ビッグボスとクリスマスの女王  日本ハム・新庄監督のbigbossが商標登録できない?

日本ハムの球団が新庄監督の「BIG BOSS」で商標登録できないかもって、twitterの投稿があったよ。
球団と関係のない人が「BIG BOSS」で登録商標をとろうとしてるらしい。商標をとられてしまったら、日本ハムは「BIG BOSS」を使えなくなるってこと?
商標の権利者は、商標を指定した商品・役務について独占的に使用する権利を取得します。しかし、特許庁のデータベースでチェックしたところ、その第三者の出願は、登録にはならないないようですよ。
どういうこと?特許庁のデータベースにアクセスして何が分かったの?

ビッグボスと呼んでください!

2021年11月4日、プロ野球球団の北海道日本ハムファイターズは、新監督に就任した新庄剛志氏の就任記者会見を行いました。

記者会見中、新庄氏は報道陣に対して「監督と呼ばないで。ビッグボスでお願いします。」と要請しました。

この記者会見での発言はニュースとして大きく報道され、野球ファンだけでなく、普段、野球にそれ程関心のない人たちにも「ビッグボス」というキーワードは、大きな注目を集めました。

この記事では、話題のキーワードと商標出願の関係について、また、それに関連する様々な問題について解説します。

ビッグボスは誰のもの?

日本ハム球団の商標出願

日本ハム球団は、記者会見の日から6日後の2021年10月11日に、商標「BIG BOSS」の出願を特許庁へ行いました。
出願の内容は、キーホルダー、文房具、かばん、食器、タオル、おもちゃ、食品、アルコール飲料等の商品・役務を対象としています。

球団としては、新庄氏の人気にあやかり、「BIG BOSS」の商標を付けた関連グッズの販売事業に力を入れて、多くの売り上げを得ることを期待しているのでしょう。

第三者が行った商標出願

実は、日ハムの出願よりも前に、第三者が2021年11月8日に商標「BIG BOSS」を第25類の被服などについて、特許庁へ出願しています。

商標は先願主義、つまり早い者勝ちですので、先に出願した人に権利が与えられると思いますよね。

ところが、この出願は、商標法第4条第1項第7号(公序良俗違反)、第15号(商品又は役務の出所の混同)、第19号(他人の周知商標と同一又は類似で不正目的で使用)の違反を理由として拒絶されています。
拒絶理由通知に記載された特許庁の判断は、次のようなものです。

第7号違反(公序良俗違反):「BIG BOSS」の商標を、日本ハムと何らの関係を有さない一私人が独占的に使用することは、社会的相当性を欠くものであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。

第15号違反(商品出所混同):出願人の商品に「BIG BOSS」の商標を表示して使用すれば、あたかも日本ハム球団に何らかの関係がある商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

第19号違反(他人の周知商標の不正目的使用):日本ハム球団がいまだ商標登録されていないことを利用してただ乗りし、その著名性を利用して不正の利益を得る目的で出願されたものである。

また、この出願に対して、特許庁が拒絶理由を通知する前に「情報提供」が行われています。
誰かがこの商標が登録されるのを阻止しようとして、出願に不利な情報を提出したようです。

情報提供について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

出願人側は、拒絶理由に対して意見書を提出して反論していますが、特許庁はそれを認めず、2022年9月12日に拒絶査定となりました。

球団が出願した後にも、幾つかの個人や会社が商標「BIG BOSS」を様々な商品について出願していますが、いずれも、同じ理由で拒絶されています。

流行語と商標登録

商標法の規定により、話題になったキーワードを、関係のない他人が商標登録しようとしても、そのような人には商標登録は認められません。

毎年、その年に流行した流行語のランキングが発表されていますが、そこに出てくるような”流行り言葉”は、既に商標登録されていることが多いです。
流行に乗って使いたくなりますが、事業で使う場合には、権利侵害となるおそれがありますので、気を付ける必要があります。

クリスマスの女王は誰?

毎年、クリスマスが近づくと、街はクリスマス模様に変わり、どこからともなくクリスマスソングが聞こえてきますね。
色々なクリスマスソングがありますが、クリスマスソングの定番として有名なのが、マライア・キャリーの「All I Want for Christmas is You(日本語タイトル:恋人たちのクリスマス)」です。
おそらく、日本人でも多くの人が、一度は耳にしたことがある曲ではないでしょうか。

本場アメリカでは、マライア・キャリーはとても人気のある歌手です。
アメリカでも、クリスマスシーズンになると、マライアキャリーのクリスマスソングはよく聞かれるようです。

マライア・キャリーの商標出願「QUEEN OF CHRISTMAS」

マライア・キャリーのマネージメント事務所は、米国で「QUEEN OF CHRISTMAS (クリスマスの女王)」という商標を登録しようとしています。
この商標は、2021年10月3日に、米国特許商標庁へ出願されました(米国特許出願No.90571927)。

出願中で指定している商品としては、香水類、音楽の録音物、宝石、ポスター、洋服、クリスマスツリーの装飾品、犬の洋服、食品、ビール、ワイン等、様々なものに及んでいます。

マライアの商標出願に異議が申し立てられる?

米国特許商標庁は、この出願の審査を終え、2022年7月12日より異議申立期間としました。
異議申立とは、特許庁が出願の審査を終えたことを一般に公開し、「この商標出願は登録されるべきではない」とする第三者の求めを聞くという制度です。

イギリスの「Daily Mail」によると、この「QUEEN OF CHRISTMAS」の出願に対して、別の歌手が、米国特許商標庁に異議を申し立てたということです。
「クリスマスに関連することを、ひとりの人が独占することは許されない」というのが、この歌手側の言い分と伝えられています。

2022年11月15日、米国特許商標庁は、本件商標出願を取り消すとの決定をしました。
マライア側が異議申立に対して期限内に応答しなかったため、異議が認められて出願が取り消されたのです。

残念ながら、「QUEEN OF CHRISTMAS」の商標を、マライアは取得することができませんでした。

マライアは、「QUEEN OF CHRISTMAS」という商標を使って、どのようなビジネス展開を計画していたのでしょうか。
この結果を受けてブランド戦略を変更するのでしょうか。

しかし、彼女が「クリスマスの女王」であることは、世界中のマライアファンの認めているところでしょう。

新庄監督の「BIG BOSS」は、結局、赤の他人には権利が認められなかったんだね。特許庁が他人の出願を抜け駆けと認めてくれてよかったよ。

まとめ

“bigboss”の商標出願のケースでは、特許庁が「抜け駆け出願」には権利を認められないと判断したため、日本ハム球団は無事に「BIG BOSS」の商標権を得ることができるようです。
しかし、必ずしもこのような展開になるとはかぎりません。
第三者に抜け駆けで出願されても、それが抜け駆けであると特許庁に認めてもらうのは、難しい場合が多いのです。

自社の大切な商標は、速やかに出願手続を進めるよう、対応することが重要です。
当事務所のオンライン商標登録サービス「Amazing DX」では、費用を抑えつつスピーディーに商標出願できますので、是非ご活用ください。当事務所の弁理士へのご相談も可能です。

supervisor
この記事の監修者:
HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
大阪法務戦略部長 八谷 晃典
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