YouTube活用のための商標登録の話。ブランディングのための動画を制作・投稿する際のトラブル事例も紹介。

YouTubeに新製品の宣伝動画をアップすることになったんだ!ゆくゆくは有名な人ともコラボして、動画配信でも収益を上げられるといいなぁ
動画配信においても商標は関係してきます。実際にトラブルも起きているので、事前に商標登録に関して検討しておく方がよいですね。

近年、スマートフォンのカメラや、小型カメラなど、誰もが扱い易く、また価格的にも手が届きやすい製品が多くなりました。
また、YouTubeなどの動画プラットフォームが一般化したことで、いわゆる素人でも、クオリティの高い動画を撮影したり、映像を編集したりして、自身の趣味や知識について自由に表現し、世界にメッセージを発信・拡散できるようになりました。

そして、YouTuberのように、動画投稿や配信自体で収入を得る人たちの存在も珍しくなくなっており、YouTube以外にもテレビCMのキャラクターに採用されるなど他のメディアに露出する機会も増えているように見受けられます。

また、動画とは関係のない従来からのビジネス分野の会社等も、自社サービスや製品の魅力を伝えるために、また、ブランドのイメージの向上のためにプロモーション動画などを活用している例も見受けられます。また、そのような動画の制作を専門請け負う制作会社も存在するようです。

今後も、この動画マーケティング、動画ブランディングとでもいえるビジネス戦略の形態は様々な場面へ広がっていくということが出来そうです。

このように、急速に発展するビジネス分野において、十分注意をしなくてはならないのが、商標の問題です。

このページでは、YouTubeでの動画投稿・配信を想定して、商標登録の必要性や、具体的な出願のポイント等の情報を解説します。

トラブル事例から考える商標登録の必要性

トラブルの例

くまクッキング

YouTubeチャンネル「くまクッキング」は、料理をする様子を投稿するチャンネルで人気を集めていました。
しかし、このチャンネルの投稿者とは関係のない人が、「くまクッキング」等の文字商標を出願し登録査定(登録の許可)がされてしまいました。その後、経緯は不明ですが、この出願は登録料不納付により却下されています。

ゆっくり茶番劇

あるゲームの二次創作で作られたキャラクターに、合成音声ソフトで声をあてる形式の動画が「ゆっくり茶番劇」との愛称で、ネットを中心に使用されていました。
しかし、このゲーム等とは関係のない人が、この「ゆっくり茶番劇」の商標を出願し登録されてしました。さらに、この商標の権利者は、ツイッターにおいて、「ゆっくり茶番劇」の商標の使用について使用料を請求する旨を発表しました。
その後、この騒動は、一部メディアにも取り上げられるなど関心を集めましたが、最終的にはこの権利者が商標の権利を放棄しています。

なぜ登録になったのか

そもそも、無関係な人による商標の出願がなぜ登録となってしまうのでしょうか。

理由① 先に出願・登録されていなかったから

商標登録は先願主義いわゆる「早いもの勝ち」の制度です。そのため、上の例でも、先に商標を出願・登録していれば、後から出願された無関係な人の同じ商標が登録されることはありませんでした。

理由② 周知商標ではないと判断されたから

先に登録がなくても、他人の周知(広く認識されている)商標は、登録されません。
しかし、上の例では、「くまクッキング」や「ゆっくり茶番劇」が周知商標とは判断されなかったようです。

例えば、YouTubeでは、チャンネル等はゲーム実況などのカテゴリーごとに分けられています。あるカテゴリーでは有名だけど、そのカテゴリーの動画に興味が無い人には一切知られていないチャンネルというのも、あるのではないでしょうか。また、ネットで動画をよく見る人は大体知っているけれど、テレビしか見ない人は全く知らないということもあり得ます。

そのため、特にネット関係の分野においては、周知商標の基準を明確に定めることは不可能で、上の例のような無関係な人によって商標が出願された場合でも、登録になる可能性は十分に考えられます。

商標登録の必要性 ~もしも却下や放棄がされなかったら~

上の例では、無関係な人による商標出願が、一旦は登録査定や登録に至ったものの、経緯は不明ですが、却下や放棄がされたため、現在において商標権は有効ではありません。

もしも、却下や放棄がされず、商標権が有効である場合、どのような事態が想定されるでしょうか。

商標権は、その登録商標を独占的に使用することが出来る権利です。誰かが許可なくその商標を使用した場合、法律に基づいてその使用を止めさせたり、損害があればその賠償を請求したりすることができる強い権利です。

そのため、名称の変更をせざるを得なくなったり、最悪は損害賠償金を支払うことになる可能性もあります。
もちろん、無関係な人による出願に対しては、例えば異議申立や無効審判と言った手続を取ることも可能です。ただし、主張が必ず認められるとは限りませんし、それなりの時間や費用が掛かります。
そのため、まずは、自ら先に商標登録の出願をしておくことが重要になります。

トラブルを避けるためにも、商標登録をしておいた方がいいんだね。でも商標登録ってどうやってすればいいんだろう?

