸入された僕の商品が3つの要件に当てはまるかどうか、一度検討してみるよ。 分かりました。検討が難しい場合は、お気軽にご相談ください! また、上記3つの要件を満たしていない輸入があったとしても、差し止めるためには、前提として日本で商標の登録を行う必要があります。 Amazing DXでは、簡単かつ低価格で商標出願を行うことができますので、是非ご活用ください! そうなんだね、分かったよ! ありがとう、DXくん! この記事の監修者: HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK 大阪法務戦略部長 八谷 晃典 スペシャリスト, 弁理士, 特定侵害訴訟代理人, 監修者