商標登録の具体的な方法

商標登録のためには、商標や指定商品・役務を商標登録願(願書)に記載して、特許庁に提出する必要があります。

商標を決める

まずは、出願する商標を決める必要がありますが、YouTubeでの動画登録の場合、何を出願する必要があるのでしょうか。

動画のタイトルや出演者の芸名等は、そもそも商標権が及ばないものである可能 性が高いため、出願する必要性は低いと考えます。

先ずはチャンネル名チャンネルのアイコンに使用しているマークを出願することをお勧めします。

指定商品を決める

商標登録では、商標と指定商品・役務と呼ばれるものが必ずセットで登録されます。
指定商品・役務とは、その商標を使用する業務分野の商品やサービスを具体的に記載したもののことです。また、指定商品・役務は第1類から第45類までの区分ごとに分かれています。

動画を本業の宣伝に(CMとして)使用する場合

動画を自身の本業の宣伝として使用する場合、商標は、あくまで本業で使用している扱いになります。
そのため、本業を表した指定商品・役務をしっかりと出願しておく必要があります。

例えば、カフェを経営していて、その宣伝のために動画を投稿する場合、指定商品・役務は「動画の投稿」等ではなく、本業である第43類「飲食物の提供」等で出願すべきです。

具体的にどのような商品やサービスがどの区分に含まれるか、詳細は以下の記事をご確認ください。

区分別解説

ただし、宣伝を目的としていても、動画配信自体で収入がある場合や、別の人のお店や製品を宣伝して、報酬をもらう際には次の項目も検討する必要があります。

動画投稿・配信自体で収益を上げる場合(いわゆるYouTuber)

動画配信を表す指定商品・役務としては、以下のように第41類に含まれる役務が当てはまると考えられます。イベントやセミナーを行う場合も同様です。

第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,インターネットを利用して行う映像の提供,インターネットを利用して行う音楽の提供,娯楽イベントの企画・運営,娯楽の提供」など

ただし、動画の内容によっては、この区分に属さない役務(サービス)に商標を使用していることになる場合があります。ご自身が何に商標を使用しているのかについてしっかり検討し、分からなければ専門家に相談することをお勧めします。

広告・宣伝の発注を受けて動画を制作・投稿する場合(いわゆる企業案件)

他社から宣伝の依頼を受けて、その企業の製品などの宣伝動画などのコンテンツを制作・投稿して、報酬を得る場合は以下のように広告関係の範囲でも商標の出願が必要となります。

第35類「広告業,インターネットによる広告,広告の企画」など

願書を作成する

出願する商標とその指定商品・役務が決まったら、それらを願書に記載します。
願書のフォームは以下でダウンロードすることができます。参考となる資料や、商標制度の概要など、役に立つ情報も掲載されています。

知的財産相談・支援ポータルサイト

なお、紙提出の場合、所定額の特許印紙を郵便局等で入手して、願書に貼り付ける必要があります。

特許庁へ提出する

願書ができたら特許庁へ提出します。
特許庁の窓口に持っていく方法と、郵送する方法があります。

なお、オンラインで提出する方法もありますが、オンライン申請のための専用ソフトを導入する必要があります。
そのため、オンライン出願はどちらかと複数の出願をすることが多い大企業や、特許事務所向けのサービスになります。

事前の調査も大切です!

商標は出願すれば必ず登録になるわけではありません。
上で説明した通り、同じ又は似ている商標が既に登録されていれば、後から出願された商標は登録が認められません。それ以外にも登録の条件は多くあります。

また、審査結果が分かるのは出願から1年(12ヶ月)程度経った後です。
審査結果を受け取るまで、安心して商標を使用できないとなると困ると思います。

そのために、出願の前に、同じ又は似ている商標が既に登録されていないかを確認することが重要になります。

参考に、出願・登録されている商標を検索することが出来るサイトや商標登録を支援してくれるサイトを以下の記事で紹介しています。
いずれのサイトも商標検索は無料で利用することができます。

安心してビジネスを展開するために、事前に調査をして、屋号や商号を商標登録する方がいいんだね!

AmazingDX®なら、調査から出願までワンストップで対応可能
以上、YouTubeでの動画投稿・配信を想定して、商標登録の必要性や、具体的な出願のポイント等の情報を解説しました。
トラブルを避けるために商標登録をお勧めしてきましたが、商標登録のメリットはそれだけではありません。
商標を登録すれば、自分だけが独占的にその商標を使用できるので、他社との差別化などのブランディングにも活用できます。

Amazing DX®では、オンラインで簡単に登録されている商標を調べることができます。調査したらそのままオンライン上で出願の依頼ができるので、忙しくて時間が取れない中でも、商標出願を進めることができるのでおすすめです。
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この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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